弟 約束
アケは、白蛇の国から離れた朽ちた屋敷に幽閉された。
白蛇の遺言もある。しかし、それ以上にアケは国中から嫌われた。
国を上げての祝福の場で起きた悲劇。
国の未来と繁栄、そして悠久の平和が続くことを信じて疑わなかった人々を襲った圧倒的な恐怖。
ずっと一緒にいるものと信じていた愛しい我が子達との無惨な別れと恨み。
最強の守護者であり、最高の導き手であった白蛇の喪失。
その全ての矛先が唯一生き残り、悪夢の拠り所となり、人ならざる姿に変わってしまったアケに向けられしまったのだ。
幽閉された当初はずっと泣いていた。
父と母を呼び、外でアケを見張る武士達に助けを求めた。その度に武士達は憎しみを込めアケを睨み、「姿を見せるな化け物!」罵り、刀を抜いて威嚇し、石を投げつけ、アケを痛めつけ、笑った。
その話しを聞いた瞬間、ウグイスは武士を皆殺しにすると息巻き、オモチが宥めた。
アケは、武士に助けを求めることをやめた。
ただ虚に屋敷の隅に座り、朽ちた屋敷の屋根から見える空を眺めた。
なんで私はここにいるんだろう?
お父上様はなんで私をこんなに嫌うの?
なんでみんな酷いことするの?
私は、好きでこうなったわけじゃないのに。
好きでみんなを傷つけたわけじゃないのに。
なんで……なんで……なんで……なんで……。
幼いアケは、答えの出ない自問を何度も繰り返し、誰に聞いたかも分からない、この事件の犯人とされる邪教を恨んだ。
それでもお腹は空く。
喉が渇く。
週に一度、アケの元に食糧が届けられた。
腐りかけた肉や捨てられた魚の切り身、野菜の切れ端など……まるで生ゴミだ。
彼らにとってはそれも憎しみの対象へ嫌がらせなのだろう。
とても三歳の女の子にするような仕打ちではないし、食べられる訳がない。
実際、彼らもそう思ってアケが飢え死にしていつの間にか封印されたまま死ぬことを望んでいたのだろう。
そうすれば白蛇の遺言も守ることが出来るから。
しかし、彼らにとって一つ誤算があった。
それはアケがあまりにも聡明であったことだ。
当然、最初は食べれなかった。
生肉や魚をそのまま齧ってお腹を壊した。
屋敷の隅に溜まった汚れた水を飲んで吐いた。
その度にアケは泣き、自分の運命と邪教を呪った。
しかし.ある日、屋敷にある図書室。湿気で大半の本が朽ちていたがそれでも残っていた本の挿絵と知っている文字を組み合わせながら解読し、料理を始めたのだ。
火おこしの頁を見つけて朽ちた木にガラスで日光を集めて火を起こした。
屋敷の裏に壊れた汲み上げ式の井戸を見つけて本の真似をして修理し、小石と砂を使って濾過装置を作って水を綺麗にした。
屋敷の近くに生えていた草と図鑑を見比べて食べられる草や薬草を見つけた。
そうして何とか食糧を食べられるものに料理し、口に運んだ。
不味かった。
お腹を壊さなくなっただけで食べられたものじゃなかった。
それでも身体は食べ物を求める。
アケは、身体に従って無機質に食べ、飲み、残っている本を読んで生きたくないのに生きる方法を身に付けた。
そうしてアケが七歳になった時……あの子が現れた。
それは寒い日の夜のことだった。
唯一雨漏りのしない部屋でボロボロのカーテンの切れ端に包まって寝ていると、窓の外から子どもの啜り泣く声がした。
アケは、ボロボロのカーテンを羽織ったまま恐る恐る窓の外を見る。顔を出したのが武士にバレたら罵られ、石を投げられるからだ。
それでも覗かずにいられなかった。
その泣き声があまりに悲しく、自分に似ていたから。
窓の外に男の子が立っていた。
恐らく三歳くらいだろうか?
