第二十二話 何もわからないところへ行こうとする心境は?
「今日は、あの世界に行こうとしている方々の中から、チーム名タイムズのメンバーの方に来ていただいております。我が国からは、チームタイムズの他に53のチームがあって、総勢346人の方が挑戦されるそうです」
ここは、政府の会見室No2である。
『あなたはなぜに行くのか?』のタイトルで、『黒い膜』に挑戦しようとする人から心境を語ってもらおうと企画した会見である。
聞き手は、ネットで広く公募して資格を満たした48人が選ばれ、座っている。
会見の模様は、全世界にネットで実況されており、質問も受け付けている。その質問はAIが選別して、有効なものを司会者が読み上げる形のもなっている。
時間は90分。聞き手の質問に問題があれば、即刻退場させられる。問題との判断は司会者と俺(鈴木ハジメ)が決める。そういう、会見だ。
「彼のコロンブスは、皆の懐疑的な目を他所に新天地を目指した逸話がありますね。我々も新しい世界を見てみたいのです。そこに何があるのか? ひょっとしたら死があるだけかもしれません。しかし、夢は持ちたい。いや、夢は叶うものものであり、叶わない夢は妄想でしかないと思います」
「夢は叶えるための計画や努力を伴いますが、妄想は頭の中で楽しむだけで終わる空想や、事実に基づかない思い込みを指します。我々は、このプロジェクトで夢を叶えます」
「ずいぶん勝手なことを言いますね。単に逃避行ではありませんか。そんなにこの世界に絶望しているのですか?」
「そうかもしれません。そうでないかもしれません。ただ、行動しなければ、それを知ること無いでしょう」
「幼い子供もメンバーに居ますね。判断の出来ないこどもを誑かして連れて行こうとしているのか!」
「おっしゃることはわかります。今の彼女の心境は我々と共にあることです。彼女がコンビニの側で瀕死だった時に手を差し伸べたのは我々です。この世界と共にいたいとは思っていないことは確かです」
(この質問は退出案件であるが、正義を振りかざすだけでは救われないと言いたいので、敢えて応えた)
「膜の中を覗いた報告も出ております。それには青い空と清々しい空気があったと」
「大宮先生が行かれるのは、甚だ残念に思います」
「確かに大宮先生は外科医として、この方の右に出る人はいないとされる、この世界で唯一無二の方です」
90分に渡り、受け答えがなされ、主催側としては成功であった。そして世界に発信された。
「鈴木さんをはじめ6人の方々は、英雄扱いを望まれていないと思います。皆さんの挑戦が実のあるものになりますようお祈り申し上げます。今日はありがとうございました」と大野君が締めた。
他のチームも同様にメディアからのインタビューに応じていた。
いずれも、好意的な展開であったと聞いた。




