第十八話 太平洋上の『黒い膜』探査施設の完成式典
日本の南、500キロメートルの洋上から100メートルの位置に見つかった『黒い膜』。
EEZ内なので、日本の管轄である。
発見されたのも偶然。いつまでも、あるのかは不明。
日本は、人工島を作って、そこから観測基地として橋頭保を築くことにした。
周囲10キロメートルの浮き島を2か月で作った。
3000メートルの滑走路や、研究者用の住居、工事従事者の宿舎が林立した。
そして東の端に、直径300メートルの円柱を立てて、そこから『黒い膜』に接近しようとの計画である。
しかし、ここで問題が出てきた。
『黒い膜』は空間に固定されているようで、波の上下左右の動きには追随しない。電磁波を反射しないので、一般に使われる電磁波による計測ができない。
物理的に触手を作って、設置してみたが素通りして役に立たなかった。
ある研究員が『蝙蝠に倣って超音波はどうだろうか?』。
ほとんどの音域で反射することはなかったが、幸いに25kHzから30kHzに反応があった。
超音波による計測と、それに追従する機械を突貫で構築した。
そして、やっと3か月を費やすことで、『黒い膜』の前に立つことができた。
直径300メートルの床は、『黒い膜』に追随して動く。
さらに、1か月をかけて安全対策の柵や、研究棟やホテル、一般人の観測台などの施設を整えた。
一般人には内緒だが、鳳凰の右翼には地空対ミサイル、迎撃用の戦闘機が10機が隠されている。さらに、潜水艦3基が周囲100キロメートルを周回している。奪取しようと試みるにはちょっと困難だと思わせている。
8月10日、浮遊島完成の式典の運びとなった。
政府の要人、一般人600人、『黒い膜』の第一発見者の自松英恵も参列している。
治安のために自衛隊の艦隊が周りを取り囲んでいる。そこから空砲が打たれ、式典が開始された。
「鎌足防衛大臣の祝辞をいただきます」
「この場所は日本史上、初めての未知との遭遇です。・・・・・・・」と長い話はカット。
「続いて、『黒い膜』研究所の涸沢所長から、お言葉をいただきます」
「実に羨ましい。私は、この13名に激しい嫉妬を覚えています。実に羨ましい。あの『黒い膜』を超えた先には、新しい世界が広がっていると確信しております・・・・」
(もう一つの潜行組は7人構成のようだ)
まあ、戦略的な意味もあって、ここの管轄を防衛庁に置いたので、防衛大臣から祝辞があった。
各国は資源確保の『打ち出の小槌』になるかもしれないと、取り急ぎ予算や人を投入していたことなど、世界情報も話された。また、探索隊への労いの言葉もあった。
「次は潜行探査隊長に任命されました、鈴木ハジメ氏の挨拶です。では、どうぞ」
「探査隊長の鈴木ハジメです。メンバー6人と一緒に楽しんでまいります。今までの調査結果と、推測ではありますが、この地球と同じような環境だと信じております。しかし、残念なことに向こうの様子を皆さんにご報告できるかわかりません。15日後我々は、潜行する予定です。よしんば向こうの世界とこちらの世界との懸け橋として、一助になればと思っております。みなさんのご支援ご鞭撻に感謝しております。潜行後も我々を思い出していただければ幸いです」
「ありがとうございました。今一度潜行される皆さんに激励の拍手をお願いします」
「「「「ぱちぱちぱち」」」」
なにかがひっかかるのだろうか、絶大なる拍手はなかった。微妙だ。
式典が終わると、ホテルへ帰る人、チャーター機や船で帰る人、『黒い膜』を身近に見ようと折衝してくる人々が右往左往している。我々のところにも、羨望を向ける人から嘲笑する人まで様々な人が通り過ぎてゆく。
「なんということだ、こんな小さな子供まで!!」と嘆く人には困ったものだ。




