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第一話【 歪んだ楽園と、従順な秘書 】

日中は従順な秘書課長として振る舞い、

ストレスの溜まった美幸に乞われるまま、

社長室の鍵を締めて激しい「おしおき」を与えている。


偽装の罪を握られ、

俺のドSな調教になす術もなく

甘い悲鳴を上げる上場企業のトップ。


「くっ……!

頼むから、もっと私を蔑みなさい……!」


欠陥マンションで荒稼ぎした巨額の利益を裏で転がしながら、

俺は極悪女社長をペットのように飼い慣らし、

優雅で最高なヒュッゲ(居心地の良い)会社員ライフを満喫する。


「よし、美幸。

 お望み通り、たっぷり調教してやる。……

 明日の朝までに、俺の特別手当を倍にしておけよ?」


俺の冷酷な宣告に、女社長はうっとりとした笑顔で


「はい……ご主人様」


と深く頭を下げた。

「吉沢社長、本日の『リノベ一棟買い事業』に関する中間報告書です。

あわせて、

例の不透明な修繕耐震データの保管箱、裏金ルートの台帳もデスクの隠し金庫へ格納しておきました」


午前十時。全面ガラス張りの広大な社長室。

俺は完璧な角度の四十五度でお辞儀をし、分厚いファイルをデスクへ滑らせた。


「……ご苦労様、秘書課長。相変わらず仕事が早いわね」


デスクの奥から声が響く。

高級ブランドのスーツに身を包み、鋭い眼光でPCモニターを睨みつける女──吉沢美幸。

築四十年の崩れかけた中古マンションを一棟まるごと安値で買い叩き、

ハリボテのデザイナーズ内装を施して一室三千万円で売り抜く。

耐震偽装も構造データの改ざんも「バレなきゃ存在しないのと同じ」と言い切る、

コンプラ意識ゼロの怪物だ。


「しかし社長、

先日の『グランドハイツ世田谷』の件ですが……住民から『壁に亀裂が入っている』と

クレームが殺到しております。

第三者機関に耐震診断を依頼すると騒いでいる者も」


「ハッ、バカね。

あそこは耐震壁の鉄筋を半分抜いてるんだから、亀裂くらい入るわよ」


美幸は冷笑を浮かべ、脚を組み替えた。


「弁護士に圧力をかけさせて、クレーマーの意向を潰しなさい。

『クレーマーの嫌がらせで資産価値が落ちる』と他の住民を煽れば勝手に自滅するわ。……

それと、

今期の利益目標を達成するために、次は埼玉の老朽化物件を狙うわよ。

偽装用のデータ作成、あんたが仕切って」


「承知いたしました。……相変わらず、鮮やかな手腕でございます」


俺はニコリと微笑み、深々と頭を下げる。


(相変わらずのクズだな、この女)


心の中で冷ややかに吐き捨てる。

かつて俺は、

この女の無茶なノルマと連日のサービス残業によって、

デスクの上で泡を吹いて倒れ、死んだ。

前世の記憶を保持したまま復讐を誓い、再びこの会社へ潜り込んだのだ。


「……はあ」


突然、美幸が重い溜め息をついた。

ペンを叩きつけるようにデスクへ置き、こめかみを指で押さえる。


「……株主どもがうるさいわ。

コンプライアンスだのESG投資だの、知ったような口を利いて。

国交省の役人までコソコソ嗅ぎ回っているし……ああ、イライラする」


「お疲れのご様子ですね、社長」


「ええ、本当に……イライラして、頭がおかしくなりそう」


美幸の瞳が、妖しく濡れ始めた。

彼女は机の上の「内線電話の受話器」を外し、

社長室の電子ロックをカチリと施錠した。

外部からの連絡を完全に遮断する合図だ。


カーテンが自動で閉まり、広い室内が薄暗い密室へと変わる。


「……秘書課長。……ううん、『ご主人様』」


美幸は立ち上がり、ゆっくりとデスクの前に歩み出た。

先ほどまでの冷酷な経営者の顔は消え去り、

その表情には卑しいほどの期待と快楽の予感が満ちていた。


「今日の株主会見のストレス……どうか、私をお叱りになって……っ」


美幸は躊躇なく膝をつき、高級絨毯の上にひれ伏した。


俺は胸ポケットからゆっくりとメガネを外し、胸元を少し緩める。

従順な平社員の仮面を脱ぎ捨て、

心底蔑むような冷徹な眼差しを、眼下の女社長へ向けた。


「おい、美幸。誰が立っていいと言った?」


「ひっ……! ご、ごめんなさい……っ!」


俺の声が一変した瞬間、美幸の体が歓喜で跳ねた。

東証プライム上場企業のトップが、

ただの秘書課長の足元で、無様に喘ぎ始める。


さあ、今日の「ヒュッゲ(快適)」な勤務時間の始まりだ。


©2026 [風風風]. All rights reserved.

「返事が遅いぞ、美幸」


俺は革靴の先で、彼女の顎をクイと押し上げた。

上質なメイクが施された整った顔が持ち上がり、

濡れた瞳が俺を真っ直ぐに見つめ返す。


プライム上場企業のトップとして、

テレビや経済誌で持て囃されているカリスマ経営者の姿はここにはない。


「申し訳……ございません、ご主人様……っ!」

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