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英雄遺産のエーヴィッヒ  作者: 大浣熊猫
老いた勇者の幕は下り
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逃れられぬもの 第六話

 フェリシアンは定期的に金庫の中身を確かめる習慣があった。アナンヤが押しかけてきたことでその回数は減っていた。

 あるときアナンヤは家を留守にしたので、フェリシアンは金庫の中身を確かめていた。すると、記録していたはずの金額から大きくズレていたのだ。アナンヤはフェリシアンのお金を使い込んでいたのだ。

 しかし、フェリシアンはアナンヤにそれを問いただすことが出来なかった。

 何を言い出すのか怖くて仕方が無かったうえに、怒って暴れ出すと家の物を壊し始めるのだ。

 先日もピックアップトラックのエンジンがかからずに街に出られなかったことで怒り狂い、納屋を鉄パイプで一晩中殴り続けていた。

 フェリシアンを殴っても痛がりはしても傷は付かず、当たることで傷つけたという結果を与えて満足する彼女にしてみれば意味が無いので納屋に当たるのだ。


 金庫の中身を使い込んでいたのは、アナンヤだけではなかった。甥も無心していたのだ。

 アナンヤはいつの間にか合鍵を作り、甥に渡していた。甥は二、三日に一度高級車で乗り付けて我が物顔で屋敷に出入りしていた。

 丁度彼が金庫から中身をこそこそと持ち出しているのを見かけたフェリシアンが声をかけたが、

「穀潰しのバカ叔父なんか、俺は嫌いなんだよ。話しかけんな、クズがうつる。仕事もしないで人の金だけで生きてるヤツなんか生きてても仕方ないだろ」

 と言って当たり前のように持っていった。

 その日以降、甥は悪びれることさえなくなり、買い出しのためにテーブルの上に置いておいたお金をフェリシアンの目の前で当たり前のように財布に入れるようになった。


 当然のことながら、アナンヤは自分の息子の行いを一切注意しなかった。


 一度そのことについてフェリシアンは勇気を出して話をしてみたが、

「アンタさ、アタシはこれまで長い人生の中で仕事はキチンとしてきた。でもアンタは働いてない。お金の使い方だけじゃなくて、他のことに対しても発言権あると思ってんの?」

 と聞く耳を持たなかった。


 フェリシアンは何も言えず、毎日怯えているだけだった。

 生まれたとき、まだ泣くぐらいしか抵抗が出来ない時期からずっとそうだったので、彼に何か出来ることがあったとしても実行する前に絶望し、ただ耐えるという選択肢以外を選ぶことが出来なくなるのだ。

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