三歳……アケは胸を締め付けられる思いがした。
アケは、外に武士達がいないことを確認して窓を開ける。
「どう……した……の?」
アケは、辿々しく言葉を発する。
この屋敷に来てからほとんど人と話してない為、言葉が出づらくなっていた。
アケに声をかけると男の子は嬉しそうに顔を上げ……震えた。
その反応にアケは自分が化け物になったことを思い出す。
両手で顔を覆い隠し、身体を背けるももう遅い。
男の子は、目を震わせてアケを見る。
アケは、男の子の顔が醜く歪み、化け物と罵り、石をぶつけられるのではないかと怯えた。
しかし……。
「お姉ちゃん……誰?」
男の子は、涙にしゃがれた声でアケに訊く。
「お目目……大丈夫?」
アケは、両手を外して振り返る。
男の子の顔には恐怖も憎しみもない。
可愛らしい顔で心配そうにアケを見つめる。
「貴方……」
アケは、恐る恐る訊く。
「私が怖くないの?」
「怖い?」
男の子は、首を傾げる。
「お姉ちゃん……怖い人なの?」
男の子の純朴な問いにアケはなんと答えたら良いか分からなかった。
その時、少年のお腹が高らかに鳴る。
「お腹……すいた」
男の子は、背中に張りつきそうなくらい凹んだお腹を触り、今にも泣き出しそうだった。
アケは、躊躇いがちに男の子に言う。
「いらっしゃい。ご飯……作ってあげる」
アケが言うと男の子は一瞬キョトンとした顔をして……目を顔を輝かせる。
「うんっ」
大きく返事をしてアケに小さな手を伸ばした。
アケは、オドオドとしながらも手を伸ばして男の子の小さな手を握る。
温かい。
何年振りかに感じた人の温もりに泣きそうになる。
アケは、男の子を抱えて家の中に入れる。
軽い。
とても軽い。
一体、どれだけご飯を食べてないんだろう?
(早く食べさせないと……)
アケは、男の子の手を引いて台所に向かった。
台所に着くと名残惜しく感じながらも男の子の手を離し、釜戸に薪と木屑を入れて火を起こした。
三歳からの孤独な生活で火くらいなら幾らでも起こせるようになった。
突然、沸き起こった火に男の子は驚いて覗き込もうとする。
「ダメ!危ない!」
アケは、慌てて止める。
そこでアケは男の子の髪が見たこともないような金色の髪であることに気づく。
(なんて綺麗……)
アケは、思わずため息が漏れそうになる。
自分にはない綺麗な容姿にアケは胸が締め付けられる。
羨望と嫉妬でが泣きそうになる。
「どうしたの?お姉ちゃん?」
男の子は、不安そうにアケを見る。
その顔にアケは、我に返る。
あまりにも醜い感情を持ったことに恥ずかしくなる。
「今、ご飯作るなら待っててね」
アケは、誤魔化すように言うと男の子を古びた小さな椅子に座らせる。
(何を作ろう?)
家にあるのは腐りかけたものばかり。
それでもお腹の強くなったアケは食べることが出来るようになった。
しかし、この子は違う。
この子が食べれそうなのは……。
アケは、食糧を掻き分けて探す。
「これは……」
アケが見つけたのはカチカチに固まった茶色く長細いもの。
確かパンというものだ。
白蛇の国にいた時に一度だけ食べたことがある。
「でも、こんな固いもの……」
男の子とはいえ小さな子に食べれるはずがない。
どうしよう……。
せめて柔らかくなれば……柔らかく……。
アケは、頭の中に収めた本を捲る。
何か……何か……。
アケは,必死に頁を捲り、一つの場面で止まる。
そうだ……この方法なら。
アケは、台所の隅に積まれた調理器具から鉄鍋を抜き取る。飲水用に貯めた桶の水で綺麗に洗う。次に刃こぼれした包丁で固いパンの皮に突き立て体重をかけて切り、何とか薄くする。
男の子は、目を大きく見開いてアケの動きを見る。
鉄鍋にひび割れた陶器の皿を置き、その上に薄く切った二枚のパンを乗っけて火にかける。そし皿の表面に浸かるか浸からないかくらいまで水を入れて木の板で蓋をする。
「よしっ」
アケは、小さく頷くと次の作業に取り掛かる。
アケは、台所の隅に置いてある濡らした布で包んだものを持ち上げる。
布を丁寧に開くと現れたのは小さな卵だった。
屋敷の二階に巣作りした鳩が産んだものを拝借したもの。
明日の朝食べようと思って楽しみにしていた……。
アケは、涎と口惜しさを飲み込んで卵を釜戸に運ぶ。
平たい鉄鍋に傷んだお肉の脂を塗って小さな釜口に置き、卵を割って落とす。
卵が目玉となって平たい鉄鍋に広がり、小気味良い音を立てて焼けていく。
平たい鉄鍋の木の板を退ける。
固さを失い、ふわふわに白く、柔らかくなったパンがそこにあった。
アケは、思わず口元を綻ばせ、菜箸を使ってパンを持ち上げ、ひび割れてない皿に置く。そして半熟に焼き上がった目玉焼きを黄身が崩れないようにそっと乗せ、もう一枚のパンを重ねる。
「出来ました」
鳩の卵のパン挟み。
男の子は.目を丸くしてアケとパン挟みを交互に見る。
「これって……」
「どうぞ食べて」
アケは、口元を綻ばせて言う。
男の子は目を丸くする。
「食べて……いいの?」
男の子は、恐る恐る訊く。
「もちろんっ」
アケは、小さく頷く。
「貴方のものよ。召し上がれ」
男の子は、目を輝かせてパン挟みに齧り付く。
柔らかくなったパンが食感が顎を喜ばせ、とろりとした半熟の白身が舌を震わせ、濃厚な黄身の旨味が口の中を駆け巡る。
男の子は、無我夢中で食べた。
アケは、そのあまりの食べっぷりに蛇の目を丸くする。
自分以外の人が食べるのを見るのなんていつ振りのことだろう?
