<64> 異世界に魔法治療院を作る
ラケルが忙しいのを承知で相談に行った。異世界に病院を作るなら、まずはラケルに相談だ。ラケルが無詠唱で魔法を使えるようになったからには、失った体を再生させる魔法を使えるようにすべきだと。腕がない人に回復魔法を使っても腕は復活しない。回復魔法には、自然治癒で可能な範囲でしか回復しない。
再生魔法の開発が、この世界求められていると力説する。もし、再生魔法を可能にすると約束してくれるなら予算を大幅にアップするよう手配すると約束した。
ラケルは、再生魔法の研究を僕が行っていたのを知っているが、ラケル自身が使えるわけではないので、今すぐ約束することは難しいと言った。しかし、今すぐでなければ約束するとも言った。今、無詠唱魔法の特訓をしている人たちが全員卒業できたら、再生魔法の開発にとりかかる。だから、予算大幅アップを約束して頂けますかと。僕は言った。
「では、今すぐ僕が魔法研究所に百億Gを寄付します。それでどうですか?」
僕の権限で動かせるお金の上限をラケルに伝えた。魔法研究の開発のために事前に伯爵に許可を取った金額の上限である。それ以外に病院を建てるための予算や、人材を確保するための予算を確保している。
「ひ……ひゃ? 百億G? ……ほ……本当に?」
「はい。それだけ重要なことだと思っています。その予算があれば、なんとかなりませんか?」
「何とかどころか、何とでもなります。何とかします。……ひゃ……百億G……」
ラケルは、予想以上に驚いていた。ラケルの美貌が台無しになるぐらいの顔の崩れぐあいだ。まあ、それでも凄い美人だが。百億Gあれば、どうにでもなるとも言った。今の年間の予算の百倍だそうだ。だったら大丈夫だろう。ラケルには、簡単に再生魔法について説明した。真剣に聞いてくれるのは気分がよい。きっと何とかしてくれるだろう。
病院の建設には、こちらでは魔法を使う。魔法で大きな建物を数百人がかりで三日ぐらいで作る。一日目は設計図どおりの位置に合わせて床を作り壁を作り屋根を作る。二日目は、床や壁をつるつるに磨き、扉などを作る。三日目は、細かい装飾品などを作り、魔法の灯りを各部屋に配置する。灯りには一週間に一度魔力を追加する必要がある。
設計図を大田副社長からもらったので、それに合わせて地球上での位置とユーナスでの位置を合わせる。転移した際に地球とユーナスの同じ位置に同じ大きさの同じ部屋割りの建物がある必要がある。そしてたくさんある部屋の一つに転移室を準備する。その転移室は特に正確に部屋を作る必要がある。間違うと転移した先で怪我をする恐れがある。
転移を繰り返して、位置合わせを行う。かなり正確に建物を作る目途がたった。あとは任せても大丈夫だろう。
地球上では三日で建物を作るのは不可能だ。魔法でもないと無理。だから、半年間かかるが、その間に、人材募集が必要だ。医者になるための学校も今建てているところだ。小学校・中学校・高校・大学を準備している。世界で唯一の無料で学べる学校だ。しかし、試験に合格しなければならない。また、学校の成績が芳しくないと退学もある。しかし、またテレビの力を借りるか? 全四回ぐらいで。その後カイトの考えている新番組に移行するとか。カイトと相談だ。というか今自分の中にいるので、このまま相談だ。
「カイト、テレビで人材募集しようかと思うんだけど、どうだろう」
『テレビ放映で、一時間を二部にわけて前半を私の側の内容で行い、後半を太郎の内容での放送を行う。全二十四回というのでいかがかな?』
「……確かに。長い期間やればいい人材が確保しやすくなるかも」
『実は、考えたんだが、太郎がやろうとしていることと、私がやろうとしていることは、結構関係があるんだ。だから、最終的には私の目的を果たすのに太郎の放送が役に立つ。何のことか今はわからないと思うだろうが、そのうちわかると思う。ヒントは大規模な人集めだ』
「大規模な人集め?」
『世界を移動するたもの時間を限りなくゼロにしようと思ったら、どうしたらいいと思う?』
僕は考えたが、わからない。魔法は……地球じゃ使えないし、転移魔法ではなく、移動魔法? みたいなのをこちらの世界で使ってから転移すれば? でも、移動魔法なんて僕だって使えないし。カイトが何を考えているのか……。そのうちわかるって言われても、ヒントが大規模な人集め? だめだ、わからない。
「カイト、降参だ。全然わからない」
『大丈夫。太郎、今わかってもらう必要はない。ただ、霊は世界を移動するのに時間がかからないんだ。それが何を意味するか。考えて欲しい』
僕はカイトが何か凄い事を考えているような気はするものの、何を考えているのか全くわからないのだった。




