<25> いざ、異世界へ
リサも僕も、拳銃の使い方をしっかり練習し、何かあれば条件反射で構えられるまでになった。敵なら撃つ。敵でなければ構えるだけ。敵かどうか判断つかない時には、当たらない場所に撃つ。という練習を行った。敵かどうかわからないのに撃つのは、非常事態だからだ。この拳銃の元は「グロック 18」とい自動拳銃で、引き金を引くと自動で弾が出続ける。非常に危険な銃だ。
それを改良し弾倉の交換を容易にして素人でも使い易くしている。弾倉の交換は新しい弾倉を空の弾倉に押し付けるだけで完了する。慣れればポケットから出した新しい弾倉に交換まで一秒すらかからない。目で見なくても交換できるよう、何千回も練習した。この改良には四十億円ほどかかった。改良したものを手にしては、全然だめだと言って何度も作りなおさせた。お金ならいくらでも出す。と言って無茶を言い続けた結果の産物だ。
これは銃刀法違反のない異世界だからこその作戦だ。リサが言うには飛び道具が弓矢しかないユーナスでは、この銃だけで圧倒的な戦力なのだそうだ。それに拳銃を知らない世界の人には、何を持っているかわからないので、初見殺しとなるだろう。
攻撃面だけでなく、防御面も念には念を入れて準備した。超改良型防弾チョッキに向けて銃で撃ってもらう。押される感じはあるが、痛くはない。点で受けた衝撃にも関わらず広い面で受ける構造になっているのだ。僕もリサを銃で撃ってみた。結構平気だそうだ。至近距離から撃っても全然痛くない。
今度は、剣の達人に来てもらい切れ味の鋭い日本刀で切ってもらった。試し切りすると木がスパスパ切れる。ちょっと恐いので、ちょっとずつ切る力を強めてもらう。普通の防弾チョッキは切る力には耐えられないらしい。しかし、これは防弾チョッキでありながら、刃物で切られる場合にも対応しているそうだ。
達人が、僕を切る。全く切れないし、痛くない。先端技術を駆使したナノファイバーを特殊な構造で無数に編み上げた服。一着作るだけでも数十億円かかるそうだ。これと同じ素材で作った帽子を身に着け、急所という急所は撃たれても切られても死なないように準備した。攻撃力と防御力を考えられる限り最高のものを使って準備した。
これに対して達人も、呆れて言ったのだった。
「きみは、……何と戦っているんだい?」
僕は、準備は万全という思いでリサと一緒に異世界に向かった。リサは久しぶりに実家に帰れるので、なんだか嬉しそうだ。リサの実家に向かう。プレゼントの鏡を持って行く。リサの両親にプレゼントする鏡は、リサと一緒に選んだものだ。
リサと楽しく会話しながら歩いたので、リサの家に着くのもあっという間に感じた。とうとうご両親に会うのか。なんだか緊張してきた。僕のことを受け入れてくれるだろうか。リサにそんなことを言ったら、大丈夫だよと笑われた。笑われるようなことじゃないだろうに。
リサがドアを開けて、ただいまと言ったら両親が出てきた。僕は丁寧に挨拶した。
「初めまして。リサとお付き合いさせて頂いております太郎です。」
僕は、これだけ言うのにいっぱいいっぱいだった。練習の時はもっとちゃんと言えたのに。彼の両親がすぐに話をしてくれたので助かった。
「まあ!素敵な彼氏じゃない。リサ、良かったわね。タロウよろしくね。」
「タロウ、リサのことをよろしく頼みます。」
「はい、ありがとうございます。今日はリサと選んだプレゼントを用意しました。よろしければ受け取って下さい。」
そして、鏡をプレゼントしたのだった。
「凄い!なにこれ……これ凄い高いやつじゃないの?こんなの貰っていいの?」
母親はかなり興奮しているようだ。喜んでくれるのはうれしい。リサはこの鏡を実際に買ったら今住んでいる家の値段より高いと思うと言った。リサの父親が改めて言った。
「タロウ、本当にリサをよろしく頼みます。ところでタロウって、あの有名なタロウのことですよね。娘から聞いてはいるものの、実は未だに信じられないのですが」
それに対して、リサが言った。
「お父さん。だから何度も言ってるじゃないの。あの太郎に決まっているでしょう。まさか太郎がこんなに有名になるなんて思ってもみなかったから、驚くようなことになっているけど、最初に会った時は全然そんなんじゃなかったんだから。……目の前でおしっこしてるし……」
リサの発言は僕に破壊的なダメージを与えた。
「リ……リサ……、それは言わない約束だよ。約束してないけど約束だよ……」
リサの両親は、気を使って聞こえなかったふりをしてくれた。気まずいけど今はそれでお願いします。今は大丈夫です。おむつしてるから。なんて言えないしね。何も言えない。話題を変えないと。
それから、リサの家族と僕はいろいろな話をして、意外にもリサの父親がその世界で画家をしていることがわかり、その技量に対して素直な感想を言うと、父親はとても喜んでくれた。僕も絵を描くのは好きなんですよねと言って、この世界には存在しない萌えイラストを描いた。気軽に描いた絵が、その後に大変なブームを産むなんて、僕は思いもよらなかった。描いた絵をリサの父親のカザンに見せた。
「これは、……革命的な……芸術だ。タロウ……君は一体何者なんだい?」
「こちらとは違う世界から来ました。その世界では、このような絵を描く人が多いんで、僕なんかの絵は普通だと思うんですが」
「このような絵をもっと描いてもらってよいかな。そして、真似してもよいだろうか」
「全然いいですよ。こんな絵でよければ描きますし、真似してもらっても問題ないです。ただし、僕が描いたことは伏せて頂ければ問題ないです。このような絵を描いたことがわかると、この世界では問題になるかもしれませんので」
「それじゃあ、この絵は私が思いついて描いたということにして良いというのですか?」
「むしろ、それでお願いします」
リサの父親にとってそれは願ってもないことのようで、凄まじく興奮していた。早速練習するぞと言っていた。それで、もしよろしければと言って、たくさんの白い紙とシャープペンシルと消しゴムをリサの父親にプレゼントした。その紙の質とシャープペンシルやボールペンの書きやすさを試すと、驚愕の表情で再度僕を見て言った。
「これ……本当に貰っていいんですか?……いや、できればもっと手に入れたいんですが、どうやったら手に入れられますか?」
「こんなのでよければ、いくらでも僕が持ってきますよ」
そして、僕とリサの父親はとても仲良くなった。本当によかったと思いつつ、僕は萌絵をいくつも書いてリサの父親に渡したのであった。




