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―――家に帰ってきて玄関におじさまがいたから、そこで今日あったことを聞いてもらうことにした。タイミングばっちりだねー。
学校で分家の子に声をかけられたから、小春ちゃんの巫女になったんだよって教えたことを一応おじさまにも伝えておこ。
「おじさまー、ただいまー! あのねー、昨日さ、分家の子に木原から鬼原になったのかって聞かれてね。今日もどういうこと? って聞いてきたから小春ちゃんのこと説明して、んで、小春ちゃんの巫女になったってこと言っておいたからー」
「ふむ。小春様が大々的にせよとおっしゃったのだな? わかった。……それにしても、耳の早い分家がおったようだな。そのような有能なものには、なにかしら本家の仕事を任せてもよいかもしれぬな。もし、明日も声をかけてくるようであれば、この名刺を渡してくれぬか」
「はーい。わたしから声はかけなくてもいいのねー?」
「うむ。こちらから接触すると、もしかすると縁談にまで話がいくとまずいのでな」
「えええ!? 声かけただけで縁談とかまさかー」
『あるやもしれぬな』
小春ちゃんがひょこっと入っていたサブバックから顔を出した。
「あ、小春ちゃん、そうなのー?」
『巫女に連なれば、本家入りは確実じゃからのう。そして気に入られるかはまだしも、ワラワの力の切れ端に連なることになるのじゃ、繁栄は間違いないからの』
「へえー。そうなんだ。それってわたしが見極めないといけないの?」
『千歳には無理じゃな』
「えぇー……」
『大丈夫じゃ。アーノがあのわっぱには威嚇せんかったじゃろ? 悪いやつではない。それにあやつのような下心もないようじゃの』
「アーノちゃんの威嚇って、レッサーパンダの? あれ、そんな意味あったのか」
「レッサーパンダ……?」
『ちなみに、人形形態でも声帯はないのでな。千歳の独り言にしかカズヒトには聞こえておらぬからな?』
「あ、そうだった……。おじさま。前ね、レッサーパンダの威嚇をアーノちゃんがクラスメイトにしたの。その話だよー」
「……威嚇を……?」
「うん、なんかね、急に髪を触ってきたクラスメイトがいてね。んでカラオケいかないかって言ってきて、んでバイト先も把握してあってね、ちょっとやだなーって思ったんだけどね。そのときね、アーノちゃんが見えないけどそのクラスメイトに威嚇してたの。レッサーパンダみたいなのを。こう両手をばってあげてねー! たぶん動物園に行くために動画でもみて覚えたんじゃないかなー。あれかわいかったよ」
おじさまはわたしを見て、少し息を吐いてから真面目な顔をした。
「……ふむ。千歳。……そのクラスメイトには近寄らないように。……距離感がおかしい者は、どこかおかしいところがあると思っていたほうが良い。バイト先の把握までされているのも気になるところだし、あまりよくない執着など持たれても困るのでな」
『カズヒト、ワラワももう結界を張れるでな。今は大丈夫じゃ。……千歳、伝えてくれるか?』
「はーい! おじさま、小春ちゃんが、『カズヒト、ワラワももう結界を張れるでな。今は大丈夫じゃ』って言ってるー。二人とも、心配してくれてありがとう! えへへへ。家族みたいでうれしい」
『千歳、……うむ。まあ千歳はワラワが守るべき巫女だしの。そなたはそのままでよい』
おじさまにもなぜか頭を撫でられた。
もう! 小さな子供じゃないのに!
本家で働いている分家の女中さんの方々にもなぜか撫でられた。
もう! わたしは猫かなにかかな!? ちょっとうれしいからいいけどねー?
よくわからないけど、にこにこしちゃった。へへへ。
―――部屋に帰ってから、小春ちゃんがパソコンを見ながらこう言った。
『そういえば、千歳。前に個人的に千歳のことを疑っていた警察の者がおったことは知っておるな? こないだそやつのスマホを覗いてみたのだがの……』
「スマホを覗く……? ねえええ、やめてよー! 危ないよー」
『まあまあ、ばれることはないのじゃ。面白いからいいのじゃぞ。大丈夫じゃぞ。……それでな、警察の情報には千歳のことはなにもなかったのでな、個人のスマホを見てみたんじゃよ。
そしたらな、ワラワの巫女になる前、……アーノと千歳が出会ったという最初の、バイトの時の待ち伏せのの赤い者と、次に公園で会った赤い者どもとの関連が見つかったようでな。なんでも、公園の者どもが薬の売人だったらしく、そこから薬を買っていたことが捜査で分かり、そしてその薬を売っていたのが中華を食べたところの組織じゃったようだ。そこまで調べたところで、千歳への疑いはなくなったようじゃな。
そしてそこからは、警察の情報にのっておった。
その薬の売買の縄張り争いみたいなものが現在起こっているようでな、北と南の組織が今争っていて抗争になっておるようじゃな。そこまでくると……さすがに規模が大きすぎるということと、薬が輸入品らしくてな、その線で一個人がどうこうできるものではないということで晴れたようじゃ。よかったな』
「それって全部……えっと、まあ間違ってはないね!? 警察の人ってすごいんだねえ。なんか全部繋がってるー! ってわたしがびっくりしてるくらいだもん」
『そうじゃな。しかし、赤い者が集団でいると言うことは、やはり組織かなにかということじゃろうからな。必然ではあった気もするの。因果というのはそういうものなんじゃよ』
「ふーん?」
『あとはアーノが遠方で狩りをしたのも影響がありそうではあるな』
「うんうん、アーノちゃんのおかげかもー! えへへ」
―――疑いも晴れたようで、ていうか知らない間に疑われて知らない間に疑い晴れてたから、なにも影響はないんだけど、まあ気分はいいね!
学校に行ったら行ったで、あの分家の人が待っててさ、まあ言われた通りおじさまの名刺渡してから本家に呼ばれるかも? って伝えた。この子は男の子なんだけど、今日はたぶん双子の妹さんなのかな? も一緒にいて挨拶してきた。
小春ちゃんがその妹の子を少し気に入ったらしく、それからはなんかもう、従者かな? って感じで付いて回るようになった。
まあこれは小春ちゃんが動いたのを実際に見たからなのもあるだろうね。実際は、小春ちゃんが何を話しているのかは聞こえてはいないみたいだから、小春ちゃんのお世話係兼、わたしの従者みたいになるらしい。
小春ちゃんがぽそっと、カズヒトの血を残すにはちょうどいいって言ってたけど、大丈夫なんだろな……?
『千歳はワラワの巫女じゃからなあ。あとアーノがブチギレるじゃろ』
「もう、小春ちゃんがブチギレとかつかっちゃいけません」
双子ちゃんたちは小春ちゃんが一緒にパーティーに出るのじゃぞ、と予約していたからね。
もしかするとこれから本家を担う家族になるのかもしれないね。




