東の村の迷い子
宴会が終わった後、僕は貸してもらった寝床の上で考えていた。長く考え込める余裕が今までなかったので、整理してみるとその謎の多さに愕然とする。
そもそもにして、僕を襲った怪物は何だったのか。
あれだけの怪物を前にして、なぜ僕の身体は腕を失うだけで済んだのか。
そして、僕に義手をつけて、オラリアの山中に埋めたのはいったい誰なのか。
わかることは、これらの過程はすでにずっと前に行われたことであり、それからトゥリーすら驚くほどに時間が経過していること。
しかし、歩いてきた疲れもあって、悩んでいる僕が寝落ちるまで時間は要さなかった。
「…ん、まぶし」
「おはようございます、瑛太様」
「うん…おはよ…」
支柱根の隙間から覗く朝日に照らされて、僕は目が覚めた。意識の冴えない僕に対して、外はとっても騒がしい。
僕は外に出て、トリクスに尋ねた。
「…なにかあったんですか?」
「ああ、昨日の祭の話がもう国中に広まったみたいだな」
そういえば、そんな話もあった。自分のことを考えていたら忘れていたが。
「そういえば、有袋人類の成人って何歳からなんですか?」
「十五歳からだよ。俺はもうだいぶ前に成人しちまったから、今回の大会には出られねぇ」
ドミちゃんによると、学校のある本国への道のりは長く過酷すぎるため、若くて元気な者に任せたいのだという。
「まあ悔しいけど、ドミちゃんが言うなら仕方ねぇ。俺は自分とこの奴らを鍛えることにしたよ」
「なるほど…あ、なんだったら僕も手伝いましょうか? 僕もやることなくて」
「そうか? そりゃ助かる。そうだな…じゃあ、北東の村に分ける予定だったそこの魚、代わりに持っていってくれないか?」
「わかりました。トゥリー、北東ってどっちです?」
「あちらですわ。昨日、地図のデータがオラリア国王から送られてきておりますので、そちらもご覧くださいませ」
僕の目前に地図が表示される。北東の方は湖がなく、村も一つしかない。
「大丈夫か? 行き方とか説明した方が…」
「いや、大丈夫そうです。じゃあ行ってきますね」
「おう、じゃあな」
昨日のように、湖のほとりを歩きながら進む。かなり広い湖ではあるが、これまで歩いてきた道のりに比べればなんということはない。
程なくして、目的の村にたどり着く。湖から離れた場所にあるだけあって、他の村とは雰囲気が違う。なんの変哲もない一軒家が並び、ところどころに畑がある。
「失礼します、トリクスさんの代わりに魚を持ってきましたー」
「あー、そこに置いといてださい…ってあなた、噂になってた義手の有胎盤人さんじゃないですか?」
慣れない大声で呼びかけると、近くを通りかかった背の高い少女が答えてくれた。
「ああ、はい、ドミちゃん…王の許可は頂いてます」
「魔術もお使いになられるんですよね」
「そうですけど…詳しくは、ないので」
「魚を持ってきていただいたのに、さらにお願いするのも申し訳ないんですが…実は、私の幼なじみが今朝村を出てから、帰ってこないんです」
また魔術を教えてくれと言われるのかと思ったが、そうではないらしい。
「た、大変じゃないですか」
「はい、ここからさらに東の方にあるジャングルに向かったきり…あのジャングルは危険な生き物がいっぱいいるって話で…皆はもう諦めた方がいいって」
「…わかりました」
「ありがとうございます!」
流石に見過ごせなかった。トリクスさんに心配されるといけないので、彼女に言伝してもらうよう言ってから、僕はすぐに東へ向かった。
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