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魔法少女?いえ、魔法好きの喪女です……  作者: 山海千歳


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18 樹海探索

新しい拠点に引っ越して一週間、野菜用の畑も新たに耕し一段落着いたので、シズクは樹海の探索をすることにした。

飛行ユニットを展開し、樹海の木々の上スレスレを飛行する。

時折、空を飛ぶ魔獣が襲って来るが、安全のため基本兵装を全て展開しているので難なく撃退できている。


「近所で魔石が手に入るのは本当に助かるよ~……魔石は使用頻度が高いからね」


研究所に住んでいた時は魔石を入手するのに苦労していた。

基本的には素材屋で購入するか、ハンターギルドに依頼していたが、大量に必要な時はお金がないので、仕方なく魔獣が生息する北の地に遠征してた。

だが、そうそう研究所を留守にする訳にいかないので、良いとこ三、四ヶ月に一度といった頻度だ。


「でも……この前みたいな大群は勘弁してほしいな……まぁ、お陰で魔核はたくさん手に入ったんだけどさ……」


あれは飛行ユニットに改良を加え、試験飛行のため西へ足を伸ばした時の事だ。

たまたま通りかかった辺境の地で魔獣の群れに襲われている砦を見掛けてしまったのである。

見殺しにするのも寝覚めが悪いと思い、魔獣の討伐に手を貸したのだが……。

さすがに数が多過ぎたのか、左手の小手に内蔵した魔法デバイスがオーバーヒートで故障してしまった。

幸い予備の魔法デバイスがあったので何とかなったが、もう少し数が多ければ全兵装を展開する羽目になっていただろう。


「……さすがに……あの格好は恥ずかしいよね……環境にも悪いし……」


デンド○ビウムを模して作った兵装はさすがにやり過ぎたと反省している。

試験運用してみたところ、火力が強すぎてオーバーキルも甚だしい有り様だった。

見た目がゴツ過ぎ、素材は全滅、地形は変わる、重量がありすぎて碌に身動きができない等々……良いとこなしだ。

結果――即日封印した。


「でも……人助けとは言え……たくさんの兵隊さんに、この姿を見られちゃったのはマズったかな……」


監視カメラの類いはシステムダウンさせたし、銀髪に変じたこの姿なら正体が露見する心配はないとは思う。

とは言え、人見知りなシズクとしては、この姿を人に見られるのは恥ずかしくて嫌なのだ。


ともあれ、過去の自分を反省しつつ飛行していると、森の一角に黒い影のようなものがチラリと見えた。


「ん?……なんだろう……あの黒いの……」


気になって近寄ってみれば、木々の合間を黒い靄が漂っている。

見た感じ身体に悪そうなのでフルフェイスモードにして地表に降りてみる。


「毒……ではなさそうだけど……」


センサーに反応がないので人体に害はなさそうだが未知の有害物質の可能性も捨てきれないのでフルフェイスのまま周囲を探索する。

黒い靄が濃い方へ歩いて行くと、枯れた植物を見かけるようになった。

更に歩けば、黒い靄の濃度に比例して、枯れた木々の割合はどんどん増えていく。


「うわぁ……何だろう、あの白い石柱……遺跡?」


不意に視界が開け、広場のような場所に行き着いた。

枯れ果てた下草の大地に白い石柱が何本も立っている。

その光景は前世のストーンヘンジを彷彿させられる。

等間隔で円形に並んだ石柱の中央には御影石を思わせる黒いモノリスがひっそりと立っている。


「死にたくなくば……」

「それ以上近寄るな……」

「人の子よ……」


その声に振り返れば、いつの間に現れたのか金髪の女性が3人、シズクを包囲するように立っていた。

3人とも七分丈のベージュのパンツに萌葱(もえぎ)色のチュニックと、揃いの格好をしている。

ベルト代わりの蔦がなかなかワイルドだ。


血縁関係にあるのか、三つ子なのかは分からないが良く似た顔立ちをしている。

整った目鼻立ちに八頭身のモデル体型、シズクとは対極の容姿をした女性なのだが……。


(小人族とか…妖精族とか…そういう種族なのかな……)


