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魔法少女?いえ、魔法好きの喪女です……  作者: 山海千歳


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05  ハンターギルド

その日、シズクはハンターギルドを訪れていた。

手持ちの素材が心許なくなってきたのでそれらを補充するためである。

本来なら研究に必要な素材は研究所が用意するべき物である。

だが、見習いでしかないシズクには研究費は支給されておらず、資材を使用する許可すら降りないのだ。

唯一、月末に定期納品している錬金用の触媒については現金が支給されている。

だがそれとて、十分な額ではない。

触媒を精製するために必要な素材は希少な物が多く、街の商会などではなかなか手に入れることはできない。

しかも、偶々入荷しても目が飛び出る程の値段を提示されるため、支給されている費用だけではとても賄えないのである。


そこで思い付いたのが『買えないなら、自分で採りに行けば良いじゃん』作戦だ。

ただ、採集ができる樹海は魔獣の生息地となっているため、一般人の立ち入りは許可されていない。

なので資格がない者が樹海に入ろうとするならば、ハンターギルドで資格を持つ護衛を雇わねばならないのだが……。


実を言えばシズクは単身でも樹海の探索は可能である。

もちろん、シズクに戦闘の心得は皆無だが、護身に便利な魔導具は幾つか開発してあるので通常種しかいない樹海なら単身でも問題なかったりする。


(まぁ、支給されたお金で護衛が雇えるんだから、態々犯罪行為をするつもりはないんだけどね~)


路線バスを乗り継いでハンターギルドを訪れると、やや疲れた顔の受付嬢に出迎えられた。

毎日の事とは言え、朝のラッシュはそれだけ過酷なのだろう。

斯く言うシズクも人混みが苦手なので、いつも混雑が終わる時間帯を見測って来るようにしている。


「あ、あのぉ……先日、護衛の予約をしたオードリーですが……『暁の剣』の皆さんはいらっしゃいますか?」


受付嬢が胡乱な目をシズクに向ける。


「お嬢ちゃん……見たところ平民のようだけど、子供が護衛なんか雇って何をするつもりなの?ここは子供の遊び場ではないのよ?」

「あ、アタシは……研究所の見習いで素材を採りに樹海へ……それにアタシ子供じゃ……」

「研究所の見習い?貴方みたいな子供が?」


この遣り取りをするのは何度目だろうか、と肩を落とすシズク。

在籍する受付嬢をコンプリートするまで続くのではないかと思ってしまう。


「ちょっと、その子本当に研究所の見習いよ……E5番の棚に契約書があるからその通りに対応してあげて……」


隣のカウンターに座った同僚に耳打ちされ、まだ納得いかないといった表情を浮かべつつも契約書を持ち出して手続きを始めてくれる。


「あら?……契約書が昨日付けで白紙撤回されてるわよ?」

「は?……そ、それってどういう……」

「どうも研究所からの要請があったみたいね……記録を見るに『暁の剣』が研究所と専属契約を結んだせいで、貴方が個人的に結んでいた契約が無効になってしまったのよ」


研究所は政治から分離されているとは言え、紛れもなく国の重要機関である。

民間の団体に過ぎないハンターギルドがその要請を拒絶する選択肢はない。

平民が結んだ契約書など紙切れも同然である。


「貴方の職場なのでしょ?上から連絡や何か指示は受けていないのかしら?」


シズクが首を左右に振ると、事情を何となく察した受付嬢が声を和らげて言う。


「他のパーティーを紹介してあげたいけど、樹海探索に必要なC級以上は出払っちゃってるの……お嬢ちゃんは何を採集しに樹海へ行くのかしら……予算次第になるけど、もし良かったらギルド専属の素材屋を紹介してあげるわよ?」

「いえ……多分街の素材屋さんには……置いて無いと思うので……」

「なら仕方ないわね……そうねぇ、3日ほど待って貰えば他のパーティーを探せると思うけど……どうする?」


まぁ、それしか手はないか、とシズクが口を開きかけた時だった……。


「もし、良かったらその依頼……アタシ等が受けてやるよ」


振り返ると、そこにはがっしりとした体格の赤髪の女性が立っていた。

なかなか恰幅の良い女性ハンターだ。

筋肉が盛り上がった逞しい二の腕はシズクの太もも程もありそうである。

後ろのテーブルにはパーティーメンバーとおぼしき二人の女性の姿もある。

ガタイこそ赤髪の女性に及ばないが二人とも、なかなか腕が立ちそうだ。


「悪いな嬢ちゃん、立ち聞きする積もりはなかったんだが……聞こえちまってさ」

「ルーナさん……貴方のパーティーは先日喧嘩騒ぎを起こして一週間の停止処分を受けているでしょ?依頼を受けられるわけないわよ」

「明日には処分が解けるんだから、そのくらい多めにみてくれよな……樹海に行くってんなら、どうせ二、三日は夜営すんだろ?護衛だって時間的に明日からが本番なんだろうし、明日受けたことにすれば良いだろ?」


呆れたように肩を竦めてみせるルーナ。

しかし、受付嬢も簡単には引かない。


「そ、そういうわけにはいきません!規則を何だと思ってるんですか!」

「相変わらずギルドは細けぇ事にうるせぇな……どうせお貴族様が絡んでんだろうけど、ギルドがこの嬢ちゃんにした不義理は償うべきじゃないのか?アタシ等がギルドの尻拭いをしてやろうって言ってんだ、ちょっとくらい大目にみろよな」

