再会は海の底
泥濘の海域までの道のりは長い。
ウミウシの牛車の荷台には、討伐隊の面々が黙々と荷物を積み込んでいた。食料に武器、野営道具に予備の装備。長旅に備え、忘れ物がないよう一つひとつ確認しながら運んでいく。
中でも、今回の討伐隊に新たに加わった四人の様子は対照的だった。
千萩と美萩の姉妹は、初めての捕食者討伐を前に、どこか緊張した面持ちで荷物を運んでいる。これまで経験してきた任務とは、危険の度合いが違う。そのことを、二人とも十分に理解しているのだろう。
一方、狩猟の奴隷村から加わった春陽と虎太郎は、普段と変わらぬ表情を浮かべ、黙々と荷物を運んでいた。大物の討伐と聞いても、特に気負った様子はない。狩猟の村で培われた経験が、二人の落ち着きに表れているようだった。
その傍らでは、キャペリン副隊長とルシエルが海域の地図を広げ、出発前の打ち合わせを行っていた。
そして、そんな二人とは対照的に、ペルカ隊長は今か今かと出発の時を待ちわびている。
いつも以上に気合いが入っているようだ。
入隊試験の最中に、何かあったのだろうか。
大地がそんな疑問を抱いていると、最後の荷物が荷台に積み込まれた。
「ペルカ隊長、荷物の積み込みが終わりました!」
大地は荷台をひと通り確認してから、ペルカのもとへと急いで報告した。
「ふむ。ならば大地、皆を集めろ」
「はいっ!」
大地は威勢よく返事をすると、作業を終えた仲間たちに声をかけた。
全員が集まったのを確認すると、ペルカは一同の前に立ち、口を開いた。
「諸君も知っての通り、今回の目的地は泥濘の海域だ。名前の通り、道中は泥にまみれることになる。視界も悪く、足場も思うようにはならんだろう」
ペルカは一度、皆の顔を見渡した。
「そして、今回の討伐対象は捕食者――ダイダラワラスボだ。知っての通り、捕食者は本物の強者でなければ太刀打ちできん」
その言葉に、千萩と美萩の表情がわずかに引き締まる。
ペルカは二人の様子を確かめるように視線を向けてから、作戦担当の二人へと顔を戻した。
「ルシエル、キャペリン。作戦は任せたぞ」
「はいっ!」
ルシエルは力強く返事をし、キャペリンも静かにうなずいた。
「千萩、美萩。お前たちは今回の旅で、仲間のサポートに徹しろ。危険を感じたら、決して無理をするな。自分の身を守ることも、立派な任務だ」
「「はい!」」
二人は緊張した面持ちのまま、しっかりと返事をした。
続いて、ペルカはアークへと目を向ける。
「アーク! 二人を必ず守れ!」
「キュッ、キューッ!」
アークは元気よく鳴くと、立派な口髭を伸ばしながら、皆の周りをくるくると泳ぎ回った。
その姿に、張り詰めていた空気がほんの少しだけ和らぐ。
「春陽、虎太郎、それに大地!」
ペルカの声が、再び一同に響き渡った。
「お前たちはワシと同じく戦闘担当だ! いいか、ダイダラワラスボはデカい! 恐ろしくデカいぞ!」
ペルカは念を押すように、力強く言い放った。
「キャペリンとルシエルの指示に従い、互いに連携して戦え! 己の力を過信するな。わかったな!」
「はい」
「うん」
「くくく……お任せください」
三者三様の返事が返ってくる。
大地の不敵な笑みを見たペルカは、満足そうにうなずいた。
「よし! それでは出発だ!」
ペルカ隊長の号令とともに、討伐隊の面々は次々とウミウシの牛車へと乗り込む。
街の広場を抜けると、王国の門が見えてきた。
門へ近づくにつれ、一行はいつもと違う光景に気づいた。
門の前に、一台のウミウシの牛車が停まっていたのだ。
それは、これまで大地たちが目にしてきたものとは比べものにならないほど、美しく華やかな客車だった。