「美味しかった」
パン挟みを食べ終えた男の子は満足そうに、嬉しそうに微笑む。
「美味しいご飯をありがとう。お姉ちゃん」
アケは、蛇の目を大きく見開く。
"美味しいアケ?"
"たくさん食べるんだぞ。アケ"
朧げな記憶の中にある父と母の顔が蘇る。
優しく、愛おしげに微笑む二人の顔が。
アケの蛇の目から涙が零れ落ちる。
突然、泣き出したアケに男の子は驚き、アワアワする。
「どうしたの?お姉ちゃん?どこか痛いの?」
大慌てでアケを心配する男の子の姿が可愛く、アケは何年振りに笑った。
「ううんっどこも痛くないよ。大丈夫」
アケは、安心させるように男の子の頭を撫でる。
男の子は、目を丸くし……安心したように笑った。
「貴方……お名前は?」
「ナギ」
「ナギ……いいお名前ね」
「お姉ちゃんは?」
「私は……」
アケは、男の子に自分の名を告げた。
それがアケとナギの出会いであり、初めて料理を作った瞬間であった。
「ナギのおかげで私は生きることが出来ました」
そう言ってアケは、口元を綻ばせた。
ナギとの生活は今までが嘘のように充実したものだった。
ナギは、明るく、優しく、そしてあまりにも可愛かった。
「姉様!」
ナギは、愛らしく微笑んでアケに甘えてきた。
ぎゅっと抱きついてきたり、本を読んでとせがんだり、アケが作った料理を美味しそうに食べたり、一緒にカーテンに包まって眠ったり……。
幸せだった。
信じられないくらい幸せだった。
「ナギのおかげで……私は人間でいることが出来たんです」
そう話すアケの顔はとても柔らかいものだった。
ウグイスも釣られて表情を緩める。
「武士達は……」
オモチがぼそりっと口を開く。
「武士達は、ナギのことは知らなかったの?」
オモチの問いにアケは首を横に振る。
「知ってました」
「知ってたのに……そのままにしていたの?」
「面倒だったんだと思います」
アケは、蛇の目を切なげに細める。
「面倒?」
オモチは、鼻を引くつかせる。
「私のような化け物を監視するだけでも面倒なのに、金髪の素性の知らない子どもが一緒に住んでることを国に告げたら更に面倒になる。だから放っておいたんだと思います」
「腐ってるな」
オモチは、ぽそりっと呟く。
「でも、そのおかげでアケはナギと一緒に暮らせたんだもんね」
ウグイスは、空気を変えるように明るく言う。
「でも、彼は君の側を離れた」
オモチは、静かに言う。
ウグイスは、ぎっとオモチを睨む。
しかし、オモチは、構わず言葉を続ける。
「違う?」
アケの表情が暗く陰る。
「……はいっ」
アケは、静かに頷く。
「俺……働きに出るよ」
それはアケが十七歳、ナギが十三歳。二人が一緒に暮らし始めて十年の年月が流れた日のことだった。
「はたら……く?」
ナギの言葉にアケは、料理をする手を止めた。
手が震えるのが見えないよう身体で隠す。
ナギは、大きく頷く。
「なんで……なんで急に?」
アケが疑問に思うのも無理はなかった。
二人の生活は満帆とは言わないが順風ではあった。
幼いアケが更に幼いナギを育てるのは大変と言う言葉では物足りないものだった。
お世話の仕方が分からない。
何を教えればいいのか分からない。
環境が整ってない。
何より食べるものが圧倒的にない。
ない物尽くしの生活……しかし、アケとナギはお互いを支えながら生きてきた。
本があったのは本当に助かった。
様々な生きる術をアケに教えてくれた。
文字の読み書き。
トイレの仕方。
服の仕立て方。
薬草からの薬の作り方。
クズ野菜や種からの畑づくり。
栄養満点の食事の作り方。
まだまだ、足りないもの尽くしの生活だけど二人で試行錯誤をしながらなんとか十年という年月を過ごすことが出来た。
「お金が欲しいんだ」
「お金?」
それ自体は驚くことではなかった。
働く一番の理由は対価……つまり金銭をもらうことなのだから。
「でも……ナギはお金を稼いでいるでしょ?」
ナギは、子どもにしては身体能力がとても高いらしく、七歳の頃には武士の目を盗んで屋敷を抜け出しては近くの森に行って鹿や兎、魚を獲ってきた。それらをアケが捌いて、下処理して調理し、自分の家で食べる分と白蛇の国に続く街道で旅人に売ってお金を稼いでいた。
正直、アケはあまりそれを好ましく思っていなかった。
旅人のみんながみんな良い人とは限らない。中にはナギを子どもと舐めて襲いかかる輩がいるかもしれない。
ナギがこの世からいなくなる。
そんなことを考えるだけでアケは身が千切れそうだった。
しかし、ナギは年頃の男の子。
一生、この屋敷から出ることの叶わず、人生を諦めている自分とは違う。欲しいものだってあるし、やりたいことだってあるのだろう。だから、アケは反対もせず許していた。
今回もそう言ったことの一貫なのだろうか?と思っていたがナギが口に出したのは予想もしないことだった。
「お金を貯めたいんだ。食堂をやるために」
そう言ってナギは笑う。
「食堂?」
アケは、蛇の目を丸くする。
