帰路
魔術や、巨大生物が跋扈する世界。僕は今までここを異世界か何かだと思っていた。だが、目の前に広がる白い珊瑚礁は、よく知る名を冠していた。
「…帰りましょう、ドミちゃんに聞かなきゃいけないことができました」
「ドミちゃんに? もう少しこの景色も見てたかったんですが…まあ、皆も心配してるでしょうからね」
オーストラリア大陸──他の大陸と切り離されたために、有袋類が生き残ることを許された孤島。あまりに単純だが、その名は短縮されてオラリアとなったのだろう。
しかしそれは、僕のもやもやとした気持ちを晴らすだけの事実でしかない。むしろ謎は増えているのだ。僕は日本から、どうしてオセアニアまで運ばれるに至ったのか。
ともかく帰ってから考えよう。事実確認もできていないのだから…と、僕たちは楽園に別れを告げた。ああそうだ、リアムが倒した蛇も持って帰らなきゃ。
「えっそれ持って帰るんですか…?」
「あっ…ああ、ほら、殺してしまったなら食べるか使うかしないと失礼かと思って…」
言われて気づいたが、この大蛇をわざわざ持ち帰ろうとするのはどうかしてる。最近サバイバル慣れしすぎて自然とやってたが。
帰路はというと、ルートが確立しているのもあって危険もなく戻ることができた。多少の野生生物は担いだ大蛇に怯えて逃げていったし、ついた時間もまだ日が落ちる前。
「…リアム!? 無事だったのね!」
「ろ、ロリィ…!?」
村に戻るや否や、僕に捜索を依頼した少女が涙を浮かべながらリアムに抱きついてきた。
赤くなるリアムを見る限り、彼の好きな子は彼女のことだろう。案外相思相愛なんじゃないか?
「ありがとうございます。この大蛇、倒したんですか? 危険でしたよね」
「気にしないでください。それにこの蛇を倒したのは僕じゃないですから」
無粋なことは言わずに、軽くアシストしてやることにした。少女はリアムの顔をまた見返すと抱きつこうとする。だがリアムはそれを突っぱねた。
「…その、今度の祭で優勝したら伝えたいことがあるんだ。だから…よかったら応援してほしい」
少女は驚いて、頷く。
「おおエータ! 戻ってきてたんだな…ってなんだそのデケェ蛇!?」
「あ、トリクスさん、丁度いいところに」
僕はトリクスに一部始終を話した。リアムの特訓は快く引き受けてくれたし、蛇はドミちゃんの所の魔術冷蔵庫まで運んでくれることになった。
「あと実は…僕の元いた国について、ドミちゃんと相談したいことがあって」
「何かわかったのか?」
「まあ、はい」
「そうか…でもドミちゃんは祭の用意もあって忙しいからな、ドミちゃんのいる首都まで自分で行って頼んでくれないか?」
「わかりまし──」
そこまで言いかけたところで、僕は強い頭痛に見舞われた。同時にトゥリーからはけたたましい音楽が鳴る。
「瑛太様、政府から着信のようですわ」
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