磨き上げられた真珠の装飾が車体を彩り、珊瑚をあしらった意匠が、海底の光を受けてきらめいている。
そして、その周囲を大勢の兵士たちが取り囲み、厳重に警備していた。
「止まれ!」
ペルカ隊長の号令で、討伐隊のウミウシの牛車が停止する。
何事かと顔を見合わせながら、隊員たちは次々と荷台から降りた。
そのときだった。
客車の扉が、ゆっくりと開いた。
現れた人物の姿を目にした瞬間、ペルカの巨体がびくりと跳ねた。
「ツ、ツバキ王妃!? こ、これはいったい、どうされたのですか!?」
普段は威勢のよいペルカが、見るからにうろたえている。
赤い髪をなびかせながら、ひとりの人魚が優雅に客車から降り立った。
ワダツミ王国、ドラド王の妻、ツバキ王妃である。
「ペルカ隊長、お久しぶりです」
ツバキは穏やかな笑みを浮かべた。
「これから向かうダイダラワラスボの討伐。期待してますわ」
「も、もったいないお言葉です!」
ペルカは慌てて頭を下げた。
その巨体からは、先ほどまでの威勢のよさがすっかり消え失せている。
ツバキはそんなペルカに微笑みかけると、ふと視線を移した。
「ところで……湯本大地はどなたかな?」
「はい。私です」
大地は一歩、前へ出た。
突然、王国の王妃に名指しされたのだ。緊張しないはずがない。
それでも、大地は真っすぐにツバキを見据えた。
ツバキは大地の顔をじっと見つめ、やがて満足そうにうなずいた。
「うむ。良い顔つきだ。なるほど……そなたのような者なら、安心できそうだな」
「……?」
何を意味する言葉なのか。
大地が尋ねようとした、そのときだった。
ツバキがふいに客車へと振り返った。
「さあ、真夏!」
その名が響いた瞬間。
大地の胸が、ドクンッと大きく跳ねた。
――今、なんと言った?
聞き間違えるはずがない。
何度も、何度も心の中で呼び続けた名前だった。
大地の視線が、ツバキの背後にある客車の扉へと吸い寄せられる。
やがて、その奥から白い足先が姿を現した。
一歩。
ゆっくりと、もう一歩。
女性が、客車から降りてくる。
パールホワイトを基調とした、気品あふれるドレス。
肩から背中へと流れる、艶やかな長い黒髪。
そして、見覚えのある凛とした横顔。
大地の呼吸が止まった。
周囲のざわめきが、遠のいていく。
兵士たちの姿も、仲間たちの声も、目の前にいるはずのツバキさえも、意識から消えていった。
ただ一人。
その女性だけが、大地の視界に映っていた。
忘れるはずがない。
忘れられるはずがない。
自分が倒れたとき、そばにいてくれた人。
見知らぬ世界へと迷い込んだとき、離れ離れになってしまった人。
いつか必ず、この手で助け出すと誓った人。
何度も思い描いた。
もう一度、会いたいと願った。
そのために、傷つくことも、苦しむことも恐れず、戦い続けてきた。
そして今――。
目の前に、彼女がいる。
森真夏。
間違いない。
大地が、この海底世界でずっと探し続けてきた、かけがえのない女性だった。
「真夏さ……」
思わず、その名が口をついて出た。
大地は一歩、また一歩と真夏へ歩み寄ろうとする。
だが、その行く手を三本の槍が遮った。
見覚えのある三人の兵士――セイゴ、フッコ、マダカが、真夏を守るように静かに立ち塞がったのだ。
「セイゴさん、フッコさん、マダカさん。私は大丈夫です。下がってください」
「ですが……」
「身分違いの者を……」
「お近づけするわけには……」
三人は警戒を解こうとしなかった。
大地が何者なのか、真夏との間にどんな関係があるのか。それを知っているからこそ、彼らは王宮から託された護衛としての役目を果たそうとしていた。
「大丈夫です」
真夏がもう一度、静かに告げる。
