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<85> 焦るレイガと余裕のカイト

 青木探偵事務所でレイガとカイトは話をしているが、レイガは落ち着かない様子でいた。逆にカイトは全く心配している様子はなく、そんなカイトを見てレイガは言った。


『太郎とリサが襲われというのに何でそんなに落ち着いているんだ?』


 そう言われて、カイトは静かに立ち上がり窓から見える景色を見て言った。


『リサと太郎が無事であることは間違いありません。こちらに彼らがいないことは、キャサリンに確認済みです。ということは異世界に無事逃げることができたということです。だから、危険は去ったと考えて良いでしょう。一時的にですが』


『それでも、一時的にであって、こっちに戻ってきたらまた襲われるじゃないか。どうするんだ?こちらも奴らと戦うなら準備が必要だぞ』


『準備なら、白神家の怨みの連鎖の始まりの人物が味方になったことで整っていると思いますよ。これ以上の準備は不要だと思います』


『相手は数十万人の霊なんだろう? 今回ばかりは相手が悪いと思うが』


『そんなことはありません。それに既に太郎とリサは対応していますよ。この状況はそんなに悪くないようです。ジンが助けてくれる限りにおいては』


 レイガは、カイトの言っている意味が全くわからない。情報操作において、レイガが対応できない悪霊が多く混じっている今回の件に関して何も保障することができない。事態をコントロールできないのだ。今までとは全く違う状況である。逆にカイトが落ち着いている理由。それはジンを信頼しているからである。


 ミカエルとかガブリエルのような有名な天使と違い、ジンは妖魔とか魔人などと誤解されているが、違う意味で有名な存在である。


 同じ天使でありながら天使として認識されていないが有名である点では全く劣っていない。


 しかも、ジンの力は強大である。強大過ぎて今まで本気を出すことがほとんどなかっただけであった。


『ジンって、そんなに凄い存在なのか?』


『ええ、凄すぎて本気を出すことを禁じられているほどです。ですから、本気を出すまでもなくリサを守ってくれるでしょう。そして、リサは太郎を守るために必死になる。つまり、太郎は今回リサに守られることによって、リサの精神を守ることになるのです』


『数十万の悪霊は、本当に不気味だからそれを見ただけで恐怖で動けなくなると思うが、太郎を守らないといけないと思えば恐怖を乗り越えられるということか?』


『つまり、太郎とリサが一緒に行動する限りにおいては、そう問題がない。私はそう思っています。あとは、数十万の悪霊の中心にいる三兄弟に白神家の禄朗とその妻を会わせて、彼らの誤解を解く必要があります』


 まだ、レイガは安心できなかった。


『何か、見落としているような気がする。ジンが見守る限りにおいては、確かに大丈夫かもしれない。でも、ジンは本気を出せない理由があるのだろう? それも含めて大丈夫なのか?』


『実は、本来であればジンが一人の人間にそこまで干渉するのは許されていないのです。だから、今回はジンも罰を受ける覚悟でやっていると思います。……ひょっとしたら、ジンは途中から力を失うかもしれませんね。 ……そうなるとかなりまずい状況になります』


『おいおい……、大丈夫かよ。本当に』


『大丈夫とは、言えないかもしれません』


 カイトも焦り始めた。100%大丈夫だと思っていたのが、ジン頼りであったので、そのジンが力を失う可能性について失念していたのだ。


 時間はあまりない。次に太郎とリサが異世界からこちらに来た時に勝負をかける必要がある。


 ジンが最後まで協力してくれたとしても、簡単に解決する問題でないと考えていたのだ。それがさらに太郎とリサの命の危険があるとすると、慎重に動く必要がある。


『急ぎましょう。私たちも異世界へ行き、太郎とリサがまだこちらに来ないよう伝える必要があります』


『分かった。それと、ジンの力を借りなくても済むようにするなら、対抗できるだけの霊を太郎とリサに入れるのはどうだろう』


 カイトとレイガはそれぞれ青木とグレイの体に入り、移動を始めた。異世界とつなぐゲートに向けて早歩きをする。歩きながら二人は会話を続けた。


「……多くの数の霊が必要になります。それこそ普通なら数十万の霊が」


「対抗するには、それ敵勢力以上の数の霊が必要ってことか。そこまでは準備できないな」


 カイトは、訓練を受けた霊の場合はどうかと考えてみた。実際にカイトやレイガ、ナンシーなどは一人で一万人対応できるし、他の霊も訓練を受けている者ならば数千人は対応できる。


「……普通ならそうですが、訓練を受けた霊が四十人ぐらい集まれば、話は違ってきます」


「なるほど……量より質か。四十人なら、俺たちの仲間が強力すればギリギリ大丈夫じゃないか?」


「そうですね。それでギリギリ何とかなるかもしれません。でも、100%の保障はできません」


 カイトとレイガは異世界とつなぐゲートを通過し、太郎とリサのいる場所に急ぐのだった。

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