第二十八話 サバイバル6日目の朝が来た
「さて、サバイバルの教本には書いてないが、何が一番注意すべきことがわかるかな?」
「本に書いていることが全てではないこともわかるよ」
「未知との遭遇かな?」
「確かに、そのような表現もあるね。ずばり言うと、一番危ないのは『人』だよ。獣じゃない。人が一番怖い存在なのだ。今更なのかもしれないが、気をつけておこうね」
「「「はい、先生」」」
サトシ先生の今日の一言でした。
「なぜ怖いのかは、ここでは言い切れないので、とにかく人を見かけたら、その場をそっと離れましょう」
あの『黑い膜』を潜ってきた別のチームとの遭遇は、きっと安全。それよりこちら側に住む人がどのようなものなのか不安である。
まあ、気を引き締めることは、大事だ。
今日まで、大きな障害に見舞うことはなかった。カレンものほほんとしている。
「今日は、拠点を水場の近くに移動しようと思うのだけれども、意見はあるかな?」
「確かに、ここだと顔を洗いに行くにも、洗濯するにも、ちょっと遠いわね」
「ついでに、というかこちらがメインだけど、周囲の探索に出かけよう。この2,3日で少しわかったこともあるが、明日はずーっと東へ下ろうと思う」
「やったー、遠足だよ、遠足だよ・・・」子供がはしゃいでいる。
ということで、当日は遠足になったよ。
「「丘を越え行こうよ 口笛吹きつつ・・」」
そんな古い歌をどこで覚えたのやら?
いつもの水場から流れに沿って下ってゆく、歩いてゆく。時々藪漕ぎがある。
藪漕ぎに四苦八苦しながら10キロメートルほど下りてこられた。
「わーーい、海だよー」とサトシとカレンが先に走り出した。そこには大きな湖が広がっていたのだ。
「右側に小高いところがあるので、そこで昼食にしよう。それまで、自由に!」
「いまのところ、現地人らしき者との接触もないし、望遠鏡で周囲を見渡しても町や村、耕作地などは見当たらないね」
「そうね。獰猛な動物を見たことないし、でも犬のような遠吠えは聞いたよね」
目の前の湖は、周囲2キロメートルほどありそうだ。水は澄んでおり、魚はいるかな?
周囲は森が迫っており、ところどころ草地も見える。この小高いところは、草地で森までは200メートルほどあるので、外敵がきても見えやすいかな。近くに岩がせり出しているところがあって、その岩の間から湧き出る水を見つけた。早速、 検査キットを取り出して検査をした結果、飲料にふさわしいと出た。
よし、これで水の心配をしなくてよい。水量も20リットルのバケツが一分ほどで一杯になるほど、十分だ。
左周り見える草地は耕作地になりそうだ。
来るときの森の中にはキノコや木の実が結構あった。毒があるかどうかの調査も必要だが。
さて、昼食時に皆の意見を取りまとめると、全員一致で拠点を移すことになった。
お米も作りたいし、家も欲しいな。
それにしても村か町が無いか探しに行こう。俺自身は孤独に慣れているけれど、子供達には時間がたっぷりある。この世界で暮らすには、適度な文明が欲しい。
『黒い膜』が拒否した重火器や金属、病気などから考えて、きっと地球より文明は進歩していると思う。
が、空を飛ぶ飛行機や衛星の影がない。飛行機雲も見当たらない。
「「「ふろにはいりたーい」」」
もう限界だ。身体を拭いても、匂いが取れない気がする。特に俺は年寄りで加齢臭を撒き散らしているのではと気が気でない。やはり湯に浸かりたい。
ということで、一応準備してきたお風呂セットを確認した。
ゴムボートのような直径1メートルの湯舟、大きな湯沸かし用鍋がある。
ユウと子供たちに薪を集めてもらう。俺とイチローは竈作りだ。
大きな石を積んで、竈を作る。大鍋をセットして、湯を沸かした。
洗い場を用意し、周囲をシートで囲んで、出来上がり。
「「あぁぁいい湯だな・・・」」
子供たちもわいわい言いながら、風呂場に向かった。
俺は、ぬるめで一番最後にはいった。
ほっかほっかと気持ちいい。




