第19話「密約――飲み屋街のバーで交わされた“沈黙の契約”」
このお話に関してはこちらのお話を読んでからにして頂きたい。
『有名グループのNo.1アイドル彩香と結婚した黄金 』
登場人物が2人上記の小説に記載してます。
もし… 分からなかったらこちらを読むと内容が分かります。
夜。
ネオンが滲む飲み屋街。
その一角にある小さなバーは、表通りの喧騒から切り離されたように静かだった。
カウンターの奥。
グラスを磨きながら、男が一人座っている。
株式会社龍雷神――会長。
龍雷神黄金。
その名は業界では知られているが、今はただの酔い気味の中年男だった。
「……で?」
氷を鳴らしながら、黄金が言う。
「わざわざここまで来るってことは、よっぽどだな」
扉の前に立つ男。
壯介。
「はい」
短く答える。
いつもの冷静さはあるが、今夜は違う。
「頼みがあります」
その言葉に、黄金はニヤリと笑う。
「珍しいな、お前が“頼む”なんて」
グラスを置く。
「言ってみろ」
壯介は一度だけ息を吐き、言った。
「週刊誌部を止めてください」
その一言で、空気が変わる。
「……ほう」
黄金の目が細くなる。
「理由は?」
壯介は少しだけ間を置く。
「弟が関係しています」
「弟?」
「潤一郎です」
黄金は軽く笑う。
「噂の大学生か」
「はい」
そして、壯介は続ける。
「みのりと結婚しています」
その瞬間、グラスが止まる。
カラン、と小さな音。
「……は?」
黄金の声が少しだけ低くなる。
「人気声優と、大学生が?」
「交際0日婚です」
沈黙。
バーの空気が一気に重くなる。
黄金はしばらく黙っていた。
そして、ふっと笑う。
「お前の家系、どうなってんだよ」
「普通じゃねぇな」
冗談めかした声。
だが目は真剣だった。
「で?」
黄金はグラスを回す。
「それを俺に隠せと?」
「はい」
壯介は迷わず答える。
「週刊誌部に、止めをお願いします」
「潰せとは言いません」
「ただ、これ以上踏み込ませないでください」
黄金はしばらく黙る。
そして――
「お前さ」
低く言う。
「それ、会社のリスク分かって言ってるか?」
「分かっています」
即答。
「記事一つで飛ぶ世界だぞ?」
「それでも構いません」
黄金は目を細める。
「……そこまでか」
壯介は一度だけ目を伏せる。
「弟なんです」
その一言は、重かった。
――数秒の沈黙。
そして。
黄金はふっと息を吐いた。
「いいな」
「え?」
「面白ぇ」
グラスを置く。
「分かった」
「週刊誌部には釘を刺す」
壯介の目がわずかに動く。
「ただし条件だ」
「はい」
黄金は笑う。
「俺の話も聞け」
「……?」
「俺もな」
少しだけ声を落とす。
「昔、似たようなことがあった」
その言葉に、壯介は黙る。
黄金は続ける。
「秘密の結婚だ」
「相手はな」
「GRT48の山本彩香」
その名前に、壯介の眉がわずかに動く。
「……親戚ですか?」
「そうだ」
軽く笑う。
「今じゃ普通の生活してるがな」
「当時は地獄だった」
黄金はグラスを傾ける。
「週刊誌、事務所、世間」
「全部敵だ」
「でも結局な」
一拍置く。
「守りたいもん守った奴が勝つ」
静かな言葉。
重みが違った。
黄金は壯介を見る。
「お前の弟も同じだろ」
「なら、俺も協力してやる」
グラスを置く。
「その代わり」
「ちゃんと守れよ」
壯介は深く頭を下げる。
「……ありがとうございます」
黄金は笑う。
「礼はいらん」
「ただし」
指を一本立てる。
「バレたら俺も巻き込まれるからな」
「責任取れよ?」
「はい」
短く、強く返す。
バーの外。
ネオンが揺れる。
その夜。
株式会社龍雷神の“沈黙の契約”が成立した。
――週刊誌部は、これ以上踏み込めない。
少なくとも、表向きは。
だが。
物語はまだ終わらない。
むしろ――
これからが本当の戦いだった。
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