第十四話 涸沢が6人と顔を合わせる
我が国の『黒い膜』研究所の所長、涸沢五郎は、モアイの横の『黒い膜』から日本に戻っていた。
3か月前、『黒い膜』が日本の南、500キロメートルの洋上に見つかったので、日本で采配を振るうことになった。そして、現在、研究施設のプラットフォームが建設中である。
「やあ、こんにちは。小生は涸沢五郎だ。ここの研究所の所長をやっている。まあ、楽にしてくれたまえ」
(ねえねえ・・小生って何?) ココロがサトシに聞いている。
(自分のことだよ。 私とか僕とかね。 まあ気取った言い方かな?)
(ふーーん。偉い人なんだ)
「聞こえているよ。・・・確かに気取ってもしょうがないか!。フランクにするよ。さて、君たちが来てくれたこと、感謝するよ。それっとすごっく羨ましい。僕はあの『黒い膜』の向こうには行きたくても行けないんだ。
『黒い膜』に拒否されるんだ」
「さて、君たちはなぜか、あの『黒い膜』を潜る資格がある。潜った先には何があるのかわからない。一つの幸運は息ができること。息さえできれば何とか生きることができると思う。約束はできない。サバイバルの準備をしてほしい」
(何言っているのか、さっぱりわからないわ)
(まあ、頑張って!ということだよ)
(ふーーん。おいしいものがあれば、あたいはうれしいなぁ)とココロ。
「なぜ我々が選ばれたのか教えてほしい」と鈴木ハジメ。
「それはねぇー、秘密!」と涸沢。
(ひどい。理由がないなんて、この科学の時代に)
「さて、我が国が所有する『黒い膜』の調査施設が完成間近になった。10日後には、太平洋上の施設に移動する。本土と自由に行き来は出来ないので、心残りが無いよう、それまで本土を満喫してほしい」
「それから、サバイバルの準備は大野君と打ち合わせてくれたまえ。要求には万難を排して実現するつもりだ。なんたって君たちの命がかかっているので。よしんば、こちらの世界と交信できればうれしーーな」
(あのひと、おかしいの?)
(うん、怪しいけど、ここの長らしいよ)
(大野さん、まともだよね)
(動物は連れて入る分には、良いらしいよ)
(犬と猫は欲しいね)
(サバイバルってなに?)
(ココロちゃん、これから覚えることだよ。生きるためにね)
「あぁぁ・・、ぐちゃぐちゃと私語を慎め! この所では一番偉い俺の話を聞け!」
(あぁあ、切れちゃったよ。皆で謝ろう)
「「「ごめんなさい!」」」
まあこんな具合で、遅々と話が進まず、とりあえずおやつタイムにしましょうと、大野さんから提言があった。
「「「やったー!」」」
休憩の後、再び涸沢さんの独演会が続行された。
今までの研究成果と各国の調査報告が延々と照会された。
(((もういいよー、あきたよーー)))
まあ、要約すると次の通りかな
1,全世界で、およそ2560箇所が確認されており、ここ3年間で数の増減がない。
2,こちらから向こうへの一方向である。
3,潜入数は12体が上限で、人、犬、猫、牛なども人が引いていれば一緒に潜入できる。
ただし、生死は不明だ。こちらに帰ってきた人はいない。
4,身につけた小さな金属は、本体と一緒に潜入できる。腕時計はOK、スマホはダメ。
5,重火器や通信機など電子機器も膜の向こうには行かない。素通りしてしまう。
6,最も重要なことだが、膜に頭を入れた限りでは呼吸ができるが、周囲は真っ白で何も識別できない。
7,『黒い膜』は移動できない、しない。例えば高度2000メートルのままとか。
8,潜入できる人と潜入できない人がいる。喫煙者、酒飲み、厚化粧、妊婦などは拒否される。
(はて?、我々のチームには、もちろん喫煙者など臭い奴はいない)




