ダンジョン突入
しばらく歩くと、風景は平原とも、山岳とも異なるものに変わっていく。湖のマングローブも巨大だったが、こちらはその比ではない。
内部が空洞になっている、ツタのような木が数十メートルの高さまで伸び、その上に乗るように木が生えている。
ところどころには球体のような植物が生えており、これまたツタのような木が這っている。
「絞め殺しの木ですわ。他の木に巻き付いて伸び、最終的に取り付いた木が枯れてしまうことからその名がついたのですわ」
なるほど、巻き付かれていた木だけが枯れて中が空洞になったのか。
「カーテンフィグツリーとも呼ばれ、本来は巻き付かれた木が重さに耐えられず傾いて、そこから地面に根を伸ばす様がカーテンにも見えるのですが…」
ここにあるカーテンフィグツリーは殆どが円筒状だ。内側の広さからして、余程太くて頑丈な木に寄生したのだろう。
そして厄介なのは、いくつものカーテンフィグツリーが絡み合うことで、中の空洞が入り組み複雑化、結果として自然にダンジョンが形成されていることだった。
「この中から人探しですか…いや、やるしかないですね。トゥリーはマッピングをお願いできますか」
「了解。記録開始、ですわ」
下手すれば、山から村までの道のり以上の困難かもしれない。だが不思議とそこまで怖くはなかった。
「爆雷音」
僕はダンジョン化した木々の壁面に手をついて言った。ただ音を鳴らすだけのEランク魔術。その音がダンジョン中に響き渡る。
反響定位というやつだ。僕はやったこともないしできるとは思わないが──
「トゥリー、今の音で構造は分かりそう?」
「やってみますわ、何度か試してみてください」
「よし」
数回、場所を変えて爆雷音を鳴らす。何度目かにしてダンジョン構造の立体図面が視界に浮かび上がった。
「中で人型の生物が動いているのがわかりますわ。それもいくつか反応がありますので、目的の人物かはわかりませんが…」
「しらみつぶしに当たっていきましょう。それくらいの余裕はあります」
「了解ですわ。では現在地表示と最短ルートの計測を行いますわ」
僕は網目状になっているカーテンフィグツリーをよじ登る。前は外に出て遊んだりすることもなかったので、木登りも初めてだが、こんなに腕に負担がかかるものなのか。
上までつくと、僕はもう一度爆雷音を鳴らして確認する。なにせ人間を探すのだから、動かれてしまっては困る。
トゥリーからの地図が更新される。動体はやはり殆どが動いていたが、一つだけさっきと場所があまり変わらない生物反応があった。
「…トゥリー、この、動いてない人を目的地に指定してください」
「了解ですわ」
最悪の事態が脳をよぎる。僕は一目散にそこへ向かった。少しは動いているので、まだ間に合うはず──
「いだいいだいいだい!!!噛まないで!いだだだだだだだ!!!」
僕の目に飛び込んできたのは、手のひらほどの大きさのアリに集団でたかられて、身動きが取れなくなっている少年だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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オーバーカーテンフィグツリー
バラ目 クワ科 イチジク属
霧幻の迷洞樹の主要部分を構成する「絞め殺しの木」。
内部には動物のフンや、ビッググリーンアントが営巣のために集めた葉などで土壌が形成され、木の上に木が生えるという異常事態を引き起こす。
※この作品に登場する動物は、一部を除き創作されたものです。現実を元に創られていますが現実には存在しません。




