第十七話 洋上調査施設に到着した。
さあ、到着したよ。
120人乗りのジェット機で、約一時間。研究者や建設作業員などで満員だ。
その中に6人と同様のグループがもうひとつ同乗している。
なぜか、もう一つのグループとは接触する機会がなかった。世話係りの大野君に聞いても歯切れが悪い。まあ、良いか。
その洋上施設は大きかった。というか、広い海から比べたら、ちっちゃい!。
でも周囲10キロメートルほどの浮島だ。
海上に光る点が、次第に形を表してくる。鳥の形をしたそれは、鳳凰を模したものらしい。
ジェット機は、右手の翼から侵入するように着陸態勢に入った。ぐんぐんと迫ってくる浮島とその背中に伸びる滑走路。
軽い振動と共に機体は着陸した。
管制塔の両脇には歓迎の人たちが手を振っている。
浮島の建設、研究棟の建設、そして『黒い膜』への調査架台。それらを作る人たちだ。
一時一万人で賑わったそうで、すごい国家プロジェクトだ。
たかだか500人ほどの潜行者を見送るための設備。
見返りは何なんだろう?
我々は帰ってこないかもしれない。十中八九帰ってこないし、連絡を取り合うこともないだろう。
それでも、これだけの人たちの期待? 羨望? 共感? を背負うのだろうか。いや、それはごめんだ。
我々は、人類の先駆けとして、この洋上設備から未知の世界に旅経つ。
「着いたよー。荷物は追って居住区に運んでくれるので、今持っている手荷物だけ持ってね。それから、歓迎者の列の中を通るので、騒がしいけれども一時なのでちょっと我慢してね。」と大野君が先頭を歩いた。
空港は大きくはないが、設備が整っている。
観光用には一日10往復の便がある。それに相応した空港設備やホテルなどがある。
多くの客は、空港に連なったホテルに宿泊して、多くは翌日帰る。
旅行代金は、ちょっと北海道旅行程度のおひとり様20万円らしい。300人*10往復*20万円=6000万円。それに土産物や、遊戯費など結構潤ってはいる。が、建設費には足りていない。
客の楽しみは、もちろん『黒い膜』の見学だが、当日と翌日の2回見る機会がある。その他には、洋上から日の出、釣り、ゴルフ、アスレチック、プールなど遊び場も併設されている。
『未知のゲート管理研究所』の横には『黒い膜研究展示館』があって、各国の取り組みや状況が展示されている。この手の展示はここにしかないので、それはそれで一度は来てみたい場所となっている。
誰が考えたのか、鳳凰の天辺には『希望への旅立ち』という鳥居が立っている。大したものではないのに、連日長蛇の列が見られる。特に日の出とともに撮影するとインスタバエするらしい。
一方、潜行組のトレーニング場もある。
サバイバルに必要な草原、森、小高い丘、せせらぎ、池など。
このトレーニング場には一般客は入れないし、観察もできない。
「さあ、こちらが皆さんが生活されるハウスです。一応10人が共同生活できるスペースを用意しています。食事は自炊も出来ますが、研究者用の食堂も利用できます。お風呂も大浴場があります」
ハウスは普通の2階建て。玄関は広めになっており、左右に階段があって、男女を別にできるような作りである。リビングに6人と大野クズメさんが揃った。早速お茶とお菓子がテーブルに出てきた。
家政婦さんが2名、昼間だけ常駐するらしい。
「「「うん。まあ、良いね」」」
「じゃあ、各人の部屋を決めようか」
ちょっと寛ぐために、めいめいが自分の部屋に行った。
「鈴木さん、大丈夫ですか? 少しお疲れの様子ですが」
「あぁぁ・・ 年だね。疲れたので、俺もちょっと休ませてもらいます」
「食事は、食堂の横に部屋を取っていますので、そちらで歓迎会を催したいと思っております」




