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<93> 過去を知った三兄弟

 浄化魔法を全ての霊にかけたので、三兄弟を除き霊たちは地獄ではない霊界に行った。三兄弟は、まだ納得していないので、その場に留まっている。カイトは納得のいく説明をするので全員こちらに来て下さいと言って王宮に向かった。


 白神禄朗とその妻のカナが三兄弟の前に立った。カイトが三兄弟に対して説明を行った。この会話は太郎には見えていないが声だけは聞こえる。リサには声だけでなく姿も見えている。


『こちらの二人は、あなたたち三兄弟の先祖の黒川家に騙されて殺された白神家の人たちです。あなたたち三兄弟は、理不尽にも殺されたと思っているでしょうが、事実は違います』


 それを聞いた三兄弟が、困惑するも納得はできないとばかりにカイトに言った。


 長男『そんなことを言っても、俺たちは騙されないぞ』


 次男『そうだ、証拠がないと俺たちは誰の言うことも信じない』


 三男『俺たちがどれだけ悔しい思いをしたか、わかっていて言っているんだろうな?』


 カイトは、『証拠を見せますので安心して下さい。』と言って、王宮の暗い部屋にみんなを案内した。


 リサの体に入っていたキャサリンが、リサから出て行く。


 キャサリンは過去の映像をあらかじめ準備したスクリーンに念写した。映された映像と別に接続したスピーカーの音声にみな集中した。太郎もこの映像と音声は認識できた。この能力は、せいぜい三十分しか使えないし、三十分も使ったら一週間は休まなければならない。それほどに消耗する能力である。


 映像が流れていく。過去の白神禄朗が生きていた時代の様子が映し出されている。


 黒川家の人たちは、当時お金に困っていた。そこで、白神家の人たちに相談したのだった。事情を知った白神家では、助けてあげることにした。黒川家では、商売がうまくいけば返済できるのだが、実はその見込みは五分五分だった。


 約束の返済の時期が来たが、まだ返済できる状況ではなく、返済を待ってもらうことにした。白神家でもお金に困っているわけではないので、返済を待つことにした。


 それから、二年の歳月が流れ、また返済の時期が来た。実はこの時点ではお金を返すことが可能となっていたが、黒川家の人々の欲により、返済するのが惜しくなった。そこで、黒川家で相談した結果お金を返すふりをして白神夫婦を殺すことにした。


 そこまでの映像を見た黒川三兄弟は、黒川家の先祖が原因であることを知り、既に怨みや憎しみの感情は消えていた。そのため、素直に映像を見ていた。元々は素直な者たちだったのだ。映像はまだ続いた。


 白神家では、返済はいくらでも待つつもりだったのだが、黒川家では相談することもなく、殺すという選択をすることにしてしまったのだ。返済したいので来てほしいと言って、白神カナを呼び出した。そして縄で首を絞めて殺してしまった。


 黒川三兄弟は過去の先祖の過ちを恥ずかしく思った。さらに、カナを探しに来た禄朗が同じく黒川家の三人に捕らえられて首を絞められ殺された映像を見て、いたたまれなくなった。助けてくれた恩人を殺したのだ。そんな理不尽なことが許されるはずもない。


 殺された白神夫婦は残された子供たちのことが心配で霊界に行くことなく地上に留まらざるを得なかった。そして、白神家の子供たちが黒川家を憎み、怨みを晴らす機会を待っていたのだ。怨みは子々孫々に伝えられた。そしてようやく時が来た。


 高利貸し商売をし、たくさんの人に怨まれている店の主人が殺されたのだ。


 その時に殺した犯人は白神家とも黒川家とも関係なかったが、白神家では黒川三兄弟がやったという証拠を作り上げた。そして、その証拠が理由で三兄弟が殺されるに至ったのだ。映像はそこで終わった。


 三兄弟は白神家がやった事件を自分たちがやったことにされたと聞いていたのに、事実はそうでなかったことを知ったのだった。そしてカイトは言った。


『わかります。この映像を見ても納得できないですよね。だから……』


 三兄弟『いや、もう充分だ』


『え?納得したんですか?だって……』


 三兄弟は、先に罪を犯したのが先祖であるなら、自分たちは文句を言える立場ではないと潔く認めたのだった。それで、白神家と黒川家の怨みの連鎖は完全に断ち切られ、お互いに納得したのであった。カイトが逆に納得していなかった。『せっかく準備したプランBやプランCが……』と呟いている。


 黒川長男『禄朗さん、カナさん。俺たちの先祖が大変申し訳ないことをした。許して欲しい』


 黒川次男『知っていたら、こんなことはしなかった。白神響子さんにも申し訳ないことをした』


 黒川三男『本当に申し訳ありませんでした』


 白神禄朗『こちらこそ、憎しみが不幸の始まりだと分かってなかった。すまなかった』


 白神カナ『私は、初めから怨んではなかったけど、子供たちのことが心配で夫と一緒にいるしかなかったの。ごめんなさいね』


 リサ『私は、もう何も怨んではいないから。三兄弟のみなさんもこれから幸せになって下さいね。それでいいですよね。禄朗さんとカナさん』


 白神夫婦は、もう怨みも憎しみもないと、リサに対して微笑みを見せた。


 天から光が射すのが見えた。お迎えが来ている。禄朗とカナが最後の挨拶をした。それから三兄弟も僕たちに挨拶をして霊界へと旅立って行った。リサも太郎もすがすがしい気持ちになったのだった。


 実は、三兄弟が納得しない想定でレイガが待機していたのだが、出番がなかった。三兄弟を死に追いやった白神家の家族に謝罪させようとプランBを準備していたのだ。他にも、黒川家の恩を仇で返した先祖たちも呼んでプランCを準備していた。それらが無駄になってしまったことでカイトはレイガに謝罪したのだった。

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