第三十一話 町ができた
およそ2400人がミズホ王国の白金の都にある34番ゲート前の草原に転移してきた。
キリンが開いたゲート『黒い膜』は2560個。その中の900から人が潜ってきた。
複数のチームもあれば、一人というものもあった。
やってきたチームの結束は良く、行動を共にしている。
楽園を信じてやってきた人たちは、明るい顔で見つめ会っている。
ホラー見たいな世界を望んでいた人たちは、ガックリと頭を垂れているようだ。
魔女ジローは、アオシとモモコを連れて、転移者たちの前にいる。
「ようこそ、魔女の星『はな』へ。あなた方は、果敢にも『黑い膜』通って、この星に到達したのです。その行動力には敬意を表します。そして、私は、この星の管理者で、8代目の魔女ジローと言います。あなたがたが、この星で暮らせるよう支援を行うためにやってきました。私の左右に整列しているアオシ、モモコは、治安を主体にあなた方の支援を行います」
「あなた方は望んで、あの『黒い膜』を潜って来られたものと認識しています。もっとも望まない人は潜れないのですが。この世界は地球とほぼ同じ環境です。文明は第一次産業前と思ってください。そして、魔法の世界です。あなた方には魔法が使えませんが子供たちは可能になります」
「言葉は、この星の言語に魔法によって翻訳されます。したがって、あなた方の区別に言葉はありません。誰もが共通に話せます。理由は言葉の壁を無くして意思疎通を円滑にするためです。私の話は翻訳なしに理解できるでしょう」
「なぜ私が地球のことを知っているのか? 疑問に思われでしょう。それは、この星の創設者が日本人だからです。それと、我々は常時地球を見ることができます。地球の皆さんが『黒い膜』を目にしてからどのように対応してきたか逐次わかっています。ただし、地球からこの星は見えません」
「さて、みなさんの後ろにテントがあります。今日からそこが皆さんの寝起きする場所になります。そして、ピンクの屋根は女性用のトイレ、青い屋根は男性用のトイレです。きれいに使ってくださいね」
「私の後方には、300人が一度に座れる椅子とテーブルがあります。当面炊き出しをしますので、空いたところに座って食事を取ってください。料金は不要です」
「朝6時半から、この広場で健康体操をします。参加してください。10時からは、この星での生活について説明と実演があります。集まってください」
「昼食は11時から始まり、2時に終了します。私の後ろの時計を見てください」
「3時からは、周囲の掃除や道路や広場など共有設備の整備をしてもらいます。参加者には、お菓子を差し上げます。消灯は9時です。それ以降で騒ぐものがあれば、即刻隔離します」
「夕食は5時から8時までです。それから、コーヒーやジュース、水は左手のミドリのテントで24時間いつでも飲めます」
「治安については、アオシとモモコが巡回し、対応します。問題行動が認められれば、隔離されることもあります。アオシやモモコは小柄ですが、力はあなた方の5倍はあります。まず、抵抗しないでください」
「それから、この星には多様な人種が住んでいます。猫耳、狐耳、狸顔、カンガルーのような者も居ます。二足歩行と知能を基準に人種と獣を区分けしています。自分たちと容姿が異なると言って、無礼なことをすると、アオシやモモコに捕獲されますよ。注意してください」
「将来のことですが、ここに留まるもよし、他への移住もよし、手助けはします。この世界の文明度は産業革命以前です。希望する業種は面接で伺います。主に農業、治水工事、採掘、商いなどですね」
「さて、この近くで土地を耕し住む人には、家の種を差し上げます。家の種を植え付けて特殊な水を与えると、2階建て200平方メートルほどの家が育ちます。部屋数は6つ,キッチン、リビング、トイレなど完備しています」
「質問を受け付けます。ここに、相談受付所を設けますので、併せて利用してください。このキャンプは6か月ほどで解散します。それまでに身の振り方を決めてください。それから、厳しいことを言いますが、我々に歯向かうものは即刻排除します。追々慣れていってください」
ここは、相談口。
今は、モモコの『さなえ』が座っている。
「こんにちは。子供が熱を出して、ぐったりしているのです。助けてください」
「往診になりますか? 「「はい」」 では、こちらのサムというものが診ます」
少し離れたテントに向かい、その中に入った。
「こちらになります。夕べから、この状態なのです」
「『キュア』をかけます。・・・キュア・・・」
サムが呪文を唱えると、子供の顔が穏やかに変わった。
母親らしい女性が、子供の額に手を当てて、熱がさがったことを確かめた。
「ありがとうございました」
病気や怪我をした者の治療が毎日のようにあった。
転移者の間には、魔法による治療が普通に行われるのを見て、ここが異世界であることを確かめ合っていた。
幸いなことに一部を除いて暴力的なことは発生していない。
前向きに、ここで生きることを一生懸命考え、相談にやってくる。
3か月ほどして、8割の人がこのキャンプ場近くに家を立てて定住した。そして500戸の家と住民20000人が住む村ができた。
村の名前は『アケボノ』と名付けられた。
定住しなかった2割の人は、遠くの町を目指した者、さらに森の中に分け入った者、テント生活を続けている者などだ。
ここは、アケボノ町から350キロメートルほど南に離れたところにあるミズホ王国の都『リン』。
人々の間に、50年ぶりに転移者がやってきてアケボノ町と名付けて住み始めたと、話が行き交った。
商売人は早速、日常品をかき集めて出発した。
一方、チームタイムズは、ゲート34から遠く離れた草原の真っただ中でサバイバル中だ。