150センチしかない小柄なシズクよりも、更に頭一つ分小さい。

この世界の知識はないが、彼女達の台詞からして、人とは異なる種族なのだろう。


「ここへ何をしに来た……」

「人の子が足を踏み入れて良い場所ではない……」

「早々に立ち去れ……」


交互に喋るのは彼女達の習慣なのだろうか。

3人の間に距離がある上、ランダムに喋るので顔を動かすのが微妙に煩わしい。


「勝手に立ち入ったのは謝ります……ごめんなさい……アタシ、この近くに引っ越して来たので森を散策してたんです」


シズクがペコリと頭を下げると、3人が同時に小首を傾げた。

傾げる向きこそ違えど、そのシンクロニシティは驚異的なレベルだ。


「引っ越して来た……?」

「森の領域に……?」

「人の子が……?」

「……あのぉ……できれば、一人の方が代表して話してもらえると……」


いちいち顔を向けるのが大変なのでお願いしてみるが……。


「一人が代表……?」

「意味不明……」

「人の子は奇妙な事を言う……」


ダメなようだ。


「えぇと……貴女達は何と言う種族なのですか?ご近所の誼で……できれば仲良くしたいなぁって……思ってるんですが……」


シズクが恐る恐る申し出ると……。


「我等はドライア……」

「人の子が精霊と呼ぶ存在……」

「森を守護するが我等の務め……」


(ウオオォッ!精霊族キタ~!ドライア?ドライアド?とにかく、ミャアさんに続くファンタジー種族の登場だよ~!)


「我等はドライア……ドライアドではない……」

「ミャア?ファンタジー?」

「人の子の言葉は難しい……」


3人の台詞にシズクは、はっとして理解する。


(あぁ……これテレパスってやつだ……)


お互いにテレパシーで思考を遣り取りしているのなら、驚異的なシンクロ率にも頷ける。

今しがたも、シズクの思考を読み取ったのだろう。


「半分正解……」

「だが、半分間違い……」

「我等は一つ……」

「えっ?……それってどういう……」


シズクの疑問に、ドライアが口々に答えて言う。


「我等は一つ……」

「全にして個……」

「個にして全でもある……」


それはつまり群体というものだろうか。

お互いの思考を共有しているのではなく、統一された一つの思考が3人の身体を動かしているという感じなのだろう。


「驚いた……」

「理解を示す人の子は……」

「実に二千年ぶり……」

「に、二千年ぶりって……」


精霊と言うだけあってかなり長命なようだ。

もしかしたら、寿命という言葉すらないのかもしれない。


「それで……あの白い柱とかって、遺跡かなんかですか?あの黒いモノリスの辺りからこのモヤモヤが出てる気がするんですけど……」


かなり古そうだが、人工物であることは間違いない。

遺跡でなくドライアにとって大切な場所なのかもしれない。

どうせ考えていることが諸バレなのだから、気になった事をそのまま口にしてみた。


「人の子にすれば遥か昔……」

「あれは神の使徒が作りし封印結界……」

「悪しき魔人を封じる為のもの……」


最近、何かとついてないシズクは、ヤバそうな単語に頬をひきつらせる。


(い、嫌な予感しかしないよ……)


「悠久の刻を重ね……」

「封印はもはや限界……」

「魔人が甦るのは時間の問題……」


やっぱりかよ~、と頭を抱えるシズク。

途中から厄介事の匂いがプンプンしていた。

巻き込まれ体質なのでは?と疑った覚えもある。


(はぁぁぁ……引っ越した近所にこんなヤバそうなモノがあるなんて……ついてなさ過ぎだょ~)


