第15話「共闘――兄が示す“守り方”」
「……で、週刊誌に狙われてる、と」
カフェを出たあと。
少し場所を変えて、三人で歩きながら話す。
壯介の表情が、少しだけ引き締まった。
「はい」
潤一郎が頷く。
「一度、写真を撮られかけました」
「顔は?」
「多分、大丈夫です」
「多分、か」
壯介は短く息を吐く。
「甘いな」
その一言に、空気が少し張る。
「え……」
「相手はプロだぞ?」
鋭い視線。
でも、それは責めているわけじゃない。
「“多分”で動くと、普通に詰む」
現実的な言葉。
「……すみません」
思わず視線を落とす。
すると。
「責めてるわけじゃねぇよ」
壯介が軽く肩を叩く。
「ただ、やり方があるって話だ」
その言葉に、顔を上げる。
「やり方……?」
壯介は少しだけ笑う。
「社会人ナメんな」
頼もしい一言だった。
――その日の夜。
潤一郎の部屋。
珍しく、壯介も一緒にいる。
「まず前提な」
テーブルにスマホを置く。
「週刊誌は“確証”を取りに来る」
「疑いだけじゃ記事にしない」
みのりも真剣に聞いている。
「つまり」
壯介が指を立てる。
「“決定的な証拠”を取らせなきゃいい」
シンプルだけど、本質だった。
「じゃあどうするか」
スマホに地図を表示する。
「行動パターンを分散させる」
「……分散?」
潤一郎が聞き返す。
「同じ時間、同じ場所、同じルート」
「これが一番狙われる」
確かに思い当たる。
「だから変える」
「時間をずらす」
「ルートを変える」
「合流地点も固定しない」
具体的すぎる対策。
「……すごいですね」
素直に言う。
壯介は肩をすくめる。
「普通だろ」
「社会人ならな」
どこか余裕のある言い方。
「あと」
今度はみのりを見る。
「仕事終わり、気をつけろ」
「やっぱりそこですよね」
みのりも理解している様子。
「事務所出た瞬間が一番狙われる」
「そこだけ別動線にしろ」
「……マネージャーと相談します」
即答だった。
「いいな」
壯介は満足そうに頷く。
「で、最後」
少しだけ声のトーンが変わる。
「もし撮られた場合」
空気が引き締まる。
「否定できる関係性を作れ」
「……え?」
「“ただの知り合い”とか、“親戚”とか」
「逃げ道を用意しとけ」
そこまで考えるのか、と息を呑む。
「徹底してる……」
潤一郎が呟く。
壯介は軽く笑う。
「守るってのは、そういうことだ」
その一言に、重みがあった。
――数日後。
大学帰り。
(……変わったな)
自分でも分かる。
行動が、明らかに変わっていた。
ルートを変える。
時間をずらす。
周囲を見る。
意識が、研ぎ澄まされている。
――その少し離れた場所。
「……あれ?」
戸倉が首を傾げる。
「この前のやつ、ルート変えてるぞ」
「気づかれてる?」
渡邊も眉をひそめる。
「いや……」
戸倉が目を細める。
「単に慎重なだけかもな」
「でも、決定打がない」
苛立ちが見える。
「クソ、証拠が足りねぇ……!」
――回避。
確実に、機能していた。
――夜。
「……すごいですね」
潤一郎が感心したように言う。
「ちゃんと効いてる」
みのりも頷く。
「やっぱり、壯介くんのおかげ」
「だろ?」
当の本人は、あっさりしている。
「まあ、まだ油断すんなよ」
「はい」
「でも」
壯介が少しだけ笑う。
「これで簡単には捕まらねぇ」
その言葉は、確かな自信に満ちていた。
「……ありがとうございます」
潤一郎が頭を下げる。
「助かってます」
すると壯介は、軽く手を振る。
「家族だからな」
さらっと言う。
でも、その一言が一番強かった。
「守る側、増えた方がいいだろ?」
そう言って笑う。
その背中が、やけに頼もしく見えた。
――こうして。
二人の秘密は、さらに強く守られる。
そして。
週刊誌との攻防は、次の段階へ。
“追う側”と“逃げる側”。
その戦いは、まだ終わらない。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
もしこの物語に少しでも「面白い!」と感じていただけたなら——
ブックマーク & 評価★5 をぜひお願いします!
その一つひとつが、次の章を書き進める力になります。
読者の皆さまの応援が、物語の未来を動かします。
「続きが気になる!」と思った方は、ぜひ、見逃さないようブックマークを!
皆さまの応援がある限り、次の物語はまだまだ紡がれていきます。




