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幸運の転生者がのんびり異世界を救います~悪人に不運をプレゼント。ぽっちゃりですが三人の王女に溺愛されています~  作者: ゲンタ


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第41話 王子が三人、全員ダメだった

残された空気に、苦々しい静寂が漂う。

視線を向けると、取り巻きの輪の中心に立つフェルステッド侯爵が、口元をかすかに吊り上げていた。


一部始終を見ていたのだ。娘の働きに満足したかのように、その目が笑っている。

(娘よ、よくやった……とでも思っているのか)


俺は静かに息を吐いた。

(……つくづく、くだらない)


握りしめていた拳を、ゆっくりと開いた。

怒りに任せて動く場面ではない。

スキルを発動するタイミングは、もう少し先だ。


「気にしないで。あのひとたち、いつもああいう感じだから」

レオナ王女がため息まじりに言った。


その声には疲れが滲んでいた。

普段なら誰にも臆せず行動する彼女が、こういう場ではどこか息苦しそうにしている。


王族という立場にいながら、こうした腐った空気の中で感情を抑え続けなければならない。それがどれほど消耗することか、少しだけ想像できる気がした。


「……王女は、こういう場は苦手のようですね」

思わずそう聞くと、レオナは少し目を丸くしてから、苦笑いを浮かべた。


「苦手というより……虚しいのよ。本当に国のことを考えている人間が、どれだけここにいるのかしら、といつも思ってしまう」


その言葉が、胸に刺さった。


それにしても、レオナ王女とレグニアには相変わらず独身貴族たちの視線が集まっている。美貌に加えて纏う気品と威厳が、ただの好奇心を超えた憧れと敬意を引き寄せているのだ。


一方で、俺に向けられる女性陣からの視線など、皆無に等しい。


(ま、それでいいか)


そもそも、自分たちの親が領民から何を絞り取っているか、知っているのか知らないのか。どちらにせよ、気にした様子が微塵もない。


(そういうひとからの、視線なんかいりません)


***


ふと会場を見渡すと、第一王子の姿が目に留まった。

王位継承の筆頭であるはずなのに、その周囲にいるのはわずかな貴族だけだ。

華やかな場であるがゆえに、彼の立つ一角がどこか寒々しく映る。


……なるほど、これが第一王子か。

背筋はピンと伸び、一見すると凛々しい。

しかし視線が定まらず、常に周囲の様子を窺っている。


レオナ王女が「真面目なだけが取り柄」と言っていた意味が、なんとなくわかった。

臣下であれば、真面目に職務に取り組み、周囲に気を配ることは立派な資質だ。


しかし王とは、貴族も民も束ね、国を正しい方向へ導かなければならない存在だ。

その覚悟と覇気が、あの王子からはまるで感じられない。


有力貴族たちもとっくに見抜いているのだろう。

妙に真面目な第一王子が、王になるくらいなら、自分たちの意のままに動く第二、第三王子を担ぎ上げた方がいい――そう計算したのかもしれない。


(第一は優柔不断、第二は牢屋の中、第三は第二と似たり寄ったり……後継者の育成、いったいどうなっているんだ、この国は)


心の中でそう毒づいたそのとき、視界の端に不穏な動きが映った。


***


第三王子とフェルステッド侯爵の取り巻きたちが、にこやかな笑みを浮かべながら第一王子の方へぞろぞろと移動していく。


その笑みの裏に潜む毒気は、会場にいる誰の目にも明らかだった。

フェルステッド侯爵がちらりとこちらへ視線を投げた。


その目が告げていた。

『権力と金を持たぬ者は、この舞台には不要だ』


侯爵の心にはすでに、勝負ありという確信が巣食っているのだろう。

レオナ王女の正義感も、第一王子の真面目さも、この男の目には何の価値もないのだ。


第三王子が第一王子に歩み寄り、声を掛けた。

「兄上、ずいぶんと周りがお寒いようですが……真面目なだけでは、ひとは集まりませんよ」


嘲るような声音が広間に響いた。

会場の視線が一斉に第一王子へと集まる。


「何をいうか! 私の周りには信頼のおける者たちが集まっておる。数がすべてではない」


声は張っていた。

しかしその背後の空虚さが、すべてを物語っていた。


「政治とは数が力ですよ。ご存知かと思っておりましたが」


アデル嬢がここぞとばかりに身をひねる。

豪奢な首飾り、細工の細かいイヤリング、金糸で編まれた扇子――高価なものが光を受けてきらめいた。


「目が慣れていない方には、少しまぶしすぎるかしら……ふふ」


取り巻きたちが合わせて笑い声を上げる。

その声のたびに、第一王子の居場所がさらに狭まっていった。


レグニアはその様子を黙って見ていた。

(滑稽。ただ、それだけだ)


怒りではない。

冷ややかな憐れみだった。


ドラゴンの目から見れば、宝石など所詮ただの石ころだ。

飾ることにも見せびらかすことにも、何の価値もない。

飢える民を無視してこうして笑い合う人間たちの姿は、あまりにも空虚だった。


俺も同じ思いを抱いていた。

(このまま王位があの男に渡れば……民はさらに不幸になる)


胸の奥で、静かに熱いものが燃え始めていた。


(そろそろ、動く頃合いかもな)

俺はそっと、スキルの感覚を手の中で確かめた。


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