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英雄遺産のエーヴィッヒ  作者: 大浣熊猫
老いた勇者の幕は下り
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家族 第四話

 繰り返される「分かる?」のたびに、フェリシアンの頭の中で糸が切れる音がしていた。フェリシアンはドナシアンを抱きかかえてうずくまり耐えた。


 突然表から「警察だ!」と声が聞こえてきたのだ。

 それを聞いたドメニコーニが安堵したような顔になった。対照的にアナンヤは「フェリシアン!」と動揺した。


「なんで警察なんか呼んだのよ!? ちょっと殴ったくらいでしょ!? 家族の問題なんだから家族で解決すべき……」


「いいや。呼んだのはオレだ!」とドメニコーニはアナンヤを守るように自信に溢れたように仁王立ちした。


「正しいのはオレたちなんだ。ここはオレたちの家だ。勝手に住んでるヤツらなんか許せるか。

 お巡りさん、こっちです! 泥棒がオレたちの家を占拠してこまっているんです!

 オレは怪我をさせられた! さっき殴られて右手が痛いんだ! あの赤ん坊と後ろの老人たちが人質に取られているんだ! 誘拐と立てこもり事件だ!」


 通報者の話を聞くと警官たちは目の色を変えてフェリシアンに向けて銃を構えた。


「おい、そこの男! 今すぐ赤ん坊を解放するんだ! これだけ包囲されているんだ! 無駄だぞ!」


「動かないでよ!」と警察の警告さえも遮るほどの大声でアナンヤが怒鳴った。


「勝手に警察呼んでんじゃないわよ! アタシが説得するから誰も動くな!」とアナンヤが再び怒鳴ると、警察は動かなくなった。だが、ドメニコーニはうずうずと拳を握っている。


「ドメニコーニ! アンタもよ!」


 アナンヤはその場にいた全員が黙り動かなくなるのを確かめると頷き、フェリシアンに近づいて行った。


「アンタ、母さんが死ぬってときも結局何にもしなかったじゃん。

 酔っ払って毎日暴れるお母さんの世話をまったくしないで、全部全部全部アタシに嫌なこと押し付けてさ。

 アタシがどんだけ苦労したと思ってんの? 分かる? アタシはね、仕事もしてたし息子も育ててたの。分かる?

 これからはアンタがアタシの何百倍も苦労する順番なのよ。分かる?

 さっさとこの家の権利書渡――」


「アナンヤさん、危なーい!」


 ドメニコーニはいきなり大声を上げた。同時に銃声が響いて屋敷の窓を揺らした。

 ドメニコーニは拳銃を撃たせるために、緊張感が高まり静まりかえった瞬間を狙ってわざと驚かすように大声を出したのだ。

 目論見通りに、近くにいた警察は大声に驚き身体がびくついた。その拍子に引き金を握りしめ、構えていた拳銃を発砲したのだ。


 発砲音が張り詰めていた空気を破裂させるとインインと余韻の残る静けさが訪れた。

 フェリシアンは自分の背後で、木の板の上に何かが落ちるような音がして、そちらの方へふり向いた。

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