表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
48/100

<48> 青木さんのプライベート

 今日も、自分に戻る時間が来た。


 昼は、カイトに体を貸していて、自分も意識はあるのだが見て聞いているだけだ。自分としては何もしていない。


 昔から、自分は霊の声が聞こえたり、時々は見えたりもしたのだが、カイトとの出会いは衝撃的だった。普通の霊は暗い感じの者たちが多いのだが、たまに明るい霊もいる。しかしカイトは明るいというより発光している。


 そんなカイトが、自分に話しかけてきた。体を貸して欲しいと。

 その代りに、金を稼ぐという。どうやってお金を稼ぐのか……、よくわからないが自分としては、楽してお金が稼げるのであれば、特に問題はない。


 そう思って了承した。朝、九時から体を貸して二十時に返してもらう。

 毎日その繰り返しだ。


 最近、稼ぐお金の桁が違ってきており、正直なところ戸惑っている。月に数十万円の時はそれほど裕福ではなかったが、不満もなかった。


 ところが、月の稼ぎが数億円から数十億円となって、今や数百億円のお金が手に入っている。

 体をカイトに貸しても全部見ているから、どうしてこうなったかは全部知っている。


 でもね、一般人が数百億なんて手にしても、使い道がない。


 いい家を買って車も買って、……とにかく必要なものを買っても十億円あれば足りる。

 それ以上は、特に必要ないのだ。


 それで、人数を増やすということになって、最近凄い人が入ってくるようになったが、新しい事務所を借り、たくさんの人が働ける職場となっている。今は高給なオフィスという感じだ。


 世界中から集まった優秀なスタッフに囲まれる一般人。結構つらいものがある。これが劣等感ってやつか?そんなに劣ってないけどな。一般人の中では。……とにかく、他の人たちが凄すぎて自分がもう不要と感じ始めている。


 でも、青木探偵事務所って、俺が社長ってことになってるんだよなぁ……。


「青木さんお疲れさま」


 自分に声をかけたのは、松井さんだ。若くて美人だが、霊達の存在を普通に受け入れる変わった人だ。自分も他の人のことは言えないが。


「松井さん。お疲れさま。この時間まで体を貸してたから、自分は疲れてはいないけどね」


 そう、自分は楽をしてお金を稼いでいる。あまり自慢できることではないが。それにしても、松井さんが自分に話しかけてくるのは初めてかも。


「最近、会社に入ってくる人達って、世界中から集めた中でも番組内で優勝した人達じゃないですか。だから、一般人の私からすると、凄すぎて自信をなくしちゃいます。青木さんはそう思いませんか?」


「全く……同感だ」


 まさか、松井さんも俺と同じように感じていたとは、……まあ、あの人達と一緒にいたらそう思っても仕方がないか。世界のトップばかりを何十人も相手にするわけだ。しかも、その中に入る人たちは歴史上有名な人が多い。万能の人と言われたレオナルド・ダ・ヴィンチさんが入る人も決まった。


 そんな中で、仕事はどんどん入ってくる。仕事の割り振りはカイトが決めていて、松井さんも電話を受けて対応するが、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、ロシア語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、韓国語など、本当にいろいろなところから電話があるので、少々お待ちくださいと、言われた言語で返事をしてその言語のわかる人に代わる。


 それ以外の言語は、ファミルがいれば大丈夫だ。彼女はどの言語でも理解できる。ファミル・ナンシーペアは、戦闘においては最強であった。この前はライフル11人相手に戦ったというのだから、恐れ入る。


 そんな中で、自分と松井さんは一般人だ。普通の人は、普通の人同士が気が合うというものだ。まあ、若くて綺麗な人だから、普通の人と言っていいのか迷うが。


「よかったら、一緒に食事でもどうですか?お金には困ってないので奢りますよ」


 自分が誘って迷惑かもしれないが、嫌なら断ればよい。もう少し松井さんと話をしたくなって、ダメ元で誘ってみた。


「ぜひ、ご一緒させて頂きます。というか、お金はいくらでもありますよね。高級店にぜひお願いします。あ、でもドレスコードとかうるさいところはまた今度で」


 ……びっくりした。いや、断られる前提で話をしたから、食事の誘いを受け入れてくれるケースの対応を考えていなかった。自分なんかと食事してくれるの?本当に?と、ちょっとドキドキした。


「普通の服で大丈夫なところで、それなりに高級店。そういうところに入ってみましょうか。仕事帰りに」


「私としては、食費が浮くので助かります。給料他の人に比べると安いですから。とは言っても月百万ぐらいなので、それでも一般の人よりは多いですけど」


 松井さんは、高級店での食事目当てとはいえ、自分との会話も楽しんでくれたように思う。


 実は、その後もしばしば松井さんと食事をするようになった。会話をして思ったのだが、松井さんは結構面白い人だ。自分のつまらない冗談にもよく笑ってくれるし、松井さん自身の冗談に対する返しも秀逸だ。


 そういえば、最初にカイトから霊について質問された時も、


「松井さん。あなたは霊の存在を信じますか?」


  「霊?ですか。よくわからないので、肯定も否定もできないんですが、どちらの答えがお望みですか?」


 などと言っていた。あれにはカイトも驚いていた。


 しかも、霊が松井さんに入る心配よりも、貰えるお金のことを心配したり、本当に面白い人だ。松井さん。松井香織さんを彼女にできたらどんなにいいだろうか。


 まあ、ダメだろうが嫌なら断ればよい。どうせ昼はカイトに体を貸しているから、お互いそんなに気まずい思いをすることもないだろう。


 そう思って言ってみた。


「自分は、松井さんのことが好きです。松井さんが自分の彼女になってくれたらと最近毎日考えてしまいます。なので、思い切って告白しました。……やっぱり、ダメですよね」


 松井さんは、今、どんな表情をしているのだろうか。返事が恐くて下を見ている自分には松井さんの表情が見えない。松井さんの沈黙が続く。やっぱり駄目?なのかな。


「……困ったなあ。そうですか、青木さん私のこと好きですか。ダメですよねと言われても、……そうですね……ダメな理由が見つかりません。仕方がないから、いいですよ。仕方がないなあ」


 そう言われて顔を上げると、そこには照れた感じの可愛い松井さんが自分を見ているのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