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砲《ラキエータ》  作者: 鯛と琴
第一章
12/17

恋する少年

「えっと、大丈夫ですか…?」


「大丈夫じゃない!!!痛い!!!はやく助けて!!!」


「どうしよう、じゃあ…爆雷音クラッカー


 ぼん。


「ぎゃっ!?」


 音に驚いて、アリたちは退散していく。彼のことも驚かしてしまったが、これはどうしようもない。彼は荒い息を落ち着けながら立ち上がった。


「あ、ありがとうございます…あなたは…」


「紫香楽瑛太です。この義手はソーラクトゥリー」


「僕はリアム、って言います。もしかして噂になってた有胎盤人の方ですか? そんな人がなんでここに…」


「村の女の子から話を聞いて。皆さん心配してましたよ、帰りましょう」


 アリにつけられた噛み傷は痛々しいが、動けないほどの大怪我はしていないようで安心する。しかし、帰ろうという提案に彼は難色を示した。


「僕、好きな女の子がいるんです。幼馴染で、この間一緒に成人を迎えたんです。実は、オラリアの祭はパートナーを探す目的もあって…そのために大会だとかでパフォーマンスを行うんですけど……」


「自分が選ばれる自信がない?」


 リアムは目を逸らして、そして恥ずかしそうに頷いた。


「だからこの、霧幻の迷洞樹にいるといわれる伝説の鳥、コウハイフウチョウを探してるんです」


「めいどうじゅ…? こうはい…?」


「このダンジョン状のジャングルをそう呼んでいるのでしょう。コウハイに関しては『光背』かと」


「その鳥の喉元についている、世にも美しい羽、それを彼女にプレゼントしたいんです! 迷洞樹の奥まで行ったとなれば、それだけで力の証明にもなる…だから…」


 それでも危険だ、帰るべきだ…とは言えなかった。僕もついこの間まで弱虫だった。恋はしたことがないが、その必死さには共感を覚えてしまう。


「……トゥリー、さっき調べた動体反応に、鳥類はいましたか」


「いえ、いませんでしたわ。鳥類はほとんどが迷洞樹よりも上の木々にいるようですわ」


「ならとにかく東に向かうルートで最短経路を計測してください。トリクスたちに心配はかけられません」


「な、何を…」


「危険ですから、僕たちもついていきます。いいですね?」


 リアムは、噛まれた傷を押さえると、不甲斐なさそうに頷いた。自分の力だけでどうにかしたかったようだが、足が震えている。


「…っ、危ない!」


 そんな彼を背後から襲う影。僕はとっさに彼を抱えて攻撃を避ける。見ると、猿のような生物がこちらに飛びかかってきたようだ。


燃魂響フェイクオーブ!」


 野生動物は火が苦手だ…と、どこかで聞いたことがある。僕は身体を立て直し魔術を唱えたが、火の玉は出現しなかった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

よければブクマと評価していってね。


有袋猿類

 哺乳綱 有袋猿目 有袋猿科 有袋猿属

 有袋人類マースピアンの祖先と言われる、サルによく似た有袋類。

 霧幻の迷洞樹の樹上、及び迷宮内に生息し、拾ったものをダンジョン内に持ち帰り貯めておくことがある。


※この作品に登場する動物は、一部を除き創作されたものです。現実を元に創られていますが現実には存在しません。

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