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第五話【 深夜のレッスンと、極上のヒュッゲ 】

「はい……っ! 喜んで……ご主人様……っ!」


東証プライム企業のトップを

完全に膝下に屈服させ、

俺は軽やかに足取りを進める。


害虫は駆除した。


今夜もまた、

極上のヒュッゲな時間が待っている。

午後九時。

静まり返った本社ビルの最上階。


俺は社長室の重厚なドアをノックし、

カードキーで解錠して足を踏み入れた。


室内は間接照明だけが仄暗く照らしている。

デスクの脇では、吉沢美幸が膝をつき、

背筋をピンと伸ばした姿勢で待機していた。


「遅いぞ、美幸」


「申し訳……ございません、ご主人様。

 お約束の

 九時ちょうどにお見えになると信じて、

 三十分前から

 この姿勢でお待ちしておりました……っ」


顔を上気させ、荒い息を吐く女社長。

昼間の理知的な仮面は完全に剥がれ落ちている。


俺は

社長用の革張りチェアに深く腰掛け、

ゆっくりと脚を組んだ。


「昼間の件、反省は深まったか?」


「はい……っ。私がスキを見せたばかりに、

 害虫のような記者を招き入れ、

 ご主人様を煩わせてしまいました。

 私は……本当に

 無能で、愚かな牝犬です……っ!」


「よろしい。だが、

 言葉だけでは反省とは言わないな」


俺は

デスクの上に置かれた

高級ワインボトルのコルクを抜き、

グラスへ静かに注ぐ。


「美幸。

 お前が今回学ばなければならないのは、

『隙を見せない強欲さ』だ。

 ハエ一匹に

 脅されて狼狽えるような弱気で、

 どうやって

 これからも欠陥マンションを売り抜け、

 俺に莫大な利益を運んでくるつもりだ?」


「くっ……! は、はい……っ!

 仰る通りです……っ!」


「膝をついたまま、

 俺のワイングラスを満たせ。

 零したら……

 明日の『特別手当』は全額没収だ」


「ひっ……! ぜ、絶対に零しません……っ!」


美幸は四つん這いになり、

膝をすりつけながら

俺の足元まで這寄ってきた。


震える手でボトルを持ち、

俺の掲げるグラスへ慎重にワインを注ぐ。


東証プライム市場のトップが、

ただの秘書課長の足元で、

失脚の恐怖と調教の快楽に震えながら

奉仕している。


「よくできた。……褒美だ」


俺はワインを一口含み、笑みを浮かべた。


「お前が求めていた

『次のターゲット物件』だが……

 埼玉の老朽化団地の一棟買いルート、

 俺が裏で手を回して、相場の三割引きで

 買い叩けるようにしておいた。

 耐震データの書き換え案も、

 完璧なものを用意してある」


「えっ……!? あ、あの案件を……!?」


美幸の瞳が驚きと歓喜で大きく見開かれる。


「お前はただ、

 俺の作った筋書き通りに

 契約書にサインし、利益を上げればいい。

 お前の首輪を握っているのは俺だ。

 俺の指示に従っている限り、

 お前の王国は絶対に崩壊しない」


「あぁ……っ! ご主人様……っ!」


美幸は感極まったように

俺の革靴に額を擦り付け、

歓喜の涙を流した。


「すごい……本当にすごいわ……!

 私はただ、あなたに支配されて、

 言われた通りに

 悪事を働いていればいいのね……っ!

 なんて……なんて素晴らしいの……っ!」


「黙って伏していろ。

 ワインを味わう邪魔だ」


「はい……っ! ご主人様……っ!」


俺はグラスを傾け、

窓の外に広がる東京の夜景を見下ろす。


前世、この女の

身勝手な欲望のために命を落とした俺が、

今やその欲望すらも手玉に取り、

巨額の富と絶対的な支配権を握っている。

面倒な経営の責任やリスクはすべて

この女に背負わせ、

俺は陰で甘い蜜だけを吸い尽くす。


「ふっ……」


静寂に包まれた社長室で、

俺は満足気に口角を上げた。


今夜もまた、

最高のヒュッゲな時間が過ぎていく。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

翌朝、午前十時。


昨夜の狂乱が嘘のように、

社長室には

ぴんと張りつめた緊張感が漂っていた。


「……以上が、埼玉の老朽化団地

『グリーンハイツ大宮』の一棟買い

 およびリノベーション計画の全貌です」


俺はいつもの無駄のない動きで、……。


来週木曜日、18:10 に、第6話を投稿します。

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