第五話 『黒い膜』は、正式には『未知のゲート』と命名されたが
『黒い膜』は、『未知のゲート』と呼ばれ、国家間で付番を付けて管理されることになった。
でも、巷では『黒い膜』と呼ばれている。その方が分かりやすいのかな?
附番JA123ゲートは日本の123番目に、東京の上空2500メートルに発見されたものと識別される。
さて、このゲートまで、どうやって近づくのか、いろんな案が出て、突拍子もない方法で挑戦する輩があとを絶たない。
ヘリコプターやドローンから吊り下げてもらい膜に向かった者もいたそうだ。
そのまま通過して落下で死んだ者。
跳ね返された者。
特に『黒い膜』に飲まれた者がいたという報告には、多くの人が疑問いだき、羨ましく思う人もいた。
「ほんまかいな?」
「どこへ行ったというのか?」
「消滅したのか?」
膜の縁に鉤爪を引っ掛けて、よじ登ろうとする輩も発生したが、監視の目を逃れることはできず、お縄となった。
まあ、国によっては管理できずに放置されたものもあった。
膜の向こうに消えた者は、行方知れずとなったが、反対に、『黒い膜』からこちらに来るものがあるのではと、注目していたが、膜の向こうからは何も現れなかった。
これまでの調査の結果、『黒い膜』は、地球の空間に固定されていることがわかった。
すなわち、風に吹かれることもなく、そこにある。
太陽系の領域で固定されるならば、それは地球の公転とともに、見えなくなるはずだ。
と、ある宇宙科学者が報告している。
そして、ある日、ある国で戦闘機の飛行訓練をしていたところ、誤って、『黒い膜』に機首を突っ込んでしまった。直径5メートル足らずの膜に、戦闘機が刺さったのだが、戦闘機は『黒い膜』の向こうに通過した。
一旦、空間に入って5秒後に、『黒い膜』の後方に現れたと言うのだ。
「そんな馬鹿な!」
「マッハ3の戦闘機が5秒間もの間、どこをうろついていたというのか?」
巷ではこの現象に、再び沸いた。
「一旦、どこかに収容されて、そのまま『黒い膜』で受け入れるべきか、判断された結果ではないか?」
「それならば、その『どこか』とはどこなのか?」
一方、『黒い膜』に大きな力を加えれば動くのでは? と根拠のない疑問を抱いて多くの方法が試された。
『黒い膜』にロープを掛けるにも何の取っ掛かりもない。網で覆い引っ張ればとの挑戦も無駄に終わった。そう、スルッと抜けたのだ。
地上から、塔を建てるのはどうかと検討された。
もっとも、地上からの到達が有望とされ、足がかりが築けそうな候補は以下の5つが上げられ。
1:サハラ砂漠の西にある地上800メートルの位置
2:USAのグランドキャニオンにある、崖から200メートルの位置
3;日本の南500キロメートルの洋上から100メートルの位置
4:エベレスト山の高度3400メートルで、絶壁から50メートルの位置
5:イースタン島のモアイの横
『黒い膜』の発見から6か月が経った。それまでに判明したことを以下に示す。
1,全世界で、およそ2560箇所が確認されており、数の増減がない。
2,こちらから向こうへの一方向である。
3,潜入数は12体が上限で、人に限定される。
4,身につけた小さな金属は、本体と一緒に潜入できる。
5,重火器や通信機など電子機器も膜の向こうには行かない。素通りしてしまう。
6,最も重要なことだが、向こうの様子は一切わからない。もちろん、潜入した者の生死もだ。
7,『黒い膜』は移動できない
いろいろ試されて、判明した多くのことを知りたければ、各国政府の外交筋で確認できる。