新築で家を建て、挨拶に行った隣家で不発弾が見つかったと、告げられた気分だ。


「あのぉ……結界を補強するとか……もう一度封印を掛け直すとか……できないんですかね」

「それは不可能なこと……」

「封印の術式を知るのは使徒のみ……」

「我等がすべきは森を守るため戦うことのみ……」


薄々そんな気はしていたが、どうにもならないようだ。

しかも、下手に手を出せば、いつ封印が壊れて魔人とやらが出て来てもおかしくない状態らしい。


聞けば、魔人とは突然この世界に現れた侵略者らしいのだが、何処から来たのか、何の目的があるのか、何も分からないとのことだ。

しかも、二千年前……古代に栄えていた魔法文明が滅びたのは、その魔人が原因らしい。

もしかしたら、同じような封印が世界中のあちこちにあるのかもしれない。


「魔人は凶悪にして強大……」

「人の子にどうにかできる存在ではない……」

「死にたくなくば疾く去るが良い……」

「あ、あのぉ……ドライアさん達には……勝算があるんですか?アタシにできることがあれば、お手伝いくらいなら……しますけど?……お隣さんだし……」


建てたばかりの新居を追い出されるのは大変に困る。

畑だって作ってしまったし、ハンターギルドとも定期契約を結んでしまった。

全く勝ち目がないような存在ならば逃げの一手だが、可能性があるならすがってみたい。


シズクの言葉に3人のドライアが初めてお互いに顔を見合わせる。


「良いだろう……人の子よ……」

「そなたの提案を受け入れる……」

「我等に手を貸してほしい……」

「り、了解です……何ができるか分かんないけど……任せて下さい」


ドライアの話によれば、封印は持ってあと半年ほどらしい。

今は封印に(ひび)が入った状態で、魔人はその隙間から魔力を吸い上げて中から破ろうとしている状態らしい。

そして、話し合いの結果――ならば、いっそのこと魔人が力を取り戻す前にこちらから封印を壊して討伐してしまおうということになった。


「我等が三方より魔人を抑える……」

「奴が力を取り戻す前に……」

「そなたが仕留めてほしい……」

「へ?………そ、それって……アタシがメインアタッカーってこと?……で、できれば補助の役にしてくれると……有難いんだけど……」


おずおずと申し出るが、普通にスルーされる。


「見たところ、そなたの魔力強度は異常……」

「人の子のそれではない、古竜に匹敵する……」

「心配ない、そなたならできる……多分……」

「た、多分は止めてほしいかな……あと、微妙にディスられているように感じるのはアタシの気のせいなのかな……」


そこは絶対に大丈夫と言って欲しかった。


「絶対に大丈夫……」

「うん、絶対に大丈夫……」

「心配する必要はない……」

「いやいや……今、アタシの思考を読んだよね……説得力ないんだけど……」


シズクは不平を溢すがドライア達は取り合ってくれない。

準備ができたら声を掛けろと言い残して三方へ散っていく。


「や、やるしかないのかぁ……こんなことなら、お手伝いするなんて言うんじゃなかったよ」


補助を担当するつもりが、いきなり一番重大な任務を押し付けられてしまった。

人助け自体には吝かでないが、責任が重そうな役目は正直かなりプレッシャーだ。

ドライア3人の命が懸かってるとなれば尚更だろう。


「仕方ない……ぶっつけ本番になるけどスパイダー改のお披露目するよ!」


シズクは先日改良したばかりのスパイダー兵装を展開した。

8つのビットが周囲に滞空するのは同じだが、ターゲティングは視線誘導に変更してある。

それに加え、魔力弾の圧縮率は最大で4式の10倍に及ぶ。


「ドライアの皆さん……こっちは準備良いですよ」


シズクが呟くように声をかければ、ドライアの3人から了解を示す念話が届いた。


次の瞬間、3人の魔力圧がいきなり跳ね上がった。

緑色の魔力光が彼女達の身体を包み込み、石柱に囲まれた空間が軋むような音を上げた。

直後、空間にノイズが混じったかと思うと、モノリスが塵となって消え、影の中から競り上がるように赤銅色の肌をした偉丈夫が姿を表した。

下半身は鱗とも鎧とも思える黒い甲殻に包まれ、上半身は剥き出しの裸だ。

盛り上がった筋肉を飾るかのように赤く明滅する筋が走っている。

頭には羊を彷彿させる角が黒光りし、爬虫類の如き縦割れの瞳が金色に光っている。


<……強大な魔力体が出現しました……ドライアによる対象の拘束を確認……>


見れば、地面から伸びた蔓のような物が魔人の足に絡み付いていた。

触手のように蠢く蔓が更に這い出て上半身にも巻き付いていく。

だが、次の瞬間――


――Gyuooooooo!!


