<89> 対策に悩むカイトとレイガ
カイトとレイガは青木探偵事務所でそれぞれ青木とグレイの体を使い会話をしていた。もう十月になり、エアコンがなくても快適な季節である。しかしながら、二人は嫌な汗をかいていた。
熱かったはずのコーヒーも、すっかり温くなっている。レイガの報告を聞き終わった後、カイトは天井を見上げて言った。
「最悪の時には下を見ないことにしているんですが、上を見てもいいアイデアが浮かびませんね。困ったものです」
レイガもここに来るまでにいろいろ考えたものの、どうしていいか全くわからないままだった。
牢屋に入っていた囚人の中でも強そうな者たちを集めて脱獄させるなど、想定外だったのだ。そして、その中にたくさんの霊が入って意識を完全に奪っているので、敵は都合のいいように囚人たちを使うだけだ。
八十万もの霊が、こちらの仲間にも入り込み自由を奪う。そう考えるとどんな計画をしたとしても失敗に終わる予想しかできない。
「今回ばかりはこっちが完全に不利だな。ファミルの今の仕事が早く終われば別だが」
「ファミルの仕事を、弟子たちに任せましょう。太郎とリサを守れるのはファミルにしかできません。多くの霊が入った囚人たちは常人の数十倍の力を持ちます。ちょっと訓練したぐらいの弟子たちが百人がかりで戦っても、奴らには敵わないでしょう。しかも、多くの霊に入られたら何百人いようと関係なく意識を奪われます。でも、ファミルならば話は違います」
ファミルは元々が異常な強さだった。それが最近では魔法により肉体を強化しスピードも数倍にアップさせることができる。だからファミルは音速を超える能力を持っていることになる。最大速度はマッハ三。誰もファミルを捕らえられない。音速を超える時に出る衝撃波が恐くて近くで戦えないが、彼女一人で戦況は大きく変わることは間違いない。
今、ファミルはテロ組織を撲滅するために世界中を飛んでいた。ファミル一人いれば、戦況は逆転するため、大金を積んで依頼されるのだ。ファミルが依頼されているので、ファミルが対応しなければ契約違反となりそうだが、結果を出せば文句を言われる筋合いはない。そう考えたカイトとレイガが、ファミルを呼ぶことにした。
「ファミルの中にはナンシー含む霊を十人入れて、他の霊が入れないよう防御します。太郎にも十人入れて、ジンにも協力してもらいます。リサはジンに任せてしまいましょう。
「ジンが協力してくれるのか?」
レイガが疑問に思うが、カイトはジンに確認を取っていた。
「この前、ジンと話をして、積極的に干渉するのはまずいが、たまたま襲われたので、仕方なく身を守るためにやったことならギリギリ大丈夫ということでした。たまたま、偶然に、リサが襲われて仕方なく。ちょっと反則かもしれませんが、最悪でも天使だとばれなければ結構大丈夫なようです」
ジンは、昔から天使と思われていないことが多く、そのために本人は悔しい思いをしているが今回ばかりは都合が良かった。今回の作戦は次の通りと決まった。
敵の霊の数は八十万である。その数を相手にするのは危険だが、全ての霊を異世界に誘い込む必要がある。そこで太郎に入っている霊に出て行ってもらい、太郎に霊が入れる状態にし、太郎は浄化魔法を自分にかけ続けてもらう。そうすることによって、悪霊の要素を浄化した霊達を霊界に送る。
そして、三兄弟が最後に残るので、三兄弟とリサの先祖を会わせる。そして、キャサリンの能力を使ってもらい三兄弟に過去を見せるのだ。真実を知った三兄弟がどのように思うか、そこが問題ではある。
作戦は決まったものの、ファミルの仕事の引継ぎが必要なので、その期間は一週間かかる。それまでの間、太郎とリサがこちらの世界に来ないようにしておく必要がある。レイガには、情報操作のためにアル・カポネの所に行って、トニーに太郎とリサの情報を伝える必要がある。一週間後に戻ってくるという情報である。
作戦は、失敗することも想定して考えるのが基本である。カイトとレイガは、それぞれ失敗する可能性を考えて、他にすべき対策を計画するのであった。




