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魔法少女?いえ、魔法好きの喪女です……  作者: 山海千歳


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32 王との面会

 翌日、お城へはシズク一人で行く事にした。

 ルーナ達が付いて行くと言いはったが、三人娘が一緒なので大丈夫だからと断った。

 ルーナ達にこれ以上迷惑を掛けたくないという理由もあるが、三人が居れば充分と言うか、手一杯なので遠慮してもらったのだ。


 城へ赴くと既にリック……ランドール伯爵が待っていて応接室まで案内を買って出てくれた。


 初めて入る宮殿は荘厳で、雄壮な建築様式に煌びやかな装飾、絢爛豪華な調度品に数々に圧倒された。


(ふわ~、ベルサイユ宮殿みたいだよ~……テレビでしか見たことないけど……)


 こういうところに金を惜しまないのは国力を訪問者に見せつけ敬服させる意図があるといった話を聞いた覚えがある。


<ならば、主の小屋も豪華に改装すれば良いのじゃ>

<主様に相応しいお城を建てるのですよ、主様の力を見せつけるのです!>

<あ、アタシはこんなとこに住みたくはないからね?>

<くふふ、そもそもどうやって建てるの、カナ?>


 三人娘には当然の如く姿を消してもらっている。

 ヒソヒソと念話で言葉を交わしながら歩く道中は、まさにお城見学である。

 それが観光ツアーならばどんなに良かったことか……。


 そして、応接室に通され待つこと数分、豪奢な衣装を纏った如何にも王様という壮年の男性が白髯の老紳士を伴い姿を現した。

 従って来た騎士を扉の外に待機させ、ソファに対面で座るよう勧められる。

 ランドールと白髯の紳士は王様の背後に立ったままで控えている。


「初めましてだなオードリー嬢、余はリチャード、この国の王をやっておる……リックについては知っておるな、もう一人の神経質そうな老爺は宰相のザクセンだ」


 金髪のイケオジの台詞に老紳士がピクリと眉を動かす。


「神経質とは些か心外ですぞ陛下……主がおおらか過ぎるので、私はその分余計に気を遣っているだけですぞ」

「そうか?ならそういうことにしておこうか」


 クツクツと笑って流すリチャード王。


「コホン……失礼しました、オードリー嬢……私はザクセン・ルード・モンテール、非才の身なれど宰相の大役を務めておりますれば、どうぞよしなに……」


 にこりと人の良さそうな笑みを浮かべて優雅にお辞儀をするザクセン宰相。

 シズクは立ち上がって見様見真似のカーテシーで返す。


「し、シズク・オードリー……です……」


 因みに、シズクが着ているのはランドールが用意してくれた水色のワンピースだ。

 簡素なデザインだが、滑らかな布地と丁寧な仕立てからしてかなりの高級品である。


「まぁ、そう緊張しないで欲しい、公式な場ではないのでな……礼儀作法は気にせずとも良い、言葉遣いも普段通りで構わん……そなたには気兼ねなく話して貰いたいのでな」


 先程の軽口といい、シズクが萎縮しないようにと気を遣っての事だろう。

 少しでも場を和ませようとしているのが伝わってくる。


「リックから多少聞き及んでいるとは思うが、先ずは大賢者と研究所について語るとしよう……ザクセン」

「承知致しました……」


 王の言葉を受け、白髯の宰相が前に進み出る。

 そして、アイザック所長がこれまでしてきた事を説明し始めた。


 先ずは対金眼兵装について……。

 シズクが所長より聞いていたのは研究員から素案を募り、第一研究室で実験と研究を重ね発表するというものだった。

 だが、実質はシズクの提出した素案がそのまま採用され、シズクが書いた設計図と共にアイザックの名で発表されていたらしい。


(スパイダーがそのまま発表されてたから、少しおかしいとは思っていたんだよね……)


 シズクの考えた名前までもそのまま採用されていたので、メアリーに無理やり連れて行かれたお披露目会の時点で違和感を感じてはいた。

 因みに、スパイダーを含め、1式~3式の兵装は試行錯誤を重ね、今では全く別物と言えるほどに改良している。


 次いでシズクが毎月納品していた金眼兵装用の錬金触媒や魔法薬について……。

 これも、シズクの担当は極一部だと聞かされていたが、実際はシズクの納品量が全てであったらしい。


(メアリー様が、何故アタシに魔法薬の事について聞いてきたのか……今その理由が分かったよ)