その反応を見てナギは不満げに唇を尖らせる。
「忘れてたの姉様?小さい頃、一緒に話したじゃん」
小さな頃……。
アケは、思い出す。
確かまだナギが六歳の時。
その日は大きな嵐がやってきて激しい雨と風に屋敷が吹き飛ばされてしまうのではないかと怯えるナギと一緒にカーテンに包まり、脂のカスで作った蝋燭に火を灯して本を読んだ。
赤と青の服を着たネズミの兄弟が大きな卵を使って料理を作って仲間に振る舞う話し。
面白い話しだけどアケはあまり好きではなかった。仲間達と楽しくご飯を食べるなんてアケには決してやってこないと悟っていたから。
しかし、ナギは嵐の恐怖を忘れて物語の世界に入り込んでいた。そして読み終わるとこんな風にたくさんの人で食べれる所ってあるのと興奮して聞いてきた。
「食堂ってところだとたくさんの人と食べれるらしいわ」
「食堂?」
聞いたこともない言葉にナギは首を傾げる。
「食堂って……なに?」
「ええっと……ね……」
アケは、困った。
食堂なんてアケも行ったこともなければ見たこともない。全ては本の知識だ。
それでも目を爛々に輝かせて聞いてくるナギを見て答えない訳にはいかなかった。
「料理人さんっていう人がお腹を空かせた人に美味しいご飯を振る舞ってくれるの。お肉だったり、お魚だったり。それをみんなで楽しく食べるところよ」
アケは、想像力を限界まで膨らませてナギに話す。
ナギは、嵐の向こうのお星様のように目を輝かせる。
「姉様!」
ナギは、ぐいっとアケに顔を近づける。
「食堂やろう!」
「へっ?」
アケは、蛇の目を丸くする。
「美味しいご飯を作ってみんなで食べるなんて姉様みたいじゃん!」
ナギは、ウキウキとした様子で話す。
「大人になったら二人で食堂やろう!姉様のご飯でたくさんの人を喜ばせよう!」
食堂をやる。
たくさんの人にご飯を食べてもらう。
喜んでもらう。
そんな日は……決して来ない。
来るはずがない。
でも.ナギの無邪気な笑顔を前にアケは否定出来ず、苦笑を浮かべて頭を撫でることしか出来なかった。
「そうね。いつか……なろうね」
「うんっ!」
ナギは、無邪気に頷き、笑った。
「覚えてたの?貴方?あんな小さい時のこと?」
アケは、驚いて蛇の目を丸くする。
「姉様は、本当に忘れてたの?」
ジャノメは、ゲンナリと肩を落とす。
「何のために俺が食べ物売りに行ってたと思うの?」
「欲しいものがあるからだと……お着物とかよく買ってくるし」
「それは必要物品でしょ。姉様、俺のことばっかり構って自分のことおざなりじゃん」
そう言われてみればナギは自分のだけでなくアケの着物も買ってきてくれた。それに珍しいお菓子なんかも。てっきり自分の欲しい物のついでだとばかり……。
「でも、それは姉として当然で……」
可愛い弟の為なら自分のことなんてどうでもいい。それに自分がどんだけ着飾ったって美味しい物を食べたって意味はないのだ。
「もっと自分のこと大切にしてよ」
ナギは、悲しげな表情を浮かべて言う。
「姉様の幸せが俺の幸せなんだから」
ナギの言葉にアケは、蛇の目を震わせ、着物の端を握りしめる。
「ナギ……私は……」
「旅人さん達に聞いたんだけどね。食堂を開くには小銭を貯めてるだけじゃ時間が掛かりすぎるって言うんだ。だから……一発性癖ってやつをやらないとダメだって」
「そ……それって一攫千金のこと?」
アケは、頬を真っ赤に染めて言う。
「そう!それ!」
自分の言った言葉を文字に起こせなかったナギは姉の言葉に嬉しそうに人差し指を立てる。
「その一攫……千金?ってやつをする為に働きにいく。白蛇の国に……!」
アケは、血の気が引いていくのを感じた。
「白蛇の……国に?」
アケは、声が震えるのを押さえることが出来なかった。
「何を……するの?」
アケの言葉にナギの顔から笑みが消え、真剣なものになる。
「武士になる」
アケの心臓が大きく高鳴る。
「今、白蛇の国は他国との戦争で疲弊しているらしいんだ。既存の武士達だけじゃ手に負えないくらい。それで国民達からも小者や雑兵を集めてるんだって。給金も半端ない。うまくいけば……」
「ダメよ!」
アケは、声を荒げて否定する。
「そんな危険こと……貴方にさせられない!」
「俺強いよ。獣に負けたこと一度もないし。屋敷の周りいた武士に絡まれた時も勝ったし」
武士に絡まれた……そんなの初めて聞いた。
でも、言われてみればアケと一緒に暮らしていて何もないはずがない。
「なら、尚更ダメよ!貴方にそんな危険なこと……」
「でも……」
「でも、じゃない!」
アケは、大声で叫ぶ。
ナギは、目を大きく見開く。
「私は……貴方さえ……貴方さえいてくれればいいの!」
アケは、その場に崩れ落ちる。
蛇の目から溢れる涙が床を濡らす。
「お願い……ナギ……武士になんてならないで……どこにも行かないで……ナギ……」
「姉様……」
ナギは、悲しげに笑うとアケの側にしゃがみ込み、そっとアケを抱きしめた。
大きな手。大きな身体。
いつの間にこんなに大きくなったの?
