第0話 外では他人、家では夫婦――秘密の結婚生活の始まり
おはようございます。
この物語は――
「推しに“結婚したい”と言い続けたら、本当に結婚してしまったらどうなるのか?」
という、ちょっと非現実で、でもどこか憧れてしまう関係をテーマにしています。
いきなり夫婦から始まる少し変わった構成になっていますが、
ここから“出会い”へと遡っていきます。
甘めの新婚生活と、秘密の関係、そして少しのドキドキを楽しんでいただけたら嬉しいです。
もし少しでも「続きが気になる」と思っていただけましたら、
ブックマークや評価をいただけると、とても励みになります。
それでは、第0話をお楽しみください。
「いってきます」
「……いってらっしゃい」
玄関で交わす、たったそれだけの会話。
でも――
扉が閉まった瞬間、俺たちは“赤の他人”になる。
◆
大学へ向かう道。
周りから見れば、俺はただの普通の大学生だ。
そして彼女は――
テレビやアニメで毎日のように声を聞く、人気声優・みのり。
本来なら、同じ空間にいることすらおかしい存在。
だけど。
「……ふふ、ちゃんと演じられてた?」
夜、家に帰ると彼女はそう言って笑う。
「ギリギリでした……」
「顔に出てたよ?」
「嘘でしょ……」
そんな会話ができる距離にいる。
なぜなら――
「はい、お疲れさま」
差し出されたマグカップを受け取る。
自然な動きで、隣に座る。
「……今日も頑張ったね」
そう言って、そっと肩に寄り添ってくる。
距離が、近い。
近すぎる。
「……みのりさん」
「なに?」
「こういうの、まだ慣れなくて……」
くすっと笑う声。
そして――
「夫婦なんだから、慣れてもらわないと困るな」
さらっと、とんでもないことを言う。
そう。
俺たちは――
結婚している。
交際期間、0日。
恋人ですらなかった関係から、いきなり“夫婦”になった。
しかもそれは、誰にも言えない秘密。
外では他人。
家では夫婦。
そんな歪で、でも確かに温かい関係。
◆
「ねえ、潤一郎くん」
「はい」
「……あの時のこと、覚えてる?」
不意に、彼女がそう聞いてきた。
「あの時……?」
「漫画喫茶でさ」
一瞬で思い出す。
あの場所。あの言葉。
人生が変わった瞬間。
「……はい。忘れるわけないです」
「だよね」
彼女は少しだけ照れたように笑う。
「まさか、本当に結婚するとは思ってなかったでしょ?」
「……正直、夢だと思ってました」
「私も」
そう言って、ふっと視線を落とす。
そして小さく呟いた。
「でもね」
「……?」
「ずっと言われてたから」
「え?」
「“結婚したいくらい好きです”って」
心臓が止まりそうになる。
「最初はびっくりしたけど」
「そのうち、嘘じゃないって分かってきて」
「……気づいたら、ちゃんと考えてた」
ゆっくりと顔を上げる彼女。
その目は、あの時と同じだった。
「この人となら、いいかもって」
言葉を失う。
◆
「だからさ」
彼女は、少しだけ悪戯っぽく笑って――
「もう一回、最初からやり直す?」
「え?」
「出会いから。全部」
意味が分からず固まる俺に、彼女は続ける。
「ちゃんと順番通りじゃなくていいでしょ?」
「私たち、最初からおかしいんだから」
確かにそうだ。
普通じゃない。
でも――
「……はい」
頷いていた。
「じゃあ決まり」
彼女は立ち上がり、振り返る。
「次は“出会い編”ね」
その言葉に、自然と笑みがこぼれた。
◆
――これは。
推しの声優に「結婚したい」と言い続けた俺が、
本当に結婚してしまった話。
ありえないはずの関係が、現実になった物語。
そして――
すべては、あの夏の握手会から始まった。
第0話を読んでいただき、ありがとうございました。
今回は“すでに結婚している状態”からスタートしました。
ここから第1話では、すべての始まり――握手会での出会いへと繋がっていきます。
なぜ人気声優である彼女が、
ただの大学生である主人公のプロポーズを受け入れたのか。
その理由や心の変化も、これから少しずつ描いていく予定です。
この作品は
・交際0日婚
・年の差恋愛
・秘密の夫婦生活
といった要素を中心に、甘さ多めで進んでいきます。
「面白そう」「続き読みたい」と思っていただけましたら、
ぜひブックマーク・評価・感想などいただけると嬉しいです。
次回、第1話「出会い--あの夏の握手会」もよろしくお願いします。