 聞けば、メアリーも所長や研究所の不正を正す事に協力していたのだとか……。

 今は所長代理として研究所の立て直しに忙しい日々を送っているらしい。

 例え身内であっても不正を許さない清廉潔白さには頭が下がる思いだ。


「アイザックは国より支給された研究費を好き放題にしており、果ては己の遊興費にまで使用しておりました」


 シズクに支払われていた給与もここから出ていたらしい。

 しかも、資材費と計上されていた額の内、シズクに渡されていたのは一割にも満たなかったらしい。

 殆どは研究員と所長がガメていたとの事……。


(ははは……見習い研究員ですらなかったんだ……アタシ……)


 それに加え、シズクは正式採用された研究員ではなく、所長が個人的に雇い入れた臨時職員ということになっていたようだ。


「功績の強奪、虚偽の報告、詐称に着服に賄賂……同じ貴族としてこれ程の罪を犯した愚か者に腸が煮えくり返っております……オードリー嬢には多大な迷惑と損益を与えたこと、深く御詫び申し上げる」

「さ、ささ、宰相さまが謝られることでは……あ、ありません!」


 頭を下げたまま固まる老紳士にシズクは頭と両手を激しく左右に振る。


「いや、あの不届き者を任命したのも、大賢者の称号を与えたのも余だ……不正を見過ごしてきた責もある……公式の場では無理だが、この場で頭を下げさせて貰う……大変に済まない事をした」


 そう言って深々腰を折るイケオジ。

 後ろの二人もそれに倣って最敬礼で謝意を示す。

 その光景にフレーズするシズク。


「あわわわ……しゃ、謝罪をうけ、う、受け入れますから……あ、あた、たま、たまを……上げてくらさい!」


 どもりながら目の前のテーブルに両手をついて平伏する様は、彼女の根っからの庶民気質を如実に物語っている。


「謝罪を受け入れてくれたこと深く感謝する……そして、感謝ついでに1つ聞かせてくれぬか……そなたのその類い稀な技術と優れた知識はどのようにして得たものなのだ?」

「技術と知識……ですか?魔法の?」

「左様……そなたが作り上げてきた魔導具の数々はとても余人には真似をできるものではない……古代魔法に関する知識にしても足元に及ぶ者すらいないだろうと、レイモンド嬢……メアリー・レイモンドが申していた」


 シズクが得た魔法に関する知識は殆どが書物より得たものだ。

 古代魔法言語に関しては前世の知識によるところ大なのだが、それをこの場で話す訳にはいかない。

 なので当たり障りのない事だけを口にする。


「学園や大学でそなたが受けた仕打ちについても聞き及んでいる……政を預かる身としてそのような体質を看過してきたことに慚愧の念に堪えぬ」


 捕捉するように白髯の宰相が言葉を紡ぐ。


「教育機関についは既に大々的に改革を断行している最中でございます……時間は掛かるとは思いますが、数年以内には大きな変革ができるであろうとの報告を受けておりますれば……」


 ひと呼吸おいてリチャード王が本題とばかりに切り出した。


「オードリー嬢……余は……この先、そなたに我が国の魔導技術を牽引して貰いたいと考えている……」

「へっ?!」

「具体的には……オードリー嬢を所長に据え、伯爵位を与えようと、陛下はお考えです……大賢者に代わる称号も現在選考中であります」

「アタシが所長?! 伯爵?! えぇ?」


 寝耳に水な提案に再度フリーズするシズク。

 漫画や小説で功績を上げて成り上がるサクセスストーリーは目にしてきたが、まさか自分がその立場になるとは思ってもいなかった。

 確かに、貴族位を得ればこれまでのように蔑まれることは失くなるのだろう。

 ふと、ルーナ達、女豹の牙の顔が脳裏に浮かぶ。


「すみません……所長も爵位もお断りいたします」


 リチャード王が目を細め、眼光に鋭さが宿る。

 シズクは無言の圧に気圧されながらも意を決して続きを口にする。


「アタシは人と話すのが苦手です……そんな自分が人の上に立つなんてできないです……それに、貴族になんかなってしまったら、友達と……友人と対等に話す事もできなくなります」


