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<24> 暗殺者は今日も不毛な一日を過ごす

 久々に大きい仕事が入った。依頼料金が他の暗殺者に比べてかなり高額なので、私に依頼する人は少ない。依頼された仕事をしくじったことはないが、今回ばかりは勝手が違う。なにしろ、存在そのものが消えてしまうのだ。別な世界に行っているらしい。……意味が分からない。元々が、こちらの世界の人間ではないと聞く。この世界以外に世界があると言われても困る。


 しかし、実際に相手が存在している時間が最近は一日で三十分程度。それ以外の時間は存在そのものが消えてしまっている。これは、違う世界があると認めざるを得ない。私は、この世界で最強だと思う。他の人との戦いは、私が一方的に相手を痛めつけるのみであり、かなり手加減しても全く勝負にならない。私は五歳にして既に負け知らずとなり、十歳では、それまで最強と言われていた者と戦って、手加減をして勝った。それ以降、全力で戦える相手がいない。


 私が有名ではないのは、私の本当の姿と名前を伏せているからだ。もし、私が姿と名前を伏せなければ、日常生活に支障が出るだろう。私は日常生活においては、ごく普通の女の子である。


 五歳の頃はまだ、ちょっと普通の人より強いとは思っていた程度だった。しかし十歳からは最強を自覚し、保身のために何者かと戦う時には必ず名前と姿は隠している。男の姿に変え、名前も強そうな名前を考えて常に偽名を使った。そうしないと、恐れられ知り合いが自分から離れていくと思ったからである。だから、普段は弱いふりをしている。荷物を運ぶ時には重いから持てないと言ってみたりする。


 こうした努力により、私にはたくさんの友達がいる。結構男にも好かれる。告白されたことも今まで数回はある。どちらも好みではなかったから断った。私は魔力で対象者の存在を感じることができる。だからタロウの存在を覚え、その気配を感じながら生活していた。すると、ある時間突然存在がなくなり、しばらくすると、また現れたりした。


 全く、意味不明な存在だ。そして最近は殆どこちらの世界にいない。これでは殺せないではないか。高い依頼料をもらっても、存在しない相手はどうすることもできない。


 そんな時、タロウの恋人リサの誕生日の情報を得た。リサの家の前にいたらたまたま聞こえたのだ。誕生日には、リサの家でタロウも過ごすのだという。リサといえば、画期的な算術を世に広めた有名人ではないか。しかし、タロウが世に出した知識は、その次元をはるかに超える。生かしておくと、もっと恐ろしい知識が世に蔓延はびこる恐れがある。汚れた仕事に手を染めた貴族たちには、最悪の存在だ。


 ところでリサの誕生日はいつなんだろう。友達に聞いてみるか。リサのファンだと言えば変ではないだろう。友達が知らなくても、誰か知っているだろう。

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