「俺……ちゃんと帰ってくるよ。お金たくさん稼いで姉様と食堂をやる。だって……」
ナギは、にっこりと微笑む。
「姉様の幸せが……俺の幸せだから」
アケは、蛇の目を濡らしてナギを見る。
それから数日後、ナギは少ない荷物をまとめて屋敷を出ていった。
ナギは、笑顔で手を振って休みの日に帰ってくるから言った。
アケは、涙を堪えて弟の旅立ちを見送った。
「それがナギを見た最後でした」
「最後!?」
ウグイスの顔が険しく歪む。
「それから一度も帰って来なかったの?手紙とかも?」
ウグイスは、信じられないと言わんばかりに言う。
「私の住んでた屋敷にお手紙なんて届きませんから。それにナギも頑張ってるのに我儘なんていえません」
アケは、寂しげに蛇の目を下に向ける。
「我儘なんかじゃない!」
ウグイスは、我慢できず声を荒げる。
「家族に会いたいなんて思うの……当たり前じゃない!」
「そう……なんですかね……」
アケは、力なく呟く。
「私……そう言うのがもう分からなくなくて……」
アケは、下唇を噛み締める。
「今まで一緒にいてくれただけでも幸運なのかな……って……一緒にいて欲しいなんて烏滸がましいのかな……って思っちゃって……」
「ジャノメ……」
ウグイスは、悲しげに表情を歪ませる。
「でも……待ってたんでしょ?」
オモチは、赤い目でアケを見る。
「ナギのこと」
オモチの問いにアケは、こくんっと頷く。
「待つことしか……出来ませんから」
アケは、待った。
朽ちかけた屋敷でナギが帰ってくるのを待った。
ナギがいつ帰ってきてもいいように屋敷の中を片付け、武士に隠れて野菜を育て、本を読んで知識を増やし、そして料理の腕を磨いた。
食堂なんてやれる訳ない。
そんな未来が自分に来ることなんて決してない。
でも、ナギがそう願うなら少しでも……せめてナギの始める食堂に料理の献立ぐらいは提供できるようになりたい。
そしてナギが帰ってきた時に美味しいご飯を食べさせてあげたい。
アケは、そう思いながら来る日も来る日も料理を作り続け……二年の年月が流れた。
ナギは……一度も帰って来なかった。
そして予期せぬ来訪者がアケの朽ちた屋敷を訪れた。
建て付けの悪い扉の響く音が屋敷の中を響き渡った。
ナギ!?
アケは、包まっていたカーテンを引き剥がし、扉へと走った。
しかし、そこにいたのはナギではなかった。
「貴方達は……」
そこにいたのは武士達だった。
青い甲冑を着た隊士長を先頭に緑の甲冑を着た足軽が数名、後ろに控えている。
「ジャノメ姫」
隊士長は、恭しく首を垂れる。
その言葉使いこそ丁寧で、口元に笑みが浮かんでいるがその目には明らかな侮蔑が浮かんでいた、
足軽達もアケを見た瞬間、恐怖の混じった侮蔑を浮かべる。
ジャノメ姫……。
それが自分のことを指しているのだとアケは気づいた。
このジャノメがぁ!
