法律は誰かを不幸にする為ならず、皆を幸福にする為にある 第五話
「フェリシアンさん、あなた、随分長いことお仕事されていませんね。
その前は職を転々としていた時期もあった。それでお爺さんであるドナシアンさんの世話を買って出たとか。
あなたの行動はお金がなくなったからの遺産目当てでは無いと言い切れませんよ」
「遺産目当てなんて、そんなことはない!」
「遺産目当ての者は皆口を揃えてそういうのです。遺産目当てなどではない、と。では、それを証言できる方はいますか?」
「ポリー……いえ、いません」
「お母さんもお姉さんも、あなたがドナシアン氏を殺してしまわないか、ずっと不安だったそうですよ。
だから、会いに行くのが怖かった、いつもドナシアンさんの傍にいるあなたが何をするか怖くて仕方がなかった、だから会いにいけなかった、と。
今となっては捜査などできませんが、ドナシアンさんの死もアルフォードさん殺害事件とは無関係ではないのでは?」
「お爺ちゃんはお爺ちゃんから僕に世話をして欲しいと言ってきたんだ」
「世話をしていた家政婦なら、あなたが殺がい……いえいえ、オホン。亡くなられたアルフォードさんが既にいたではないですか。
長年彼女一人でも成り立っていたのに、なぜあなたを世話係に新たに指名したのですか」
「それは……」
フェリシアンは自分が情けないからドナシアンが社会的な目に気遣って雇ったという形にしていたことなど理解していた。
「ポリーと一緒になるから、新しい仕事を探そうって約束して、それで昨日からガリバルディメタルインダストリーで働く予定だったんだ」
やさしい刑事は「ふん、コネか」と小さい声で吐き捨てた。
だが、すぐに大げさに両手を挙げ、
「それは素晴らしい! なんと素晴らしい真実の愛ですな! 自ら生計を立てられるというのなら、天国のドナシアンさんも浮かばれることでしょう」
と言って大げさにウンウンと頷いて見せた。
「お仕事を探されたというのなら、もうお金に困ることはありませんな。うむ、立派だと思いますよ。
ところで、あなたのお母さんとお姉さんは、あなたが遺産の相続を自ら放棄すれば、アルフォードさん殺害について否認する言葉は信じるに足りるかも知れないと仰っておりました。
これはアルフォードさんも天国でさぞお喜びになるでしょう。献身的に愛し愛された者が疑われることがなくなる可能性が出たのですから。
なんと、相手を思う愛でしょう。庇うというのは、美しくも見えます」
やさしい刑事は天井に感慨深そうに顔を向けた。