三人は顔を見合わせたあと、渋々ながら槍を下ろした。
その様子を見届けると、真夏はツバキへと視線を向けた。
ほんの一瞬。
互いの目が合う。
真夏の瞳に浮かんだものを察したのか、ツバキは何も言わず、小さくうなずいた。
そして真夏は、大地へと向き直った。
「大地く……」
ほんのわずかに、声が揺れた。
しかし、次の瞬間には咳払いを一つ。
「コホン。湯本大地」
その呼び方に、大地の表情がわずかに固まった。
「これから向かうダイダラワラスボの討伐、期待しています」
まるで、初対面の相手に告げるような、よそよそしい言葉だった。
大地は、目の前の女性を見つめたまま動けなかった。
ずっと会いたかった。
ようやく会えた。
それなのに、どうして――。
「……何よ、あの女」
背後から、ルシエルの小さな声が聞こえた。
「偉そうに……。何様よ」
春陽も不満げにぼそりと呟く。
どうやら二人には、真夏の態度がひどく冷淡に映ったらしい。
だが、大地にはそんなことを気にしている余裕などなかった。
「真夏さん、どうしたんですか? ダイダラワラスボなんか余裕ですよ! すぐにぶっ倒し――」
パァンッ!
乾いた音が、二人の間に響き渡った。
真夏が、大地の頬を平手で打ったのだ。
突然のことに、討伐隊の面々が息を呑む。
大地は顔を横に向けたまま、しばらく動かなかった。
やがて、ゆっくりと正面へ向き直る。
頬がじんじんと痺れている。
遅れて、焼けつくような痛みが走った。
「……っ!」
大地の目が見開かれた。
痛い。
今、自分は確かに痛みを感じている。
この世界に来てから、どれほど傷ついても、どれほど身体を酷使しても、まるで自分の身体ではないかのように痛みを感じなかった。
そんな自分が、今はっきりと痛みを感じている。
大地は驚愕の表情で、真夏を見つめた。
真夏は、そんな大地を厳しい眼差しで見据えていた。
「湯本大地。私の知っている湯本大地は、戦いの前には常に謙虚でした」
冷静で、よどみのない声。
「ダイダラワラスボは強敵です。あなたたちが敗れれば、この国が脅威にさらされることを、くれぐれも忘れないでください」
それは、王宮から討伐隊へ向けた激励の言葉だった。
少なくとも、周囲にいる者たちにはそう聞こえただろう。
大地は頬を押さえたまま、呆然と立ち尽くしていた。
その横を、真夏が静かに通り過ぎる。
そして――。
すれ違いざま、真夏は大地の耳元へそっと顔を寄せた。
「大地くん……」
その声は、先ほどまでとはまるで違っていた。
「今は身分の差があるから、こんな感じでごめんね」
大地の瞳が揺れる。
「私の能力、どうやら大地くん感じるはずの痛みや痺れ、疲労なんかを肩代わりするものみたい。この世界に来たときから、ずっと無意識に使っていたみたいなの」
真夏の声が、ほんの少しだけ震えた。
「大地くんが生きる屍みたいになっていたのも、そのせいだったんだね……。何も知らなくて、戸惑わせてごめんね」
「そんな……」
大地は、かすれた声で呟いた。
「それじゃあ、ずっと俺が受けていた痛みは……」
「うん。私が肩代わりしていたんだと思う」
真夏は小さくうなずいた。
「でも、もう大地くんの肩代わりは解除したわ。これからは自分の身体の痛みを、ちゃんと自分で感じてね」
その言葉に、大地は再び頬の痛みを意識した。
痛みを感じる。
それは、今まで当たり前だったはずの感覚。
しかし、この世界に来てからは、ずっと失われていた感覚だった。
真夏が、自分の知らないところで支えてくれていた。
自分が戦い、傷つき、それでも前へ進めた時間の裏側で、彼女もまた苦しみを引き受けていたのだ。
大地は唇を噛んだ。
