恋する少年
「えっと、大丈夫ですか…?」
「大丈夫じゃない!!!痛い!!!はやく助けて!!!」
「どうしよう、じゃあ…爆雷音」
ぼん。
「ぎゃっ!?」
音に驚いて、アリたちは退散していく。彼のことも驚かしてしまったが、これはどうしようもない。彼は荒い息を落ち着けながら立ち上がった。
「あ、ありがとうございます…あなたは…」
「紫香楽瑛太です。この義手はソーラクトゥリー」
「僕はリアム、って言います。もしかして噂になってた有胎盤人の方ですか? そんな人がなんでここに…」
「村の女の子から話を聞いて。皆さん心配してましたよ、帰りましょう」
アリにつけられた噛み傷は痛々しいが、動けないほどの大怪我はしていないようで安心する。しかし、帰ろうという提案に彼は難色を示した。
「僕、好きな女の子がいるんです。幼馴染で、この間一緒に成人を迎えたんです。実は、オラリアの祭はパートナーを探す目的もあって…そのために大会だとかでパフォーマンスを行うんですけど……」
「自分が選ばれる自信がない?」
リアムは目を逸らして、そして恥ずかしそうに頷いた。
「だからこの、霧幻の迷洞樹にいるといわれる伝説の鳥、コウハイフウチョウを探してるんです」
「めいどうじゅ…? こうはい…?」
「このダンジョン状のジャングルをそう呼んでいるのでしょう。コウハイに関しては『光背』かと」
「その鳥の喉元についている、世にも美しい羽、それを彼女にプレゼントしたいんです! 迷洞樹の奥まで行ったとなれば、それだけで力の証明にもなる…だから…」
それでも危険だ、帰るべきだ…とは言えなかった。僕もついこの間まで弱虫だった。恋はしたことがないが、その必死さには共感を覚えてしまう。
「……トゥリー、さっき調べた動体反応に、鳥類はいましたか」
「いえ、いませんでしたわ。鳥類はほとんどが迷洞樹よりも上の木々にいるようですわ」
「ならとにかく東に向かうルートで最短経路を計測してください。トリクスたちに心配はかけられません」
「な、何を…」
「危険ですから、僕たちもついていきます。いいですね?」
リアムは、噛まれた傷を押さえると、不甲斐なさそうに頷いた。自分の力だけでどうにかしたかったようだが、足が震えている。
「…っ、危ない!」
そんな彼を背後から襲う影。僕はとっさに彼を抱えて攻撃を避ける。見ると、猿のような生物がこちらに飛びかかってきたようだ。
「燃魂響!」
野生動物は火が苦手だ…と、どこかで聞いたことがある。僕は身体を立て直し魔術を唱えたが、火の玉は出現しなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
よければブクマと評価していってね。
有袋猿類
哺乳綱 有袋猿目 有袋猿科 有袋猿属
有袋人類の祖先と言われる、サルによく似た有袋類。
霧幻の迷洞樹の樹上、及び迷宮内に生息し、拾ったものをダンジョン内に持ち帰り貯めておくことがある。
※この作品に登場する動物は、一部を除き創作されたものです。現実を元に創られていますが現実には存在しません。




