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<62> ファミルに襲いかかる凶悪犯

 レイガ情報で、今日はナンシーと一緒に京都に来てる。ここで凶悪犯が無差別殺人を行う予定。ナンシーに


『ファミル、その服素敵ね。とっても似合うわよ』


 と言われているけど、元々いた世界の服装とちょっと違うので、慣れるまでに時間がかかりそう。赤いワンピースを着ているのだが、目立つ。なんで目立つ服装なのか知らないが、目立つ服装でこの場所に行けと指示されているから、仕方がない。ポケットになんか入ってるけど、まあ、いいや。


 それで、なんでテレビ局の人が撮影に来ているのかな?絶対に偶然じゃないよね。なんか新番組を考えているらしいけど、関係あるのかな?


「ナンシー、ちょっと聞いていいかな? 私たち目立ち過ぎてない? それから、あのカメラ絶対私たちを撮影しているよね。なんかいろいろとおかしくないかな?」


『ファミル、それはね、間違いなくおかしいけど、カイトの考えることが普通ではないから、だいたいいつも通りじゃないかな?まあ、問題ないんじゃないの?』


「ナンシーがそう言うのなら……、わかった」


 私は、ともかくナンシーの言うことには納得してしまう。今までナンシーの言うことで間違いはなかったから。だから、今回も大丈夫だろう。そう思っていたら、テレビ局の人らしき人が挨拶に来た。青木探偵事務所から連絡があり、今日、赤いワンピースの人を追えば事件を偶然撮影できるからと。


 思った通り、今回はいろいろと企みがあるようで、全くもう。


 凶悪犯が来るまで、あと1時間ぐらいかな。ゆっくり食事をしましょうとナンシーが言うので、食事ができるところに行った。庶民的な作りの食堂だ。お金持ちの人は入らなそう。異世界言語能力を持つ私は、文字だけだとメニューは読めるが、どんな料理かわからない。ナンシーに聞いたが、ナンシーもよくわからないメニューだそうだ。


 なので、写真付きのメニューを見せてもらっておいしそうなのを選ぶ。あれ?あの人カメラマン?この狭い食堂に入ってきて撮影許可を貰っている。店の宣伝にもなると言うと喜んで許可してくれた。それからまた私のことを撮影している。今回のを絶対テレビで放映する気だ。まあ、私は見た目が美少女だから、テレビに映るのも悪くはない。自分で美少女とか言うなと言われそうだが、ファンレターとかリサよりたくさんもらってる。


 食事は、それなりに美味しい。刺身の定食に飲み物はコーラというのが意外と合う。でも、食べているところを撮影されるのってどうよ。と思う。


 さて、食事もしてのんびりしていると、予定時間が近づいてきた。残りあと7分。さて、現場に向かおう。


 料金を払う。え?無料でいい?宣伝になるなら安いものだって?まあ、それならと好意に甘える。現場に着くと、残り3分ぐらい。凶悪犯に会ったらどうすればいいのかな?ナンシーと交代した方がいいかな?


「ナンシー、今回はナンシーと入れ替わらないの?」


『無差別殺人を行うような人が相手だからね。まあ、最初ファミルが対応して、そんなに危なくない相手なら、私が対応するね』


「わかった。そういうことなら」


 相手がマシンガンを持っているかもしれないし、もっと恐い武器を持っているかもしれない。私なら対応できるが、ナンシーではリボルバーの拳銃相手までが精一杯だろう。


 時間が迫る。近くに不信な人物がいないか注意深く見る。すると、ものすごいスピードで走る車がこちらに向かってきた。私はわざと避けずにぶつかってみた。ドォゥン!と大きな音がした。


 私は、大きなダメージを受けたふりをして、倒れる。赤い服を着ているから、血が出ているかどうか判断できないだろう。車から、誰かが下りてきた。イケメンとは言い難い男だ。包丁を持っている。


 マシンガンではないなら、ナンシーでも大丈夫なので、代わろうかと思ったが。本来なら大量殺人を行うような相手だ。何を隠し持っているかわからない。その男は私を思い切り蹴とばした。蹴られるのは嫌だが、様子を見たい。私が生きているのか死んでいるのか確認したいのだろう。男が私に言った。


「あんた、まだ生きているな?俺にはわかる。」


「ばれちゃったか。仕方ないなあ。」


 と言って立ち上がると、男は驚いた様子で私を見た。


「お……おまえ、怪我してないのかよ。」


 死んでいないにしても、大怪我はしていると思っていたのだろう。残念でした。私はノーダメージだ。回復魔法を使うまでもない。でも、ノーダメージでは、まずいのかな?