父の怒りと憎悪のこもった声が耳に蘇る。
そうか……自分はそう呼ばれているのかと初めて知る。
自分がアケがという名前だと……もう誰も知らないのだ。
「殿下がお待ちです。参りましょう」
あまりにも酷く、無礼な態度と言葉。
まるでアケには拒否するどころか躊躇う権利すらないかのように……。
いや、実際にないのだ。
アケには拒否する権利も……躊躇う権利も……。
「……はいっ」
アケは、弱々しく返事した。
「準備をしますので少しお時間を……」
「構いません」
隊士長の言葉にアケは少しほっとする。
しかし……。
「そのままで構いません」
足軽達がアケの周りを取り囲む。
アケの蛇の目が大きく震える。
「行きますよ。この化け物」
隊士長は、最後の言葉を吐き捨てるように言った。
そうして鉄格子のような荷台の馬車に強制的に詰め込まれて連れて来られたのは白蛇の国ではなく、国から更に離れた場所にある石壁のように長く、大きな砦であった。
アケは、十数年ぶりに見る屋敷以外の、しかも大きな建物に圧倒されながらも、余韻に浸る間もなく武士たちに囲まれて砦の中に連れ込まれる。
砦の中には、狭ぜましく、空気が埃で汚れていた。至る所に刀や弾薬が詰め込まれ、怪我をした武士が寝そべり、救護隊と思われる白い着物を着た人たちが忙しなく動いていた。
隊士長の姿を見つけると武士達は痛々しい身体を起こして頭を下げ、救護隊も治療の手を止めて首を下げる。
そして隊士長の後ろにアケがいるのに気付いた瞬間、悲鳴に似た声と恨みがましい目をアケに向けた。
まるで視線で射殺すように。
アケは、恐怖に身が竦んでしまうのを堪え、床に指を食い込ませるように歩いた。
アケが連れて来られたのは砦の最上階、広い高欄の続く小さな一室だった。
そこに……父がいた。
足が根になって食いついたように動かなくなる。
それなのに身体が震え、心臓が痛いくらい鼓動する。
父は、アケが記憶しているよりも老け、記憶よりも小さく、そして記憶よりも怯え、狂った表情をしていた。
着飾った哀れな老猿。
それが十数年振りに見た父の姿だった。
アケを取り囲んでいた武士達は、一斉に跪き、頭を床に擦り付けんばかりに下げる。
「殿下。ご命令通りジャノメ姫をお連れいたしました」
「……大義である」
父は、隊士長と足軽に目を落とし、そして顔を上げてアケを睨む。
アケは、身体をガタガタと震わせながらも父から目を反らすことが出来なかった。
「お……」
アケは、言葉を絞り出す。
「お父上……様……」
アケは、痛むように父を呼ぶ。
父の剥き出しの目が一瞬揺らぐ。
自分を見て感情を揺らした。
それだけでアケは嬉しくなり、アケはもう一度お父上様と呼ぼうとする、と。
父は、枯れ木のような手を上げて高欄を指差す。
「行け」
父は、無感情に言う。
「えっ?」
「あそこに立て!この化け物が!」
化け物……。
その言葉がアケの心を抉り貫く。
「あ……あ……っ」
アケは、唇を震わせ、膝が崩れ落ちそうになる。
その姿に父は更に頷く。
「さっさと行かぬか!」
父は、怒鳴る。
しかし.アケは動くことが出来ない。
父は、苛立ち、足軽を睨む。
「連れて行け!」
「はっ」
足軽達は、立ち上がるとアケの両腕を気味悪そうに抱え、無理やり引きずって高欄に連れ出される。
アケは、絶句する。
蛇の目に映るもの。
それは草が疎に生えるだけの粗野な平原に斃れた青や緑の甲冑を纏った武士と飛竜の無惨に引きちぎられ、食いちぎられた死屍累々の光景だった。
そして武士と飛竜の死体の奥に見えるのは小山のような巨躯をした裂かれ、穿たれ、血を流し絶命した青色の猿であった。
アケは、あまりにも恐ろしい光景に立っていることも出来ず膝から崩れ落ちる。
「白濁の青猿……」
背後から父の声が聞こえた、
「お前のような教養のない化け物でも聞きたことあろう?
ここから数十理離れた砂漠の国の王であり、白蛇様と数百年にも及ぶ因縁を持った化け物だ」
父は、忌々しく、憎悪と恐怖をすり潰しながら声を出す。
「白蛇様が逝去された事を知り、兵を連れて我が国に攻め込んできたのだ……」
蛇の目が大きく震える。
アケは、力の入らぬ身を起こし、父の方を向く。
「控えよ!」
父の怒号が飛ぶ。
その声にアケだけでなく足軽達も身を竦ませる。
「ワシにその醜い顔を見せるな!」
父の怒りと憎しみに歪んだ目がアケを穿つ。
アケは、苦しみと痛みに唇と身体を震わせながら正座をし、顔を床に擦り付けるように伏せる。
その様子を見て父は、納得したかのように静かに口を開く。
「お前が白蛇様の命を奪ってからあの猿のように白蛇の国を攻めてくる輩が後を絶たず、その度に多くの武士と無辜の民が命を落としている」
父の言葉にアケはナギが話した言葉を思い出す。
白蛇の国は他国との戦争で疲弊している。
武士達だけじゃ手に負えない。
それはこういう意味だったのか。
(それじゃあ……)
まさかナギもあの武士の死体の中に……!
