第14話「兄・壯介との再会――過去の繋がり」
「……兄貴に、話してもいいですか?」
夕食後。
少しだけ緊張しながら、潤一郎は口を開いた。
「兄貴?」
「はい。家族で、母さんには話したんですけど」
「……兄だけ、まだで」
みのりは少しだけ考える。
「信頼できる人?」
「はい」
迷いなく答える。
すると、みのりは小さく頷いた。
「じゃあ、いいよ」
その一言に、少しだけ安心する。
「でも」
すぐに続ける。
「ちゃんと、私も一緒に会う」
「……はい」
それが当然だった。
――数日後。
駅前のカフェ。
「……まだかな」
少し早く着いた二人は、並んで座っていた。
「緊張してる?」
「……してます」
正直に答えると、みのりがくすっと笑う。
「大丈夫だよ」
そう言われても、やはり落ち着かない。
やがて。
「おーい」
聞き慣れた声。
振り返る。
そこにいたのは――
「久しぶりだな、潤一郎」
兄・壯介。
背が高く、落ち着いた雰囲気。
そして――
「……え?」
壯介の視線が、みのりで止まる。
一瞬で、表情が変わる。
驚き。
そして、どこか懐かしむような。
「……みのり?」
その名前を、自然に呼んだ。
「……え?」
今度は、みのりが固まる。
数秒の沈黙。
そして――
「……壯介?」
同じように、名前を呼び返す。
「え、ちょっと待って」
潤一郎だけが置いていかれる。
「知り合い……ですか?」
二人が同時に振り向く。
そして。
「「同級生」」
声が重なった。
「え?」
理解が追いつかない。
壯介が苦笑する。
「小学校と中学校」
「9年間、同じクラス」
さらっと言う。
「……は?」
情報量が多すぎた。
「マジで?」
「マジ」
みのりも少しだけ驚いたまま頷く。
「……久しぶり」
「ほんとにな」
二人の間に、独特の空気が流れる。
懐かしさと、少しの照れ。
「え、ちょっと待ってください」
潤一郎がようやく口を挟む。
「そんな偶然あります?」
「いや、俺も驚いてる」
壯介が笑う。
「まさかお前の相手が、みのりとはな」
みのりも、少しだけ苦笑する。
「世間狭すぎでしょ……」
三人で席に座る。
改めて、向き合う。
「で」
壯介が腕を組む。
「説明してもらおうか」
鋭い目。
でも、どこか楽しんでいるようにも見える。
「……はい」
潤一郎は深く息を吸う。
そして、すべてを話す。
出会い。
2年間の想い。
そして――結婚。
話し終えると、静かになる。
壯介はしばらく黙っていた。
やがて。
「……なるほどな」
一言。
「正直、ぶっ飛んでる」
「……ですよね」
苦笑するしかない。
でも。
「でも」
壯介がみのりを見る。
「お前が選んだなら、納得だわ」
その言葉に、少しだけ驚く。
「え?」
「昔から、変なとこで真面目だったしな」
懐かしそうに笑う。
「適当なことはしないタイプだろ」
みのりは少しだけ目を細める。
「……変わってないね」
「そっちもな」
自然な会話。
長い時間を共有してきた者同士の距離感。
「で、お前」
壯介が今度は潤一郎を見る。
「本気なんだな?」
その問い。
「……はい」
迷わず答える。
「本気です」
視線を逸らさない。
すると、壯介は少しだけ口元を緩めた。
「ならいい」
短く言う。
「兄としては、応援する」
その一言で、肩の力が抜けた。
「……ありがとうございます」
思わず頭を下げる。
「ただし」
指を一本立てる。
「泣かせたら許さねぇ」
母と同じ言葉。
でも、その重みはまた違う。
「……はい」
強く頷く。
すると、壯介はふっと笑う。
「しっかし、面白ぇなこれ」
「何がですか?」
「弟の嫁が、昔の同級生とか」
確かに、普通じゃない。
「……運命、かもね」
みのりがぽつりと呟く。
その言葉に、三人が少しだけ笑った。
偶然の再会。
でも、それだけじゃない。
過去と現在が繋がる、不思議な縁。
――こうして。
また一つ、“味方”が増えた。
二人の関係は、さらに強くなる。
そして。
物語は、次の段階へ進んでいく。
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