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ミスティアの場合
「金貨30枚ものお金を何に使ったんだい?」
あっさりと父にお金を使ったことがバレてしまいました。
答えると不味いことが起こりそうな気がして何も答えず黙っています。
「ドレスでもアクセサリーでもないだろう?領収書がないし」
黙っていても父の声はだんだん低くなっていきます。
机をバンと叩かれ私はビクッと体を震わせてしまいました。
悪いことをしてしまったと白状してしまったようなものではないでしょうか?!
「答えなさい」
「すいません」
「謝れと言っているんじゃないよ。何に使ったか答えなさい」
「あの・・・えっと・・・商会の従者に渡しました」
「商会の従者?何のために」
「それは・・・」
「商会に払ったのではなく、なぜ従者なんだい?」
「あのぉ・・・えっと・・・」
父は完全にキレたようだ。
分厚いファイルで机を叩き大きな声で怒鳴った。
「従者になぜ金貨30枚も支払ったんだっ!!」
「ひっ!!」
「答えなさいっ!!」
「キャナルを、しまつ、して、もらお、うと・・・」
父の顔が世にも恐ろしいものになった。
「お前は何を言っているんだぁーーーっ!!」
「ひぃっーー!!」
父は額に青筋を立てて怒鳴り立てます。
「何をしたのか分かっているのか?お前は死罪だぞっ!」
「えっ?」
父は椅子に座り、頭を抱えた。
「たかが子爵の娘を始末しようとしただけで死罪ですか?」
「何を言っているんだ。殿下の婚約者だぞ!」
「そう、ですね?それが?」
父は呆れ果てた顔になり、首を左右に振っている。
「学業がよくても馬鹿はいるんだな」
「お父様失礼ですわよ」
「死罪になる娘に失礼などない」
「えっ?」
「フォール、フォール!!いないか?!」
「はい、旦那様」
父の剣幕に執事のフォールも血の気が引いています。
「ミスティアをどこかの男爵の家にでも出せっ!」
「お父様!!」
あまりのことに驚いてしまいます。
「国外でないと、目は届くが、帰ってこれない所に最低限で放り出せ!!」
フォールは父の真意を探そうと父から目を離さない。
「よろしいのですか?」
「そうしないと我が家が潰される!」
フォールが私を見て、父を見て、私を見た。
「かしこまりました」
「フォール!お父様!!」
そこに母が入ってきた。
「あなた、どうしたの?大きな声を出して」
「この馬鹿な娘のせいで我々も潰されるかもしれん」
父の声は小さくなり、誰にも聞かれないような小さな声で言った。
「ミスティアが何かしたのですか?」
「あろうことかキャナル嬢を殺そうと金貨30枚も商人の従者に支払った」
母もフォールも目を剥いた。
母はその場に崩れ落ち、フォールもソファーに手をついています。
「きっとエイデン殿下は知っておられると思った方がいい」
「ミスティア、あなたはなんてことを」
「たかが子爵家の娘ごときに何をそんな・・・」
「だから殿下が幼少の頃から唯一求めた婚約者なんだ!」
父は激高しています。
「幼少の頃から他の何も望まない。キャナル嬢さえ居れば他に何も望まないと言ったほどの相手なんだよ!」
父は真っ赤な顔をして、母は真っ青になっています。
「ミスティア、殿下はキャナル嬢を叩こうとしただけで腕を切り落とすと仰っしゃったそうよ」
「腕を切り落とす・・・?」
私の顔色は何色になっているのでしょう?
「殺そうとしたら、腕を切り落とす程度では済まないでしょう」
「それに、ただの子爵家の娘でも殺そうとしたら死罪だ」
「そんな事はありませんわ、世界史では上位のものは下位を生かそうが殺そうが・・・」
「いつの時代の話をしているんだ?!今の法律は違う!!」
エイデンの場合
「やぁ、公爵、久しぶりですね。今日訪れたの理由はわかっています?」
「は、い・・・」
「ミスティア嬢はこの国には二度と戻ってこないんですよね?」
「勿論でございます」
「そう、ならいいんだけど。もし帰ってきたら、この家、潰しちゃうかもしれないから」
「はっ」
「最近は教育が足りていない家が多いみたいで困っているんだ」
「申し訳ありません」
「弟のね、婚約者だった子も教育の足りない子だったんだ」
「伺っております」
「ミスティアが隣国の準男爵へ嫁入りしたことは知っているよ。でも、人生何がどう転ぶかわからないだろう?」
「監視の目は緩めません」
「だといいね〜。私としては早々に片付けてしまったほうが楽なんだけど、公爵の対応も良かったしね。今回だけは目をつむるよ」