振り返りたい……でも出来ない。
「幸い……一年前からは新たに大将となった者が迫りくる敵国と化け物達を駆逐してくれているから何とか平静を保っている。が、今回奴のいない隙をつかれ、多くの武士と雑兵達が犠牲となった……」
父は、冷たい目でアケを見下ろす。
「お前のせいだ」
父の言葉にアケは、唇を強く噛み締め泣きそうになるのを堪える。
なんで……?
なんで私のせいなの?
私は何もしてないのに……。
ただ巻き込まれて……こんな身体にされただけなのに。
なんで……なんでこんなに嫌われないといけないの?
憎まれなければならないの?
アケは、やりきれない悲しみと心の痛みに意識を保つこともままならなかった。
「猫の額に行け」
父は、冷淡に言う。
「猫の額で……ございますか?」
アケは、小さく顔を上げる。
「誰が話していいと言った!」
父は、唾気を飛ばし、怒鳴る。
アケは、深く首を垂れる。
悔しさと悲しみで押し潰されそうになる。
「猫の額に行き金色の黒狼を始末しろ」
父は、冷徹にアケを睨む。
「猫の額に住む化け物共を治る王であり、白蛇様と並ぶ剛の者。冷酷非道な化け物。その脅威は青猿などとは比べ物にならん。そんな奴が白蛇様の事を知ってみろ。瞬く間に襲いかかり、この国など灰燼と化す。その前に始末するのだ。その醜い目の下に眠っているものを使って……な」
アケの身体がカタカタと震え、無意識に白い布に触れる。
「触るな!」
父の言葉にアケは手を避ける。
「この国を滅ぼさんとするそれがこの国を救う。皮肉なものだ」
父は、アケに背中を向ける。
「ジャノメよ。これは天命であり、お前の罪を清める為の大切な使命ある。この国の為、民の為、お前の命を持って全うせよ」
罪……。
私の罪……。
なんの?
なんの罪なの?
私は……何のために生まれてきたの?
アケは、もうどうでもよくなってしまった。
そんなに私を嫌うなら、罪だというなら……。
「もう……いいや」
アケは、誰にも聞こえぬよう呟く。
(ごめんね……ナギ)
アケは、脳裏に浮かんだ金髪の少年に謝る。
「畏まりまして……ございます」
アケは、深々と頭を下げる。
「この命……白蛇様と民、そして殿下に捧げます」
「身命を賭し励め」
そう言って父は去ろうとする。
アケは、顔を上げる。
「あの……」
アケは、去り行く父の背中に声をかける。
父の足が止まる。
「私は……アケです」
その言葉にアケを囲む足軽達の顔が固まる。
「最後に……名前を呼んでくださいませんか?アケと。お願いいたします……お父上様……」
アケは、蛇の目から涙を流し懇願する。
しかし……。
「それはこの前生まれた長男の一人娘の名だ。お前のものではない」
アケは、心臓がストンッと落ちたような感覚に襲われる。
「お前は私の娘ではない。ジャノメだ。ゆめゆめ忘れるな。この化け物が」
そう言い残し、父は去った。
アケの悲鳴のような嗚咽が高欄を抜け、空に響き渡った。
「そして私は……ここに来ました。主人の命を奪うため……そして自らの命を終えるために」
アケは、涙に濡れた顔で自虐的に笑う。
「ジャノメ……」
ウグイスは、自分が泣いていることに気付かなかった。
白蛇の封印にもその奥に潜む巨人にも気付かなかったウグイスだが、アケの清楚で品の良い佇まいの奥に何か暗いものを抱えていることには何となく気づいていた。
しかし、敢えて触れようとは思わなかった。
仲良くしている内に心を開いてくれる。
そう信じていたから。
しかし、それはとんでもないことだった。
アケの内にあったものはウグイスには考えもつかない重く、暗く、そして痛みを伴うものだった。
「ジャノメ……」
ウグイスは、震える声でアケを呼び、震える肩に手を置こうとする、が、その手はアケの肩を通り過ぎる。
アケは、静かにオモチの身体から身を起こして立ち上がる。
「ジャノメ?」
ウグイスは、アケに呼びかける。
オモチは、表情の変わらない目でアケを見る。
アケは、火傷を負って動かなくなっている武士と飛竜に群がっている青い炎の毛皮に包まれた丸い猫のような生き物達を見る。
「あの方達は?」
「火車だよ」
オモチが鼻をヒクッとさせて答える。
「死の匂いと気配を察知し、魂の巡りと肉体の回帰を促す者達。彼らの場合は生きてるからどこかに運ばれて猫の額の外に出させるだけだろうけど……」