「……ごめん。俺、何も知らなくて……」
「謝らないで」
真夏は、ほんの一瞬だけ優しく微笑んだ。
それは、大地がずっと見たかった笑顔だった。
だが、その笑顔もすぐに消える。
「それよりも……」
真夏は大地の耳元で、最後の言葉を囁いた。
「ダイダラワラスボの討伐、必ず成功させてね。そして、出世して……必ず私を迎えに来て」
大地は息を呑んだ。
その言葉に込められた願いを、聞き間違えるはずがなかった。
真夏は、待っているのだ。
自分が迎えに来る、その日を。
「……わかりました」
大地の表情から、迷いが消えた。
彼は真夏の前で片膝をつく。
「真夏様。激励、ありがとうございます」
その声は、先ほどまでとは違っていた。
「ダイダラワラスボを必ず討伐し、仲間を一人として欠くことなく、再びこの場所へ戻って参ります」
そして、顔を上げる。
「そのときは……胸を張って、あなたを迎えに行きます」
真夏の瞳が、わずかに潤んだ。
しかし、彼女はそれを悟らせないよう、静かにうなずいた。
「期待しています」
それだけ告げると、真夏は踵を返し、優雅な足取りで客車へと戻っていった。
すれ違う兵士たちの前では、最後まで王宮の人間としての姿勢を崩さなかった。
「ペルカ隊長」
客車へ乗り込む直前、ツバキが声をかける。
「大地のこと、任せましたよ」
「ははっ! かしこまりました!」
ペルカは背筋を伸ばし、深々と頭を下げた。
ツバキも客車へと乗り込む。
「では、戻りましょうか」
ツバキの号令とともに、護衛の兵士たちが動き出した。
華やかな客車は、ゆっくりと王国の門を離れていく。
大地は、その姿をじっと見つめていた。
遠ざかっていく車影。
もう一度、声をかけたい。
もう一度、その笑顔を見たい。
だが、今はまだ、そのときではない。
大地は、頬に残る痛みにそっと触れた。
そこには確かな熱があった。
そして、胸の奥にも。
大地は拳を握りしめる。
ダイダラワラスボを討伐する。
仲間たちとともに、必ず生きて帰る。
そして、出世して真夏を迎えに行く。
遠ざかる客車を見送る大地の胸には、再会の喜びと、決して揺らぐことのない新たな決意が燃え上がっていた。
「ふぇ〜、綺麗な子だったなぁ」
千萩は、遠ざかっていく華やかな客車を見送りながら、感嘆の声を漏らした。
「本当ね。凛とした立ち振る舞いも素敵だったわ」
美萩も、うっとりと頷く。
しかし、その隣では面白くなさそうに頬を膨らませている者がいた。
「何よ、あの女! 大地にあんな冷たい態度を取って……!」
ルシエルである。
「そうだそうだ! ボクだったら、あんな態度は取らない!」
春陽も唇を尖らせ、ルシエルに同調した。
すると、千萩と美萩は顔を見合わせた。
そして、ほぼ同時にため息をつく。
「わかってないなぁ、お子ちゃまは……」
「ホント、わかってないわよねぇ」
「えっ、何が!?」
ルシエルが少し前に出る。
春陽も負けじと胸を張った。
「だって、どう見ても大地に冷たかったじゃない!」
「そうだよ! せっかく会えたのに、もっと嬉しそうにすればいいのに!」
姉妹は、再び顔を見合わせた。
そして、千萩が腰に手を当て、得意げに言い放つ。
「ルシエル、わからないのか? あれが正妻ムーブってやつよ!」
「そうよ。大切な人のために、わざとよそよそしく振る舞う……。健気な正妻ムーブなの!」
美萩も、まるで恋愛指南の達人であるかのように胸を張った。
「せ、正妻ムーブ……?」
ルシエルは目をぱちくりさせた。
「そうだ。考えてもみなよ」
千萩は、さっきまで真夏が立っていた場所を指差す。
「酒場で聞いた話だと、あの真夏って子は王宮で爵位を授かったらしい。一方の大地は、これから討伐に向かう身。そんな二人が人前で親しげにしてみなよ。周りはどう思う?」
