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第十九話 『黒い膜』の向こうは希望か絶望か?

調査隊に入ってから、関係資料を捲ってみた。


『黒い膜』には人為的な選択が働いているようだ。しかし、そこには悪意が感じられない。

特に、武器に関するものは絶対的に拒否してくる。

もっともX国が核弾頭ミサイルを打ち込んだ件も、即座に送り返されている。このことは、秘匿事項で世界には知らされていない。送り返された地域は核爆発で死の町となったことは、X国の滅亡へとつながった。


『黒い膜』の対応で、よくわからないことの一つに、自殺願望者の侵入は入口で阻止される場合と、通過して受け入れてもらえる場合がある。判断基準はどうなっているのだろうか? 


もう一つ、犬や猫、家畜なども、一貫性がない。というものの、愛犬を抱えた老婦人が侵入できた話がある。一緒に行けばOKなのだろうか?



一説によれば、あの『黒い膜』は異世界へのゲートであって、その向こうには高度な文明社会があり、潜ってこようとするものを選択していると。 

そして、その実は良い人が欲しいらしい。悪人や兵器はいらないと。

良い人、悪い人の分け方は? まあ、見知らぬ『黒い膜』の勝手だけれども、ちょっとでも???マークを減らしたい。



『黒い膜』がなぜ空に浮かんでいたのかの疑問には、そのような高い位置にとどく技術を持っているのかを試していると受け取れる。飛行機がなければ、発見も難しいだろうし、『黒い膜』に達することもできない。それは文明レベル5以上を求めていると言える。



今日は、『黒い膜』について、世界の情報がまとまっているので、それに沿って座学をする。

チームタイムズのメンバーは、適当にお菓子や飲み物を手元にして、気楽に聞いている。

講師は大野クズメさん。


世界各地に出現した『黒い膜』は、国際研究機関『未知のゲート管理研究所』で一括管理されている。

その調査報告書によると、大きく5つのことが判明している。


一つは、膜の向こうには、空気と空と水がある。

2つ目は、こちらを攻撃するような様子がない。

3つ目は、膜の向こうに行けるのは人間のみで、明らかに選択されている。

4つ目は、武器、金属や電子機器などは、通らない。

5つ目は、向こうに行けば帰ってこられない。


細々したことは、資料を後で見てほしい。

心構えの足しになると思うならば、目を通すとよい。


膜を通過できる人数には制限があるようだ。

ある国では、数十人を用意して侵入しようとしたが、9人が潜入したところで膜が消滅したとの報告があった。

宗教国家といわれる別の国では、300人を用意して臨んだところ、256人が旅立ったと。

しかし、誰もこの世界に戻ってきていない。

と、思いきや、彼の宗教国家から、2人が戻ってきたと報告があった。そして向こうの世界には青い空と緑と大きな海が見えたと。ほんまかいな! 



『黒い膜』に手足や顔を入れると、引きずり込まれるような力を感じる。それに応じて前に進めると、どんどん身体が入ってゆく。だから、命綱をつけて中を見る方法が取られた。

何も見えないという人も、青い空が見えた、草原が見えた、川の流れる音が聞こえた、鳥のさえずりを耳にしたなどの、観察結果が報告されている。


すなわち、『黒い膜』の向こうには、地球と変わらない環境があるらしいと。

しかし、人らしきものや建物などは見えなかったので、文明があるかどうかはわからないと。



さて、座学はここまで。後日、実地に『黒い膜』を見てみましょう。

解散。


大野クズメさんは優秀。秘匿するならば関係者は少なくした方が良い。これまで、政府関係者は大野クズメさん、ただ一人。廊下や共有エリアで会う人は会釈程度で、それ以上の接触を彼らはしてこない。

すなわち、ニコニコして寄ってくるのは、全て間者と思えだ。

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