要は碌な治療もされずに猫の額から捨てられるということだが、彼らに同情する謂れはない。ただ、今のアケを不安にさせるのを避けるため敢えて柔らかく言っただけだ。
「そうですか……」
アケは、感慨もなくぼそっと呟く。
火車達は、武士と飛竜を運んでどこかに消えていく。
「あれじゃ……間に合わないな」
そう困ったように呟くと蛇の目の端に鈍い煌めきが映る。
アケは、蛇の目を震わせ、煌めきに近寄り、身を屈める。
「ねえ、ジャノメ。あいつらのことなんて気にしなくていいから。まだ休んで……」
アケを労り、手を伸ばすウグイス。
その手が止まり、顔が強張る。
アケの右手に短刀が握られていた。
料理をする為に使っている短刀が。
ナギに襲われ、破壊された時に飛び散ったのだがそんな事はどうでもいい。
ウグイスは、素早く立ち上がり、アケに駆け寄ろうとする。
しかし……。
「来ないでください」
アケは、自分の喉元に短刀の切先を押し付ける。
オモチが赤い目をじっと向け、白い毛の中から黒い種を取り出す。
「やめてください……オモチ」
アケは、蛇の目をオモチに向ける。
「下手に刺激されたら私が死ぬ前に封印が解けちゃうかもしれませんよ」
そう言ってアケは、悲しげに口元を釣り上げる。
「貴方たちには生きていて欲しいんです。だから……やめて下さい」
「ジャノメ……」
オモチは、きゅっと種を握りしめる。
「疲れちゃいました……」
アケは、空を見上げて乾いた笑みを浮かべる。
「一人でいることにも……嫌われることにも……待つことにも……夢を持つことにも……疲れちゃいました……疲れちゃいましたよ……」
蛇の目から涙が溢れ、顔を濡らしていく。
父にも、母にも、国中の人間に嫌われ……憎まれ……ずっと待っていた最愛の弟に刃を向けられ……大切な仲間を傷つけて……。
「私って……何のために生まれてきたんでしょう?」
「ジャノメ……」
ウグイスは、アケに手を伸ばす。
その動きを蛇の目が捉え、切先を喉元に押し付ける。
白い皮膚が破れ、血が一筋流れる。
「ウグイス……」
アケは、涙に濡れた声で言う。
「私が死んだら死体を猫の額の外に捨てて下さい」
ウグイスの目が大きく震える。
「あの方達ではちょっと遅いので……封印が解ける前に遠くに捨てて下さい。そうすれば……貴方達を傷つけずにすむので……」
「ジャノメ……あんた何言って……」
「アズキと座敷童子に謝ってくれますか?巻き込んでごめんなさいって」
アケは、ゆっくりと短刀を持ち上げる。
「ナギにも会えたら伝えてください。大将になれて凄いねって。幸せになってね……って」
蛇の目から溢れた涙が地面に落ちる。
「主人にもご期待に添えなくて申し訳ありません、と。そして……」
アケの脳裏に金色の目の青年の姿が浮かぶ。
「約束……守れなくてごめんなさい」
切先が陽光に煌めく。
「さようなら」
アケは、自分の喉元に向け切先を落とす。
ウグイスとオモチは、駆け寄ろうとするも間に合わない。
切先が喉元を貫く……。
刹那。
「月曜霊扉」
アケの足元に黄金の円が展開する。
「解放」
円に紋様が描かれ、黒い鎖が飛び出し、短刀の刃を砕き、アケの身体を縛り上げる。
「かはっ」
アケの口から苦鳴が漏れ、柄だけになった短刀が落ちる。
「何をしているか。戯け者」
アケの背後に人影が落ちる。
長い黒髪に黒い外套、野生味のある顔立ちの黄金の双眸を持った青年が。
「おツキ……様?」
アケは、呆然と呟く。
ウグイスは、驚き表情を固め、オモチは鼻をヒクッと鳴らす。
ツキは、アケに近寄ると帯にぶら下げた巾着を一つ引きちぎる。そしてもう一つの手に握った白い布を巾着の中に詰め込んで投げる。
巾着はオモチの腹に当たって落ちる。
「頼んだ」
黄金の双眸が揺らめく。
オモチは、ヒクッと鼻を動かす。
ツキは、鎖に縛り上げたアケの身体を抱き抱える。
アケは、蛇の目を大きく見開く。
「しばし離れる」
そう告げるとツキは、アケを抱えたまま二人に背を向けて歩き出す。
「ちょっとま……」
ウグイスは、慌てて二人を呼び止めようとするが、いつの間にか後ろに立っていたオモチに肩を掴まれ、止められる。
いつの間にか二人の姿は消えていた。




