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【完結】悪役令嬢の役立たずスキルで、婚約破棄された王子様を拾いました  作者: ましろゆきな
第五部:新しい王家 

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第四十八話 結婚

 婚礼の朝、リリアーナは、静かに支度を整えていた。


 白い衣装に身を包みながら、リリアーナは、この日が、自分にとって、どれほど特別な重みを持つものであるかを、しみじみと感じていた。


 ふと、遠い日の記憶が、一瞬だけ、脳裏をよぎった。


 婚約破棄を告げられた、あの日の記憶。「王家に相応しくない」と言われ、役立たずと呼ばれ続けた、あの頃の自分。


 だが、その記憶は、もう、リリアーナを傷つけるものではなかった。ただ、遠い過去の一場面として、静かに通り過ぎていくだけだった。


「――支度は、進んでいるか」


 部屋に、カイルが顔を出した。


「お兄様」


「――綺麗だな」


 カイルは、少し照れくさそうに、そう言った。不器用な言い方だったが、そこには、確かな祝福の気持ちが込められていた。


「まさか、お前が、こんな日を迎えるとはな」


「私も、思っていなかったわ」


 リリアーナは、静かに微笑んだ。


「お兄様のおかげで、ここまで来られた気がする」


「――俺は、大したことは、していない」


「十分よ」


 二人は、しばらく、穏やかな時間を分かち合っていた。


 やがて、時が来た。


 大聖堂に、多くの人々が集まっていた。国王、王妃セシリア、側妃マリアンヌ、セドリック、そして、少し離れた場所に、セレナの姿もあった。それぞれが、この慶事を、静かに見守っていた。


 アレクシスとリリアーナは、多くの人々に見守られながら、誓いの言葉を交わしていく。


 形式的な誓いの後、アレクシスは、自分自身の言葉を、静かに付け加えた。


「――俺は、王として、この国の人々を守ると誓う。そして、一人の人間として、リリアーナ、お前と、共に生きることを誓う」


 その言葉に、リリアーナの目に、静かに涙が滲んだ。


「私も」


 リリアーナは、しっかりとした声で、続けた。


「価値がある人間だから、隣にいるんじゃない。私自身の意志で、あなたの隣を、選びます」


 その言葉には、これまでの物語のすべてが、静かに込められていた。


 二人は、静かに、しかし確かな絆で結ばれた、誓いの抱擁を交わした。


 式に立ち会う人々の中に、それぞれの感慨があった。


 セドリックは、兄夫婦の姿を見つめながら、自分自身の歩みを、静かに重ねていた。セレナは、その隣で、小さく微笑んでいた。マリアンヌとセシリアは、それぞれの後悔と、それでも確かな祝福の気持ちを胸に、この日を見届けていた。


 誰もが、それぞれの物語を歩みながら、この慶事を、心から祝っていた。


 鐘の音が、大聖堂に、静かに響き渡った。


 役立たずと呼ばれた令嬢と、廃太子となった王子。


 二人の物語は、ここに、一つの、大きな区切りを迎えていた。


 だが、それは、終わりではなかった。


 これから始まる、新しい日々への、確かな始まりだった。

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