プロローグ【 紅潮した顔を上気させ、潤んだ瞳で俺を見上げてくる 】
日中は従順な秘書課長として振る舞い、
ストレスの溜まった美幸に乞われるまま、
社長室の鍵を締めて激しい「おしおき」を与えている。
偽装の罪を握られ、
俺のドSな調教になす術もなく
甘い悲鳴を上げる上場企業のトップ。
「くっ……!
頼むから、もっと私を蔑みなさい……!」
欠陥マンションで荒稼ぎした巨額の利益を裏で転がしながら、
俺は極悪女社長をペットのように飼い慣らし、
優雅で最高なヒュッゲ(居心地の良い)会社員ライフを満喫する。
「美幸、足を崩す許可は出していないが?」
重厚な革張りのソファの脇。
高級絨毯に膝をつき、
ドレスの裾を乱して息を荒らげる女を見下ろす。
吉沢美幸。
築古の中古マンションを一棟丸ごと安値で買い叩き、
見せかけだけの
デザイナーズ・リフォームを施して1室ずつ切り売りする不動産界の寵児。
さらには耐震構造データの偽装という
「姉歯事件」レベルの狂気を裏で平然と実行し、
東証プライム市場へ会社を上場させた剛腕経営者だ。
メディアの前では凛とした美貌のカリスマ女社長。
だが、厳重にロックされた社長室の中で、
彼女はただの哀れな牝犬に成り下がっていた。
「くっ……あ、ごめんなさい、ご主人様……っ。
今日、国土交通省の監査を力技で揉み消して……
すごく、ストレスが……っ」
紅潮した顔を上気させ、潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
「誤魔化せれば何でもOK」がモットーのコンプラ意識ゼロな女。
だが、その本性は
「自分を底辺まで見下し、苛烈に支配してくれるドSな男」
に飢えた重度のマゾヒストだ。
普段は従順で無能な秘書課長として彼女の身の回りを世話する俺。
だが、その実態は──
この女の過酷なサービス残業とパワハラによって一度「過労死」させられた元・平社員。
俺はかつて死んだ。
そして、この理不尽な女への復讐を果たすべく、美幸の性癖と、
彼女が隠し持つ
「耐震偽装の決定的な内部証拠」
を完璧に握りつぶしてこの位置へ返り咲いたのだ。
「誰のせいで監査に怯える羽目になっていると思っている?
浅ましい女だ。
お前のその薄汚い承認欲求と強欲さが、この会社を壊すんだよ」
冷淡な声で吐き捨て、革靴の爪先で彼女の顎を軽く持ち上げる。
美幸は
「ひっ……!」
と甲高い悲鳴を上げながらも、その瞳には恍惚とした快楽の光を宿していた。
全身を震わせ、俺の靴先を甘やすように頬擦りしてくる。
「そう……それよ……!
私を蔑みなさい、もっと踏みにじって……っ!」
上場企業のトップが、ただの秘書課長の前で無様にひれ伏し、歓喜に喘いでいる。
滑稽極まりないな。
俺は美幸に命じ、格安で譲り受けた高級マンションの最上階で、
高い給与と潤沢な経費を貪りながら過ごしている。
面倒な経営判断や泥臭い不正の揉み消しはすべてこの女にやらせ、
俺は社長室の鍵を締めて「おしおき」を与えるだけ。
極上のワインを傾けながら、飼い犬の悲鳴に耳を傾ける。
これこそが、俺が手に入れた最高のヒュッゲ(居心地の良い)会社員ライフだ。
「よし、美幸。
お望み通り、たっぷり調教してやる。……
明日の朝までに、俺の特別手当を倍にしておけよ?」
俺の冷酷な宣告に、女社長はうっとりとした笑顔で
「はい……ご主人様」
と深く頭を下げた。
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「吉沢社長、
本日の『リノベ一棟買い事業』に関する中間報告書です。
あわせて、
例の不透明な修繕耐震データの保管箱、
裏金ルートの台帳もデスクの隠し金庫へ格納しておきました」
午前十時。全面ガラス張りの広大な社長室。
俺は完璧な角度の四十五度でお辞儀をし、
分厚いファイルをデスクへ滑らせた。
「……ご苦労様、秘書課長。相変わらず仕事が早いわね」