「た、確かにルーナさんのパーティーが受けてくれるのなら……こちらは違約金を払わなくて済みますし、オードリーさんも時間を無駄にせずに済みます……ですが……」

「あぁ、もうホント面倒くせぇ……三方が丸く治まるんならそれで良いじゃねぇか……そう思うよな、嬢ちゃん」


そう言ってバシバシとシズクの肩を叩く豪快な女ハンター。

正直、粗野な人は苦手なのだが、規則にうるさい杓子定規なタイプよりはマシに思える。


そもそも、シズクとしてはこちらの要望に従ってさえくれれば誰でも構わないのだ。

ぶっちゃけ……資格さえ貸して貰えれば、邪魔なので付いてこなくても良いと言いたいくらいである。


結局、強引なルーナの申し出をシズクがフォローする形で受付嬢が折れてくれた。


「良いですねルーナさん……任務は明日のからの日付にしてありますが、報酬には今日の分の護衛も入っているのを忘れないでくださいね……あと、次に問題を起こしたら除名処分もあり得ますからそのつもりで……」

「分かってるって!心配すんなや」


少々トラブルはあったものの、シズクはルーナがリーダーを務める『女豹の牙』のメンバー3人を伴い、予定通り樹海へと向かった。


樹海へはギルドでトラックを借りて向かう。

後部座席で『女豹の牙』の武勇伝を聞きつつ親交を深める。

ギルドの宿営地に到着した後は夜営の準備をしてから軽い昼食を済ませ樹海へと分け入る。


「初日だし……まぁこんなもんかな」


シズクは古びた肩掛け鞄をポンポンと叩いた。


「たった半日でどんだけ集めたんだ、シズク……すげぇ量だった気がするが……その小汚ぇ鞄に全部入ってんのかよ」

「うん、スゴかった……ウチ等じゃ、ムリ……薬草の知識……あんま無いし……」


ルーナの言葉に弓使いのリリィが感情の乏しい顔で頷く。

弓使いの彼女は寡黙であまり感情を表に出さない女性だ。


「しかし、どんだけ入るんスか、その鞄……ミャアにはそっちの方が気になって仕方ないっス」


目を輝かせ尻尾を振るのは『女豹の牙』最後の一人、猫人族のミャアだ。

彼女は斥候の役を担うレンジャーで、得物は腰に差した2本の短剣である。

因みに、ルーナの得物は巨大な戦斧だ。


「コレ、研究所の備品で……見た目よりもたくさん物が入るんです」

「オイオイ、まさか魔法鞄(マジックバッグ)ってヤツかい?嬢ちゃん、そんな貴重なモン持たされてるのかい?」


実を言えば、支給品ではない。

倉庫の片隅に打ち捨てられていた物をシズクが直して勝手に使わせて貰っているのだ。


(『廃棄収蔵』って書かれた箱に入ってた物だし……あたしが勝手に使っても……別に構わない……よね?)


更に言えばカモフラージュに使っているだけなので、不要になった物やバルク品なんかが入っている。

なので、採取した物は全部無限収納(インベントリ)に直行だったりする。


「……それ……目を付けられる……」

「リリィの言う通りっスよ、シズシズ……そんな高価な魔導具を持ってるのが知られたら、悪い連中に狙われるっスよ」


ボソリと溢すリリィの言葉をミャアが補足する。


「えぇっ?……ギルドのトラック程度の容量しかない微妙な魔法鞄ですよ?見た目だってかなりボロいし……」

「と、トラック程度って、まさかトラックの荷台丸々ってことじゃないよな?……嬢ちゃん、それマジで言ってんのかい?アタイが聞いた話じゃ、人力の荷車に積める程度が精々だって……」


(正確には荷台ではなく、荷台を含めたトラック全部なんだけど……)


どうも、余計なことを口にするべきではなさそうだ。


「……荷車でも……豪邸が買える値段はする……」

「荷車で豪邸なら……トラックなら何が買えるんスかね……もしかして、お貴族様の住むような屋敷っスか?それとも、お城なんか買えちゃったりするんスか?ミャアなら飛翔馬(フライホース)を買うっス」


そう言えば、『暁の剣』の面々も魔法鞄の話をした時は酷く驚いた顔をしていた覚えがある。

以後、魔法鞄の事が話題に上がることはなかったが、今思えば話題にならないように気を遣われていたのかもしれない。


(ヤ、ヤバい……後で鞄を元のとこに戻しておかないと……勝手に直して使ってるのがバレたら……)


そんな貴重な魔導具なら廃棄収蔵なんて書かれた箱に入れて、鍵もないような倉庫に放置しないでもらいたい。

それとも廃棄と収蔵、このまるで正反対な言葉の組み合わせに何か深い意味でもあったのだろうか……。


「まぁ、何れにせよ……面倒事に巻き込まれたくないんなら、そんな御大層な魔導具を持っているのがバレないようにしな……」

「……同意……」

「黙秘っス、黙秘するっス、シズシズ!」


携行食を口にしながら、賑やかに夜営の火を囲む女豹の牙の面々。

日頃ボッチのシズクが喋る相手と言えば、月一の所長を除けば自作のAIくらいのものだ。


(まぁ……たまには、こんな空気も……良いかな……毎日だと疲れるかもだけど……)


色々拗らせ気味の見習い研究員は、珍しくそんな感情に捕らわれていた。


週一でのんびり更新して行くつもりですが、空いてしまったらご免なさい。m(_ _)m

気長に付き合っていただけると嬉しいです。

感想など頂けると励みになりますので、是非一言でも下されば幸いです。\(_ _)


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