「凄い怪我してるよ。ああ、痛い、痛いなあ。死んじゃう。」


『ファミル、それじゃわざとらしいよ。』


「お前、……俺を馬鹿にしてるのか?いいだろう、殺してやる。」


 そう言って、男は包丁を構えた。それで私を殺せると?一回ぐらい刺されてみようかな。特殊防弾チョッキ来ているから、ノーダメージだろうけど。


「こわいわ。やめて」


『だから、ファミル、その演技はわざとらしいって』


 男は思い切り私の腹部に包丁を突き刺した。ふむ、痛くない。けど、痛いふり。だめだ、ナンシー代わってくれる?


『わかった、ここからは私がやる』


 ナンシー頑張れー。と心の中で思った。私は戦闘はできるが演技は全然だめだ。


「……い……痛い。ハア……ハア……」


「ふははははっ!やった。どうだ、痛いだろう」


「どうして……ハアハア、こんなこと……す・・するの?」


「俺はもうだめだ。何もかも失った。だから一人でも多く巻き添えにして世界的なニュースに取り上げられるんだ。どうせ何人殺したって死刑以上の罪はない。だから、多く殺した方が得だろう?」


 自暴自棄とはこのことか。何があったか知らないけど、悪霊が入っているんだろうなあ。テレビで撮影されているし、ちょっとした事件にはなるかな?ナンシーはこれからどうするだろう。テレビ局の人が警察に電話してるな。この人、大量殺人できずに終わっちゃうね。まあ、大量殺人をさせないために来たんだけど。


「……ハアハア……あなたは、そ……そんなことを……ハアハア・・するような人じゃない。……わ……わたしには……わかる」


 そう言って、ナンシーは男の手を握った。キモイ。あの男の手を握るの嫌。帰ったら手を洗わなきゃ。ナンシーは凄い。あんなキモイのに。あ、あの男、なんか照れてる?ああ、手を握られたのが嬉しいのか。


「あなたは、……本当は優しい人。……それなのに……ハアハア……こんなことするなんて……つらかったんでしょう?……そう……あなたは悪くない。私は死んでもいい。……・でも……あなたは・・ハアハア」


 ナンシー、包丁で刺されてないよね。刺されてないのに何で血が出ているように赤い液が流れているの?妙にリアルなんですけど。あんなのいつの間に。あ、そういえばポケットに何か入ってたっけ。あれがそうだったんだ。


「あなたは、……本当は……ハアハア……とっても素敵な人……。わたしには……わかるの……。本当のあなたを……わたしは……ハアハア……愛します……」


 ムリ無理無理無理無理無理……愛せない……何……何言っているのナンシー……私の心がダメージを受けている。ナンシーは男に笑顔を見せる。わたしにはこの男に笑顔を見せるなんて無理。さらに心にダメージ。でも、男は違う意味でダメージを受けている。


「お、おれは……なんてことをしてしまったんだ。悪かった。俺が悪かった。誰か……誰かこの人を助けて……お願いします。誰か……誰か……誰か……助けて下さい」


 男の人は、困った顔でうろたえている。ナンシーはまだ手を握ったままだ。キモイから離して欲しいけど、客観的に見れば感動的なシーンにも見える。これはもう自分じゃないと思って割り切るしかない。あれはナンシー。私じゃない。笑顔から苦しそうな表情に変化。そこからさらに無理して苦しいのに笑顔を見せる……演技。なんて高度なんだ……。


「あ……あなたは優しい人……。わ……わたしにはわかる。……だから、生きて……」


 そして、ナンシーは気を失った演技をした。男から手が離れる。全身の力が抜ける。……というか演技に見えないんだが。私が死んでるみたいだ。


「おおお………………すまなかったあああああ。死なないでくれえええ……」


 男は大声で泣いた。さっきまで大量殺人をしようとしていた人が、改心してる。ナンシー……あなたは何者なの?あまり時間も経っていないのに救急車が来た。警察は遠くで待機している。私が運ばれた。じっとしている。いつまで演技続けるの?ナンシー?まだ?撮影はまだ続いている。


 この事件はニュースになり、全世界に放映された。ナンシーの演技は各国の言葉に翻訳され、全世界が泣いたニュースとなった。私はノーダメージですが? ……一命を取りとめた??? 誰が?? ……私が?

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