凄まじい咆哮が響き渡り、魔人を拘束していた蔓が粉微塵に弾け飛び、その余波で石柱が倒壊した。

ドライアの一人がそれに巻き込まれそうになるが、近くにあった大木に同化するように消えたかと思うと、別の木から姿を現した。

残りの二人は距離を取るように下がる。


「……フルオート射撃……ファイアっ!!」


後退するドライアを追う素振りを見せた魔人に向け、シズクは即座に魔力弾を放った。

秒間4発の連弾が青い光の奔流となって襲い掛かる。

――だが……。


(あっ……これダメなやつだ……)


魔人はまるで何事もなかったかのように元の場所に佇みシズクに眼を向けてきた。

一瞬の事だったが、魔力弾が着弾したした途端、まるで吸い込まれるように消失していた。


(魔力弾を吸収するとか……反則じゃないかな……)


感触を確かめる様に手をワキワキとさせる魔人。

観測データから対象の魔力圧が跳ね上がっているのが分かる。


シズクは直ぐ様ビットを収納し、代わりに左手の魔法デバイスを使う。


「……ターゲットロック……裁きの豪雷(トールハンマー)っ!」


稲光が大気を切り裂き、閃光が辺り一面をホワイトアウトさせる。


――ズガガガーンッ!!


バイザーの閃光防御が解除され魔人の姿が視界に映ると……。

物理現象は有効だったらしく、直撃した部位が消し飛び、黒焦げになった肌がシュウシュウと煙を上げている。


「よし……トドメにもう一発……はへ?」


肉が波打ったかと思うと、グヂュグヂュと蠢いて傷が塞がっていく。

そして、ものの十秒も掛からず元の状態に復活してしまった。

多少魔力強度は下がったが微々たるものだ、ほぼダメージゼロに等しい。


――その直後……いきなり視界から魔人の姿が消失し、バイザーにアラート音がけたたましく響く。


次の瞬間、激しい衝撃に襲われたシズクは空に向かって高々と弾き飛ばされていた。


<……過剰負荷により……魔力障壁が消失……再稼働まで22秒……>


視界の端に拳を振り抜いた魔人の姿が映る。

掲げた手をそのままシズクに向かって突き出す魔人。

手の先に黒い魔力の渦が現れる。


「や、ヤバい感じかも……」


そこへ――


「退避せよ、人の子っ!」

「あとはこちらで何とかするっ!」

「ここより先は我等の務めっ!」


ドライアが魔人を再び拘束していた。

先程のような蔓ではなく、緑の燐光を放つ、魔力の帯が雁字搦めに巻き付いている。


「も、もう一度だけアタシにやらせて下さいっ!」


途中で投げ出すのは性分ではない。

それに彼女達の言葉には決死の覚悟が宿っていた。

下手をすれば『玉砕上等、死なば諸共!』等と考えているかもしれない。


シズクは空に滞空したまま、音声入力でシステムを呼び出し、件のデンドロ兵装を全て展開した。


<……システムオールグリーン……ウェポンシステムとのリンクを確立……ミサイルポッドの残弾数……貫通弾26、炸薬弾22……核撃収束砲(ニュークリアカノン)のチャージを開始します……完了まで180秒……>


電子音声のカウントダウンを聞きながら、シズクは被害が周囲に及ばぬよう結界の準備を始める。


(全力でぶっ放したら……この辺りの地形が変わっちゃうからね……)


<……対魔結界の座標を固定……>


(これが通じなかったらアウトだよね……アハハハ……)


自嘲するように乾いた笑いを浮かべるシズク。

二度目の転生なんてあるのかな、等とつまらないことを思いつつ、射撃体勢を取って魔法式を調整していく。

何も言わずとも、シズクがやろうとしている事はテレパスのドライアには伝わっているはずだ。


<……魔法式の調整及び魔力のチャージ完了……核撃収束砲(ニュークリアカノン)……発射体勢にて待機……トリガー解放……>


「……発射(ファイア)っ!!」


次の瞬間、凄まじい閃光が辺り一面を埋め尽くす。


この日、地上に太陽が現出した。

超高温超高圧のエネルギーが『魔人』と呼ばれる古代の文明を滅ぼした侵略者をこの世界から跡形もなく消し去った。


それがどのような事態を招くのか……。

地上にそれを知る者はいない。


週一でのんびり更新して行くつもりですが、空いてしまったらご免なさい。m(_ _)m

気長に付き合っていただけると嬉しいです。

感想など頂けると励みになりますので、是非一言でも下されば幸いです。\(_ _)


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