家族 第一話
「これは大きい家だね。これがオレたち新しい家なのか。確かにだいぶ築年数が経ってる割には綺麗で良い家ではあるね。でも、」
玄関前の道を塞ぐように斜めに止められた高級車から男が一人降りてきた。白く高級なスーツを着た男だった。男は門の前で屋敷を見上げている。
「でも、ちょっと不便じゃないか? 少し街から遠すぎる。道が舗装されてないって聞いてたけど、……今まさにしてるな。
さっさとやって貰わないと困るな。あいつらいつも作業が遅くて渋滞を作りやがる。やるべきこともキチンとできないようなヤツらだ」
「なんか近くに新しい鉄道が走るんだって。駅も出来るらしいから便利になるわよ。
結構前から話はあって、土地の買収も終わったらしいから、建設が始まればすぐよ。
アスファルト敷いてるのもそう言うのがあるからでしょ」
耳に覚えのある女性の声がすると、助手席のドアが開いた。毛皮のコートを着た派手な女が降りてきた。フェリシアンがそれが誰であるかすぐに分かり同時に背筋が凍った。
男女は真っ直ぐ玄関に向かってきて、躊躇無くドアを開けて入ってきた。
「姉さん、何処に行ってたんだ? その人は、だ、誰だ?」
ずかずかと家に入り込んできた男は、赤ん坊を背負ったフェリシアンを見ると「おい! 誰だ、お前! 人の家に勝手に入って! 警察呼ぶぞ!」と眉間に皺を寄せてフェリシアンを睨みつけた。
男は改めて見るとアナンヤよりも十は若そうだった。
男は振り返りアナンヤを見ると「アナンヤさん、あなたちょっと家を放ったらかしにしすぎたんじゃないのか? 何なんだこれは!? 浮浪者たちが巣くっているじゃないか!」と言った。
玄関ホールから大声が聞こえ、様子のおかしさに気づいたウェイトレスが台所から顔を出した。
見たことの無い者たちが家に上がり込んで声を荒げている様子に腹を立て「あなたこそ誰ですか!? ここはアルフォードさんのおたくですよ?」とウェイトレスが怒った。
それに続くように「お前らなんか見たこと無いぞ!」と赤ん坊の様子を見に来ていた隣家の老人が杖を振り上げながら声を上げた。
「アルフォードだぁ!?
いいや、違う! ここはアナンヤさんの、アナンヤ・ガリマールの家だ。あの大英雄ドナシアン・ガリマールの孫だぞ!?
貴様らこそ誰だ。今すぐ出て行け! アナンヤさん、すぐに警察に連絡を!」
アナンヤは連れてきた男と家の中にいた者たちのいがみ合いを見ながら終始笑い続けていた。
「アッハッハ、面白いわね。そういえば言ってなかったわね。アタシ、実は弟いたの。今アタシのうちに仕方なく住まわせてる穀潰し」




