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新たな依頼探し

 結局、シエルの熱心なコーディネートにより、可愛らしいミスリル糸のインナー(防御力はそこそこだが揺れ防止効果は皆無)を買わされる羽目になったイザヨイ。

 一行はそのままの足で、カルゼオンの冒険者ギルドへと向かった。


「よし、今日の稼ぎ口を探すか。イザヨイ、お前のおかげで資金には余裕ができたが、遊んで暮らせるほどじゃねぇからな」


 ボルグが腕を捲り上げ、依頼掲示板の前陣取る。

 イザヨイもその後ろから、銀髪を揺らして覗き込んだ。


「そうですね。私も早くこの世界の実戦経験を積みたいですし」


 前衛で戦えない不満は残っているものの、魔法使いとしての立ち回りや、この世界の魔物の生態を学ぶ良い機会だ。

 シエルとクローザーも左右から依頼書を吟味し始める。


「ゴブリンの群れ討伐、薬草採取、街道の護衛……。どれも割に合わないわね」

「ああ。今の俺たちの戦力なら、もっと上を狙えるはずだ」


 クローザーの言う通り、イザヨイという規格外の火力が加わったことで、パーティの総合力は跳ね上がっている。

 ボルグは一枚の羊皮紙を手に取り、唸り声を上げた。


「……おい、これなんかどうだ?」


 ボルグが指差した依頼書には、巨大な鳥の絵と『ガルーダ討伐依頼』という文字が躍っていた。

 場所は北の岩山。推奨ランクはB。報酬は金貨三枚。

 昨日のオーク討伐よりもさらに高額な報酬だ。


「ガルーダ……。北の岩山を縄張りにしている、猛禽の王ね」


 シエルが眉をひそめる。


「確かに報酬は魅力的だけど、ガルーダは厄介よ。風を操る魔法を使うし、何より常に空を飛んでるわ。地上に降りてくるのは獲物を捕らえる一瞬だけよ」

「……ああ。俺の弓でも牽制はできても、あの硬い羽毛を貫通して致命傷を与えるのは難しい。シエルの攻撃魔法も射程と火力が足りないだろう」


 クローザーが冷静に分析する。

 Bランクパーティである彼らにとって、ガルーダは実力的に勝てない相手ではないが、相性が最悪なのだ。

 空を飛ぶ敵に対し、メイン火力であるボルグの斧は届かず、クローザーの弓は決定打に欠け、シエルは回復と防御に手一杯になる。

 長期戦になればなるほど、上空からの風の刃でジリ貧になるのは目に見えていた。


「だから、今まで俺たちはこいつを避けてきた。だがな……」


 ボルグはそこで言葉を切り、ニヤリと笑ってイザヨイを見た。


「今の俺たちには、イザヨイがいる。お前のあの異常な威力の雷撃魔法なら、空飛ぶガルーダだろうが一撃で叩き落とせるんじゃねぇか?」


 三人の期待に満ちた視線が、一斉にイザヨイへと注がれる。

「空を飛ぶ敵を落とす超火力」。

 彼らにとって、それはパーティの弱点を補う希望の光だった。


(ガルーダか。レベルで言えばオークキングよりちょっと上くらい。風耐性はあるけど、雷属性は弱点だからな。……余裕でワンパンだわ)


 イザヨイの脳内には、かつて『エターナルクレイドル』で何度も狩り尽くしたガルーダのステータスデータと行動パターンが、完璧にリストアップされていた。

 魔法の射程に関しても、自分のカンストステータスなら上空百メートルを飛んでいようが必中範囲内だ。


(でも、ここで「余裕ですよ」なんてドヤ顔したら、また『謎の強キャラ』扱いされて面倒なことになるかもしれないしな)


 イザヨイはほんの少しだけ視線を落とし、不安げな表情を作ってみせた。


「……空を飛ぶ魔物ですか。的に当てるのは難しそうですけど……ボルグさんたちがサポートしてくれるなら、やってみます」

「おおっ!」

「うむ」

「無理しないでね」

「よし! 決まりだな! ガルーダの野郎、俺たちの新しい仲間の恐ろしさを思い知らせてやるぜ!」


 ボルグは意気揚々と依頼書を引っ剥がし、受付へと持っていく。

 こうして、四人は高難易度クエストである『ガルーダ討伐』を受けることになった。


(ま、魔法を撃つだけならおっぱいの揺れも気にならないし。金貨三枚で美味しいものでも食べようかな)


 内心でソロ周回プレイのような呑気な計算をしながら、イザヨイは仲間たちに続いて冒険者ギルドを後にするのだった。

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