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依頼探し

 活気に満ちたカルゼオンの冒険者ギルド。

 五人はいつものように、掲示板の前に陣取って依頼書を眺めていた。


「うーん、今日はどれにします? 討伐でも採取でもなんでも手伝いますよ!」

「お、おう!」


 イザヨイが気合い十分に腕を捲ると、ボルグが変な声を出して視線を逸らした。


「そ、そうだな……。じゃあ、これなんかどうだ?」


 ボルグが掲示板から一枚の羊皮紙を剥がして、皆に見せた。


「『ハルモニア村の農地警備及び魔物討伐』……。推奨ランクC以上。最近、森から出てきたワイルドボアやジャイアントバグが、夜な夜な畑を荒らしてるらしい。報酬は銀貨三十枚だが……村からの依頼だから、討伐期間中の寝泊まりと飯は保証されてるそうだ」

「へえ、農地の警備ですか。村にお泊まりしての仕事ってことですね」


 イザヨイが首を傾げる。


「ああ。村の規模からして、数日は滞在することになるだろうな。……どうだ、イザヨイ。こういうのも悪くねぇと思うが」

「私は全然構いませんよ!」


 イザヨイは全く疑うことなく、二つ返事で快諾した。


「よし! 決まりだな!」

「ええ! 村の人たちを困らせる魔物なんて、私たちがパパッとやっつけちゃいましょう!」

「……矢の消耗も少なくて済む、良い依頼だ」


 ボルグ、シエル、クローザーの三人は、顔を見合わせて「計画通り」と言わんばかりに力強く頷き合った。


(……この依頼なら、村に数日泊まり込みになる。つまり、あのイケメン副団長がうろついている領主の館から、イザヨイを物理的に引き剥がせるってことだ!)


 ボルグが内心で歓喜のガッツポーズを決める。


(そうよ! 夜の星空の下、村の静かな環境でボルグとイザヨイちゃんが二人きりになるチャンスを作ってあげるのよ! ……あわよくば、私もイザヨイちゃんと同じベッドで寝られるかもしれないし……ふふっ)


 シエルが、キューピッドとしての使命感と、若干の不純な動機を混ざり合わせながら頬を染める。


(屋敷に帰せば、またあのアンドリューとかいう男と距離が近づいてしまうかもしれない。だが、村での警護任務なら、俺が索敵という名目で常に彼女のそばを離れずにいられる)


 クローザーが、弓の手入れをするフリをしながら、密かに決意を固める。


 そう、彼らがこの地味な長期依頼を選んだ理由はただ一つ。

『イザヨイを少しでも長く、領主の館から引き離し、自分たちの手元に置いておくため』であった。


 だが、そんな彼らの熱苦しいまでの『囲い込み作戦』に、当のイザヨイ本人は。


(お泊まり任務かー。まあ、たまには宿以外で寝るのも冒険者っぽくていいかもな。……でも、お風呂はあるのかな? せっかく屋敷の貸し切り風呂を満喫し始めたとこだったのに、ちょっと惜しい気もするな)


 完全に「お風呂>恋愛フラグ」という、色気も何もないゲーマー思考で、少しだけ残念そうにしているだけだった。


「じゃあ、受付で手続きしてくるぜ! イザヨイ、お前はちょっと屋敷に戻って、泊まりの準備をしてきな!」

「あ、はい! 分かりました!」


 ボルグに促されイザヨイは一度屋敷へ戻るため、ギルドを後にした。


 そのやり取りを、横でずっとジト目で見つめていたシルフィアは。


(何よこの三人。さっきから変にアイコンタクトして、ニヤニヤしたり赤くなったり……。まあいいわ。数日村に泊まり込みってことは……夜、イザヨイから『豊胸魔法』の秘密を聞き出すチャンスが山ほどあるってことね! ふふふ、覚悟しなさいよ、デカおっぱい!)


 こちらもまた、全く別の(そして極めて個人的な)ベクトルで、村での泊まり込み任務に情熱を燃やすのであった。


 こうして、各々の隠された(そして非常に面倒くさい)思惑を胸に秘めたまま、最強パーティによるのどかな村の農地警護任務が、幕を開けようとしていたのである。

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― 新着の感想 ―
予想通りではあるが本人の意思を確認しないのはいつか痛い目を見そう
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