「えっと……身分の違いがあるから、問題になる?」
「そういうこと!」
千萩はビシッと指を突きつけた。
「しかも、真夏は大地を送り出す立場だ。ここで甘ったるく再会を喜んでいたら、大地が討伐に集中できなくなるかもしれない!」
「なるほど……!」
春陽が感心したように声を上げる。
美萩も、うんうんと頷いた。
「それにね、あの平手打ち。あれも大事なところよ」
「えっ!? あれも!?」
ルシエルが素っ頓狂な声を上げる。
「そうよ。大地が調子に乗っていたから、ちゃんと気を引き締めさせたの。しかも、あの場では厳しい態度を取っておきながら、こっそり耳元で本当の気持ちを伝えていたでしょう?」
「うっ……」
ルシエルの口が止まった。
思い返してみれば、真夏は最後まで大地を突き放したわけではなかった。
むしろ、誰にも聞こえないように何かを囁いていた。
「つまり……人前では厳しく、二人きりでは優しく……?」
「そう! それが正妻のたしなみ!」
千萩が高らかに宣言する。
「そ、そんなの……!」
ルシエルは反論しようとした。
だが、言葉が出てこない。
大地の頬を叩いた直後、真夏が耳元で何かを囁いていた光景が、頭から離れなかった。
春陽も、腕を組んで考え込んでいる。
「じゃあ、ボクも大地に冷たくすればいいのかな……?」
「くくくっ、お嬢。そう簡単なことではありませんよ」
虎太郎が、横から冷静に突っ込んだ。
「そもそも、正妻ムーブとは……」
「何言ってんだ、虎太郎! 恋愛において、立場と振る舞いは重要なんだぞ!」
「千萩さん、貴女は随分と恋愛経験が豊富なようで…」
「……」
千萩の動きが止まった。
美萩も、そっと視線を逸らす。
「ま、まあ、細かいことはいいじゃない!」
「そうそう! 大切なのは気持ちよ、気持ち!」
「急に説得力がなくなったね……」
ルシエルが呆れたように呟いた。
しかし、千萩はすぐさまルシエルの肩をがっしりと掴んだ。
「いいか、ルシエル。大地に迎えに来てほしいと願いながら、あえて送り出す。あれこそ正妻の器ってもんだ!」
「……大地に迎えに来てほしい?」
「そうだよ。真夏さんは大地に、必ず迎えに来てって言ったんだろ?」
千萩はニヤリと笑った。
「つまり、あの二人はもう約束を交わしたってことだ!」
その言葉に、ルシエルの表情がぴくりと引きつった。
「……約束?」
「そう。大地が出世して、真夏を迎えに行く。真夏さんはそれを待つ。いい話じゃないか!」
「…………」
ルシエルは、遠ざかる客車を見つめた。
白い髪が、海流にふわりと揺れる。
「……ふん。別に、あたしには関係ないし」
「おやおや?」
美萩が意味ありげに微笑んだ。
「ルシエルちゃん、ずいぶん顔が赤いわね?」
「赤くないっ!」
「そうか? 耳まで赤いぞ」
「千萩姉ちゃんまで! うるさいっ!」
ルシエルが両手を振り回す。
春陽も、何かに気づいたようにポンと手を打った。
「あっ! じゃあ、ボクも大地に『必ず迎えに来て』って言えばいいんだ!」
「それは違う!」
ルシエルが即座に叫んだ。
「えーっ、なんで!?」
「なんでもよっ!」
そのやり取りを見ながら、千萩と美萩は再び顔を見合わせた。
そして、そろって深く頷く。
「……まだまだだな」
「……まだまだねぇ」
「だから、何がよーっ!」
ルシエルの叫び声が、王国の門前に響き渡った。
その頃、当の大地はというと――。
真夏との再会を胸に刻み、ダイダラワラスボ討伐への決意を新たにしていた。
仲間たちが自分の恋愛事情を肴に盛り上がっているなど、知る由もなかったのである。




