第三十話 地元民との遭遇
この世界に来てから、30日が過ぎた。
リヤカーで持ち込んだ食料もそろそろ尽きかけた。
少し畑を作って、野菜を植えてみた。種まきから収穫まで10日ほどで、殊の外、出来が良い。
いや、それはおかしいだろう。地球では最低でも2か月はかかる。それが10日なんて!。
野菜は収穫できるようになった、肉類が不足している。近くの湖や川で魚が捕れるので、ほどほどタンパク質の補給はできているが、やはり豚肉や牛肉が欲しい。魚入りのカレーはごめん願いたい。
朝起きて、一連の作業が終わって、皆でお茶をしているとやってきたよ。
未知との遭遇。
「おーい、いたぞー!」
耳を疑った。
野太い日本語が聞こえてきた。
この30日、周囲を注意してきたが、道もなく村もなく、煙も見えることはなかった。人の生活を見ることがなかった。それが、今我々のメンバーの声ではない、男の声が聞こえてきたのだ。
緊急を知らせる、板をカーンカーンカーンと鳴らした。
「ワンワンワン ワオーン」とカレンも警戒体制にはいった。
近くにいた、ココロ、サトシ、イチロー、ユウが、集まってきた。大宮君は小川に行っているようで、5分ほどかかりそうだ。4人の子供たちは俺の後ろに隠れるようにして、声のした方向を凝視している。
草原の下のほうから、数人の人が上がってきた。
その中から、10代半ばの少女が一歩前に出てきた。
「驚かせて済まない」と頭を下げた。
後ろに続く大人たちには、角があったり、大きな耳が見えた。
『黑い膜』を潜った同胞ではない。
先頭の少女は、黄色いツナギとピンクのブラウスに赤い靴を履いていた。
そして優しい顔でニコニコとしながら、
「私たちは、この先のヤヤメ村からやってきました。『黑い膜』から転移された皆さんを保護させていただいております」
立ち話も落ち着かないし、子供たちの緊張もMA✕更新中だ。
「うぅーーうぅ」とカレンも唸る。
「こちらでお話を伺わせてください」と少女を誘った。
いつも6人が座っているテーブルを示した。俺が座ると対面に少女が座った。
「私はジローといいます。この星の魔女をやっています。後ろの人はヤマメ村の人です」
カレンがガルルルと威嚇している。
「俺は、ハジメ。こちらからユウ、イチロー、サトシ、ココロと言います。もう一人ケイコがいます。川に行っていますので、もうすぐ帰ってくると思います。この子はカレン、警護用の犬です。我々は、地球と呼んでいる惑星に出現した黒い幕を潜って、こちらに来たようです。ここがどこかもわかりません。ただ、地球と同じような環境みたいで、とりあえず、ここでキャンプしておりました」
「わかりました。さて、この星は太陽系には属していません。あなた方が住んでいた星からは距離も時間も異なる世界です。しかし、文化文明はあなた方の地球の中世時代と考えて結構です。なぜ、このような星があって、なぜ黒い幕をくぐると、ここに来たことは、追ってご説明してゆきましょう」
「ありがとうございます。で、なぜジローさんは日本語流暢なのですか?。それと、保護といいますが、軟禁とか拘束ではないのですね」
「あぁ、保護と言ったのがちょっとよくないですね。支援かな? お手伝いかな? うん、まあ危害を加えるとか、もっとも拘束なんてありえません。それよりも、この世界を楽しんで欲しいのです。後ろに控えているヤマメ村の人たちも、300年前に転移されてきた方々です。この星は転移者で成り立っているといっても過言ではありません」
「カレン、大丈夫だよ!」とイチローが声をかけると、カレンはおとなしくイチローの側に座った。
しかし、目は男たちから放していない。
ジローさんが次のように現状を説明してくれた。
この世界にある古代都市キリンから地球に向かって転移ゲートが繋がった。そして、2560人が転移してきたと。そもそも、この世界に住む多くの人は異世界からの転移者で成り立っており、今回の転移も他人事ではないとのこと。すでに、2403人が保護されていると。
我々は、ちょっと人里から離れすぎていたので、捜査に時間がかかったそうだ。どのくらい離れているかと問うと、およそ200キロメートルほどらしい。まあ、確かにちょっと遠いね。
5分ほどして、大宮君が帰ってきた。
俺の横に座ったので、紹介と遭遇からのあらましを伝えた。




