第十二話 『黒い膜』潜入への切符
『黒い膜』に潜入を拒否される人と、されない人の差は何だろうか?
涸沢は、自分が潜れないことがわかっている。自分も潜入したい一心である。絶対に要因を突き止めてやる。
「所長、この部屋での喫煙はやめてください。・・・ほらほら!喫煙室へ行った行った!」
「大野君、僕を誰だと思っているのかね。ここの所長でいちばあーん偉いんだぞ。どこで煙草をお吸おうが咎められる言われはないよ」
「はぁあ、何言ってんですか。偉いからこそ規範を示すべきです。グダグダ言わずに移動してください!」
『黒い膜』への潜行希望者のデータを、血眼で解析してみたが、理由がわからん。
血液型から始まり、ゲノム解析までやったが、どれも相関関係が無い。
応募のあった、20人を連れて建設中の洋上プラットフォームにある『黒い膜』に向かった。
何人拒否されるのだろうか?
まだ、建設中なので、ホテルやコンビニはない。ただ、小さな研究棟と『黒い膜』と接する架台があるのみだ。
一人づつ、引きずり込まれない様に、腰ベルトとロープで牽引しての、調査だ。
20人中、5人が合格。15人が拒否された。
なぜに?
「おい、お前、拒否されたんだってな」
「おう、折角、今日は一張羅を着てきたのに、無駄になったさ」
「そらあ、酒のせいじゃねーか。今日も無茶苦茶酒臭いぞ」
「わたしね。元彼とよりを戻したの。赤ちゃんができたようなので」
「ほー、それは良かったね」
20人のヒヤリングの結果と、血液検査。ゲノム解析データなどをもとに、再び俺は没頭してしまった。
「所長!、またここで寝ている。ちゃんとベッドに行ってください。それに風呂も。臭いですよ」
「臭い! えぇ! 大野君、拒否された人は臭くなかったかね?」
「そうですね。酒飲み、ニコチン中毒、厚化粧がありますね。ただ、妊娠していた人もいます」
「それだ! なぜ気が付かなかったのだ! 応えは簡単だった!」
ということで、拒否される人物像は
・煙草を吸う人
・妊娠している人
・酒を飲んで、アルコール臭の人
確かに未成年はOKのようだ。
『黒い膜』を制御している文明は、ことのほか匂いが嫌いらしい。また、胎児への影響を考えているようだ。
うん。『黒い膜』の向こうは、かなり文明が高いといえる。
「不健康な煙草なんぞ嗜んでいるから、拒否されるんですよ」と辛辣な一言を所長に浴びせる大野君がいた。
それで、涸沢氏は煙草をやめたのだけれども、やはり蓄積されたヤニはなかなか取れないらしい。
再三、『黒い膜』に手を翳してみるも、拒否された。
そして、大野君は、研究棟の廊下で肩を落として歩く所長の姿を見るのである。




