第十一話 ココロの心地よい夢
ココロは、コンビニの裏で発見された。というか、店長から警察に保護してほしいと連絡があった。
そして、児童相談所の所員が現地に出向いた、ちょうどその時に大宮ケイコがそのコンビニに立ち寄っていた。
大宮ケイコは医師である。それも、国際的な外科医で名が通っている。
その大宮が、今児童相談所の所員が連れ出そうとする子供と目が合った。
「ちょっと、話を伺ってもいいかしら?」
大宮は、名刺を児童相談所の所員に見せた。
「どのような、御用でしょうか?」
「この子、緊急に対応しないと、死んでしまうわよ。私はちょうど、その先の総合病院に用があって、寄るところなの。その子を連れて一緒に来てくれないかしら?」
否も発せられない、強烈な威圧に所員は頷くことしかできなかった。
この場で医者の言うことを聞かなければ、この子が死ぬ。そうしたら自分にその責任が問われる。
行動規約外のことにはなるが、素直に聞いておこうと、所員は飲み込んだ。
とにかく臭い。いつから風呂に入っていないのかわからないし、ぼろぼろの服から覗く手足は細い。
大宮は、愛車のガント(軽4のミニバン)の助手席に子供を乗せた。
そして、500メートルほど先の総合病院の救急ゲートに滑りこませた。
「一般車両はいけません。あちらの駐車場においてください」
早速、看護師がやってきた。
「すみません。この子、死にそうなのでICUに運んでください。私は大宮ケイコと言います」
名刺を受け取った看護師は、名刺と大宮の顔を代わる代わる見ると、脱兎のごとく動いた。
あぁ、良い病院だ。
そう、なんとか一命を取り留め、今は静かに寝ている。
名前は『ココロ』5歳だと言っていたが、栄養不足なのか3歳児ぐらいにしか見えない。
これが、大宮ケイコとココロの出会いだ。
あの目を見てしまったのが、ココロと私の人生の岐路だったように思う。
ココロは多くを語らない。というか、ほとんどネグレクト状態だったようで、結局コンビニに捨てられていたらしい。児童相談所の職員と一緒に、周囲の聞き込みと親を探したが見つからなかった。
そして流れに乗って、我が子として籍に入れてしまった。そして、大宮ココロになった。
痛いときや悲しいときは泣くのが当たり前。それで、心のバランスを取っている。ココロは、泣かない。いや、眠ってから泣く。それも、くぐもった声で。
私が引き取ってから半年、ココロの外見は普通の女の子になった。しかし、無表情。ただじっと座っているだけの時間が多いので、人形がいるみたいだと思うこともあった。
私は、仕事を少なくして、ココロと買い物や、遊びに連れていった。
最初のうちは、私の服にしがみついていたが、少しづつ手を握るようになった。
新しい生活は、ココロも私も心の隙間を埋められそうだ。
そのような、生活が続いたある日、政府機関の者だと言うスーツ姿の男女がやってきた。




