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<92> 最終決戦2

 ファミルに対して、九人が同時に襲いかかる。ファミルは、ゲートに少しずつ近づきながら相手をする。九人の攻撃力の合計はファミルを上回った。ファミルは超音速で動いているが、それでもかわし切れない。ファミルの顔や手が少しずつ傷がついていく。出血が少しずつ増えている。対して九人は全くダメージがない。ファミルが手加減をしているわけではない。ファミルが攻撃してもダメージを与えられないのだ。


 圧倒的不利である。まさかここまでとは思っていなかった。ファミルはそれでも全力を出せる喜びが勝っていた。実際のところこの九人は他の囚人たちと比べてはるかに強力である。ファミル対策として準備された者たちであり、入っている霊も、戦闘力の高い者が集まっている。他の全ての囚人約百人を合計した戦力よりファミルと戦っている九人の合計の戦力の方が上である。


 ファミル対策要員なだけあって、一人一人の能力が異常であった。それが九人である。ファミルでなければ戦いにすらならないだろう。でも、ファミルはそんな状況にも関わらず楽しそうに動いている。顔や手など、何か所切れているかわからない。出血量はどんどん増えている。回復魔法を自分に使う余裕もない。ファミルは異世界と通じるゲートへと移動した。


 自然と、九人もファミルに続いてゲートを通過する。全員ゲートを通過したのを確認して、ファミルは九人と戦いながらゲートを閉じた。そしてここはユーナス。魔法が使える場所である。


 ファミルは全力で九人から逃げた。スピードは九人よりも上である。だから逃げるだけなら難しくはない。二百メートルぐらい離れた場所で、まず回復魔法を自分に使う。手や顔の出血が止まった。それから浄化魔法を使い、血で汚れた衣服もきれいになる。そして、今度は敵の九人に向けて浄化魔法をかける。


 すると、彼らの中に入っていた霊が次々に体から出て行き、九人はどんどん弱体化していった。出て行った霊は、迎えに来た霊達に連れていかれた。予定通りである。なかなか体から出て行かない霊もいたが、七度目の浄化魔法で完全に出て行ったのをファミルの中にいたナンシーが確認した。もう、ファミルが全力で戦う相手ではなくなった。


 再びゲートを開き、九人をゲートの外に出すと、そこには既に警察が待機しており、予定通り九人が逮捕された。他の囚人たちも全員連れて行ってもらう予定である。テレビ局も来ていて、ここはナンシーに代わってもらい、対応してもらう。ナンシーは、他の囚人たちも捕まえるので忙しいという理由で、その場を立ち去り、ゲートを通り太郎たちのところへ急ぐ。


 太郎たちのとこへ戻りながら、ナンシーはファミルに体を返した。そしてファミルは太郎たちのいる場所に到着する。そこには、既に浄化魔法により霊が取り去られた百人ぐらいの囚人たちがいた。ファミルは、囚人たちを整列させ、全員をゲートに向けて歩かせた。逆らえばどうなるかをしっかり見せたので、みな従順だった。しっかり見せるために犠牲となった大木が倒れている。どうして倒れたかというと、ファミルが全力で蹴ったからである。その威力を見て逆らおうという気になるものはいなかった。


 残りの囚人たちも全てファミルが警察に引き渡し、テレビ局の人たちにはナンシーがまたファミルに代わって対応した。ファミルの功績がテレビで取り上げられ、全世界で放映された。ファミルの人気はさらに上昇することになるのであった。


 そのころ、太郎たちは浄化魔法をかけた三兄弟とリサの転生前の先祖である白神夫婦を会わせて、三兄弟に過去の罪を見せていた。元々は先祖の犯した罪を自分たちが清算することになったと知った三兄弟は、もう怨みはありませんと言って迎えに来た霊に連れていかれた。そして、白神夫婦も役目を終えて地獄ではない霊界に行けるようになった。


 地獄とは、良心の呵責を感じている人や怨みや憎しみの念がある人たちが行ってしまう場所である。地獄から解放されるには、良心の呵責を感じている原因を解決したり、怨みや憎しみが無くなればよい。しかし、それは自然にできるものではないのだ。だから、地獄にはまだたくさんの人がいる。


 ここまで、順調すぎるぐらいに順調に話が進み、一番驚いているのはカイトであった。予定通りになるとは想定外なのだ。こんなことはかつて一度もなかった。『せっかく準備したプランBやプランCが無駄になりました』 と文句を言って笑っていた。ようやく、太郎から依頼された仕事が完了したのである。


 トニーは、三兄弟からの報告を待っていた。報告がないので心配していたが、たまたま見たテレビ放送で、ファミルの活躍により事件が解決、囚人たちは全員逮捕されたとニュースキャスターが言っている。現場でファミルが質問に答えているのが放映された。それを見て、作戦が失敗に終わったことを悟った。


 集めた仲間たちも戻ってこない。その事実をどのようにボスに報告するか悩むのだった。

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