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<78> レイガの日常

 アル・カポネが俺のことを呼んでいる?


 ああ、なるほど。ファミルに戦いを挑んで完敗したのに、まだがんばろうとしている部下たちに困っているということか。


 まあ、五十人でファミルをなんとかできるわけないのに、俺がそそのかしたからな。


 最初は五十人も必要ですか? なんて言われたぐらいだから、まあ本当の事を言っても信じてもらえなかっただろう。


 さて、ファミルを倒すために人質を取る作戦。人質は太郎とリサ。まあ、人質にするのも難しいと思うが、もし人質にしたとしても、ファミルは太郎やリサが殺されても困らないからな。人質は無意味だと思うが、どうアドバイスをするのが無難かな?


 アル・カポネのいる部屋に来た。


『入っていいか?』


『おう、入ってくれ』


 部屋に入ると、アル・カポネはひどく暗い表情をしていた。死刑宣告を受けた人みたいだ。もう死んでるけどな。


『ファミルの件で、部下にがんばられると困るよな』


 俺は、率直に言った。アル・カポネは小さく頷き言った。


『あんなやつ相手にするのが間違いだ。関わらないのが一番なのに、あいつらわかってくれねえ』


 俺は、アドバイスを求められてここに来たわけだが、ファミルに関わらないのが一番であることは間違いない。でも、それだと面白くないんだよな。むしろファミルを倒しに行って欲しいところだ。無理だけどな。


 それで、いろいろ考えた結果俺は言った。


『まあ、いまさら部下たちを止められないんだし、好きにやらせてやればいい。どうせファミルはここには来れないんだし、もし何かあっても、部下が勝手にやったことにすればいい。ほとんど事実だしな』


『そうは言っても、これだけ規格外な存在を前にして問題を起こせば何もないということはないだろう。絶対に関わりたくないんだが』


『では、俺がやつらを説得する。ただし、何もしないのは納得しないだろうから、ファミルを襲う前に太郎とリサを誘拐するように言う。ただし、五十人程度の人数で太郎とリサを何とかできると思わないようにと注意する。やつらはファミルほどではないが、かなり強い。だから、太郎とリサをまず誘拐して殺すよう指示する。ファミルにとって太郎とリサは人質として価値がない。殺されてもいいと思っている。だから、誘拐したら殺せと説明する』


『それで……どうなるんだ?』


『実は、太郎とリサを誘拐しても、やつらは不思議な技を使って消える。だから、絶対に捕まえることはできない。ファミルを殺すのと同じくらい太郎とリサの誘拐は難しい。つまり不可能だ。だから太郎とリサを殺せないようならファミルを殺すのは諦めろと言う』


『タロウだけ、もしくはリサだけなら誘拐して殺すことは可能だったりしないのか?』


『まず、太郎だけ、もしくはリサだけという状況がほとんどない。誰かと一緒にいるし、太郎とリサは一緒にいることが多い。太郎だけを誘拐できたとしても、やつは消えることができる。でもリサは自分で消えることはできない』


『それなら、リサだけ捕まえればいいんじゃないか?』


『でも、リサにはジンを呼ぶ能力があり、ジンが太郎に知らせて、太郎はファミルを呼ぶだろう。リサだけと思っていたら、太郎だけでなくファミルまで来るから厄介だ』


『一番やっちゃいけないのがリサだけの誘拐か』


『理解が早くて助かる。リサだけを誘拐することの危険性を理解しているなら、そんなことをさせてはいけない。太郎とリサを一緒に誘拐させる。そうすれば、ファミルと関わらなくて済む』


『どうして、ファミルにとって価値のないタロウにファミルは協力するんだ?』


『それは、ファミルは太郎からお金をもらって働くからだ。上司の命令には逆らえないが、誘拐された上司を助けに行く部下はいないのと一緒だ』


『上司の命令か。まあ、普段いやいや従っているのなら、命令でもない限り自分から進んで助けになんか入りたいと思わないかもなあ。それなら確かに人質としては価値がないな。でも、タロウやリサを怒らせるようなことをして大丈夫なのか?』


『大丈夫。太郎はそもそも誘拐ぐらいで怒ることはないし、リサは太郎が一緒なら別に誘拐程度どうも思っていない。だから、復讐に来ることもないし、安全だ』


『どんだけ心が広いんだよ。誘拐ぐらいって……』


『十五年間も理不尽な苦労をしてきたやつだ。リサも理不尽な殺され方をしているが恨んでいない。ちなみに殺したのはアンタの部下が関わっている。そのことを知っていて特に何もしてきていないんだ。だからそのぐらいはなんでもない』


『……そうか。わかった。それで頼む。あいつらによろしく言ってやってくれ』


 こうして、俺は無事アル・カポネを納得させることで部下を誘導する許可をもらい、彼らを動かすことになった。もはや裏ボスのような存在である。しかも言っていることは全て本当のことだから、疑う要素がない。俺は嘘をつかずにスパイ活動を行っている。


 ある意味最強のスパイだと思う。


 ただし、嘘はつかないが誘導はする。嘘はちょっとしたきっかけでばれる恐れがある諸刃の剣だ。だから俺は嘘はつかない。ただ、真実のみを伝えて彼らを誘導するのみ。


 俺は一度だって彼らに俺が仲間だなんて言ったことはない。それは嘘だからな。では何と言ったのか。それはアドバイスだ。


 最初は部下の一人に小さなアドバイスをした。そして、その部下から紹介してもらい、その上の人にアドバイスをして、その繰り返しでアル・カポネにたどり着いた。全て的確なアドバイスだ。しかも、どのアドバイスも適切ながら、成功していない。絶妙なアドバイスである。


 以前に俺は誰にも知られることなく過去の歴史の中で、カイトと二人で暗躍してきた。昔、アメリカの奴隷解放を成功させるための暗躍がカイトが俺を気に入った理由だったりする。それ以降、俺はカイトと活動するのが結構楽しいのだ。さて、それでは、トニーのやつを唆して太郎とリサの誘拐をがんばってもらおうか。

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