 リチャード王がソファに背を預け瞑目する。


「……相分かった……余としてはそなたに無理を強いるつもりはない……ザクセン……」

「はい」


 宰相が懐から小さな木箱を出してシズクの前に置いて蓋を開けた。

 姿を現したのは煌びやかな装飾と王家を表す紋が刻まれた短剣だ。


「王家がそなたの後ろ盾となる証だ……それを持っていれば何かと融通を利かせることもできよう……何かあれば気兼ねなく王宮を訪ねて欲しい」


 どうやら最初から断られることを視野に入れて準備をしていたようだ。

 話し合いはこれで終わりかと思えば、イケオジが居住まいを正してシズクを見つめる。


「時にオードリー嬢……リック……ランドール卿から『紫電銀姫』と呼ばれる遺物(レリック)使いの正体がそなたなのだと聞き及んでいるが……それは真であろうか?」

「え~と……はい……多分……ただ、その二つ名については……」


 シズクの返答にイケオジが瞑目した。

 そして、しばし黙考してか徐に切り出す。


「オードリー嬢……ロイエンタール領を襲った地震について……もし、知っていることがあるなら話してくれないだろうか?」


 その台詞を口にした直後……。


 ――ズズズズ……


 いきなり、凄まじい魔力が溢れだして室内を包み込んだ。

 風もないのに窓のガラスがギシギシと小刻みに震える。

 気温が突然下がったかのように吐く息が白く染まり、シズクを除く3人が言い知れぬ重圧に耐え兼ね床に膝をついた。


「人の王よ!妾の主を咎めるつもりならば黙ってはおらんぞ?」

「主様に非はありませんの、訳もなく襲い掛かってきた愚か者どもがいけませんの!」

「もしかして……君達も同じ目に遇いたいの、カナ?」


 シズクを庇うように顕現して浮かぶ精霊娘。

 ふと、半月前の光景がシズクの脳裏を過る。


「ま、待たれよっ!精霊殿、我らがそなた等の主を害するつもりは毛頭ない!」


 シズクが三人を止めようと動くより早く、膝をついた格好のままランドールが叫んだ。


「ふむ……お前は……主の窮地を救ったという者じゃな?……良いじゃろ……その功績に免じて大人しく話を聞いてやるのじゃ」


 サクラが矛を収め少し下がると、ツバキとアヤメがそれに合わせて前に突き出していた両手を下ろした。


「ですが……よく考えて喋る事をお勧めしますの……さすがに二度目は容赦しませんの……」

「ボクも同意見、カナ?」

「ストォ~ップ!ストォ~ップ!アタシが話をするから三人は少しだけ大人しくしててくれる?お願いだから、ね?ね?」


 それからシズクはかいつまんで半月前の事を彼等に語って聞かせた。

 新たな遺跡を求めて探索していたこと。

 その際、いきなり現れた軍隊に取り囲まれたこと。

 指揮官はロイエンタール辺境伯を名乗り、シズクに虜囚となるよう脅迫してきたこと。

 それを断ると武力をもって襲い掛かってきたこと。

 リリーナと名乗る遺物(レリック)使いにシズクが追い詰められ、それを見た精霊が怒って地震を引き起こしたことを順を追って説明する。

 因みに、遺跡の隠し階層については三人に口止めされていたので話してはいない。


 話が進むに連れ、リチャードを始め三人の顔に怒りの色が宿っていく。


「もし、アタシの証言を信じられないのでしたら審議の魔導具を受け入れます」


 審議の魔導具とは虚偽を見破るために作られた物で、裁判などに使われているらしい。

 シズクは現物を見たことはないが、知識として知っていた。


「いや、その必要はない、オードリー嬢……精霊は絶対に嘘を口にしないと聞いたことがある……その精霊がそなたの言を否定しないということは、つまりそういう事なのだろう……違うかな、精霊の方々……」

「ほぅ、大した見識じゃな、人の王よ!」

「精霊を良く知る人の子が残っているとは……思ってもいませんでしたの、本当に驚きですの」

「ふふふっ、ボク達の事なんか……もうすっかり忘れちゃってると思ってた、カナ?」


 リチャード王が顎に手を当て考え込む。

 代わりに傍らに控えたザクセン宰相が言葉を紡いだ。


「精霊の方々にお聞きしたい……彼の地は今どういう状態にあるのでしょうか?」

「妾たち上位精霊の怒りに反応して下位の精霊たちはあの地から去ってしまったのじゃ」

「火水風土……どの子も皆引っ越してしまったのですよ」

「少なくとも、数十年は帰ってこないと思う、カナ?」


 3人の言葉にリチャードは額に手を当て、白髯の宰相は瞑目し、老将軍は天を仰ぎ見た。

 シズクがその理由を知ったのは、数日経ってからのことである。


週一でのんびり更新して行くつもりですが、空いてしまったらご免なさい。m(_ _)m

気長に付き合っていただけると嬉しいです。

感想など頂けると励みになりますので、是非一言でも下されば幸いです。\(_ _)


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