第三話 空に黒いシミが発見される
僕が、拉致された?時から、遡ること15年前、一人のカメラマンが、それを発見した。
自称カメラマン(マン?)である自松英恵が、東京に向かう飛行機からスマホを空に向けていたら小さな黒い点が見えた。
なんだろう?
レンズの汚れかな?
まさか光学素子かシステムのエラーかな?
と思いながら、何回かシャッターを切った。
帰宅して英恵は夫にそのことを話した。
「今日、富士山の方に黒いものがあって、写真を取ってきたの。あとで一緒に見てね」
とりあえず、旅の後片付けをしながら、今日の写真をパソコンに読み込んでみた。
あぁ、これね。確かに空の異物だわ。シミだわ。
二人でモニターを覗き込んだ。確かに、青い空をバックにして、あるはずのない黒い点が見える。スマホの光学素子の故障かなと疑ってみたが、何枚かの画像を見ると、飛行機の移動に応じて円形からレンズ状に変化してゆくことがわかった。すなわち、まーるい実体があるということだ。
そのような事例が他に無いかネットを調べてみた。そうすると、自分が飛行した経路の人から同様の現象を知らせてくれた。
なんだろう?
さらに、富士山を撮影していた人からも、富士山の右肩の方に真っ黒な点が確認された
日本各地から、世界から、様々な目撃例がSNS上に寄せられた。
日本だけでなく、さらに世界でも同様に騒がれることになった。
各国の政府や研究機関が挙って意味不明の声明を出すに至り、事実の確認にてんやわんやとなった。
地上やヘリコプターから見て、推測すると大きさは直径2から5メートルほどのようであると、全世界のニュースでも取り上げられた。
実地に調べるにしても、上空の所有権を主張する輩が声を上げた。空は誰のものかと壮絶な議論が戦われた。結論は是となり、土地の所有者の上空にある『黒い膜』は土地の所有者のものとなった。しかし、実際その効力を行使できないので、所有者が文句を言わない限り国のものとして管理することで落ち着いた。
しかし、発見された多くは、いずれも高度が3000メートル超える高さにあって、簡単には近づけない。
ドローンやヘリコプタなどで近付くものもいたが、そこには黒い膜状のものがあるだけ。試しに長い棒を突き刺してみたが、すり抜けるだけで何の反応もなかったそうだ。
もっとも、『黒い膜』からは何も出てこなかったし、その様子もなかった。
人の噂も75日、進展の無い話題は次第に、人々の記憶から消えていった。




