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エイデンの場合
キャナルとハスレと3人で美術と音楽の先生に話をしに行くことにした。
試験に合格するキャナルは流石だと思った。
「これで時間はたっぷり出来た。結婚の準備が進むね」
「殿下、ここは2人ではありませんよ」
「ごめん、ごめん。嬉しくてつい」
ハスレが視線を彷徨わせている。
「このまま音楽の試験をしてくれればいいですね」
ハスレがそう言ったので私は是非そうしてもらおうと思った。
音楽と美術の先生が一緒に私達が
来るのを待っていた。
「先生、試験をして下さい」
「その前に試験の内容を教えて下さい」
私の言葉に、キャナルが慌てて言い足す。
「『仄かなるかほり』を暗譜、笛のテストだね。あとはまぁ、教科書の中から一曲選んで歌ってもらおうか」
「わかりました」
「美術の方は?」
「人物、風景各1枚づつどっちも6号サイズで油絵と色鉛筆で」
「わかりました」
ハスレが色鉛筆は難しいですねと情けない顔をしていた。私も苦手だ。
「仄かなるかほりの試験お願いします」
「おや、吹けるのかい?」
「多分大丈夫だと思います」
キャナルも私もと答えていた。
ハスレは音楽の試験は受けないのか「美術の先生と話がある」とその場に残った。
音楽室に着いて、キャナルが先に笛を吹いた。
暗譜も演奏も完璧だった。
私も吹いて合格をもらう。
キャナルは『はるかなる道』を歌って、私は『ロマンスのゆくえ』を歌った。
キャナルの透き通った声が胸にしみる。
閉じ込めてしまいたい。
二人共合格をもらえた。
帰り道、画材屋に寄って6号サイズのキャンパスと画用紙を買って帰った。
「さすがキャナルだね。試験もすべて合格」
「殿下も合格したではありませんか」
「ねぇ、キャナル」
「はい。なんでしょう?」
「そろそろ私のことをエイデンと呼んでくれない?」
「そんな事できません!」
「私がお願いしているんだからいいと思うんだ」
キャナルに近寄り、肩にキスをした。
耳が赤くなり肩を抑えてふるふる震えている姿は本当に愛らしい。
初めて出会った時もこんな風に震えていたなと思い出した。
キャナルの場合
殿下が肩に!肩にキスした!!
なんで、なんでそんな所にキスするの?!
しないよね、普通しないよね?!
平静に戻ろうと思うが戻れない。
だって肩にキスだよ?!ありえないよね?
くっ!!
これが正常かどうか誰にも聞けないじゃない?!
殿下のバカッーー!!
商人の場合
従者が隣国へ逃れる為に出発した。
馬車一台分の荷物を運ぶことを条件に口止め料は貰わないでやった。
ミスティアお嬢さんが従者を見つけられることはまずない。
公爵様にも何も言えないだろう。
あんな小さななりをして、言うことはとんでもないことを言いなさる。
今どき、そう簡単に人など殺せない。
平和な国なのだから。
商人の従者の場合
隣国へ行くならばと旦那に預けられた馬車一台の荷物と交代要員の二人で御者をしながら進む。
金貨30枚位で国を出ることになったなら、やっぱり割に合わねぇな。
でもあれ以上出せないみたいだったしなー。
証文無しで金を渡すなんて危機意識っちゅうものがないよな。
さすが、お嬢様。
13歳くらいにしか見えないのにあれで17歳とか信じられないね〜。
人殺しを頼むくらいに性根が腐ってるし。
はぁ〜やっぱり割に合わないな〜。
まぁ、仕事自体は辞めなくて済んだから良しとしなきゃな。
向こうについたら女でも買って遊ぶかな。




