法律は誰かを不幸にする為ならず、皆を幸福にする為にある 第六話
「あなたのお爺さまであられるドナシアンさんが世界を平和にしたことで、戦いが正義の時代が終わり司法制度が細かく整備されていきました。
ドナシアンさんの盟友であられるアリスタルフ・カプスチンさんが細かく不平等を生じないように整えていきました。
『法律は誰かを咎めることにあるのではなく、皆が幸せになるためにある』とカプスチン初代法務相が仰っていました。素晴らしい言葉だ。
ご存じですか? その皆を幸せにするためのルールの中に司法取引というものがあります。あなたが自らの意思で遺産を受け取りを放棄したと宣言することで、我々の捜査の結果の如何に関わらずご家族はあなたを今後一切疑わないと譲歩してくださっているのですよ?
それは我々があなたが容疑を否認することを否定しないと言うことでもあるのです。これほど慈愛に満ちたものは見たことが無い。
そこで改めて私たちはあなたに尋ねます。あなたはドナシアンさんの遺産を受け取りたいのですか?」
だが、フェリシアンは下を向いたまま刑事と目を合わさず返事をしなかった。さすがにそこまで愚かでは無かったのだ。
ここで司法取引をしても、フェリシアンの殺害への否認が正式な供述として認められるだけで、アルフォード殺害の容疑が晴れるわけではないのだ。
つまり、このやさしい刑事によって進められた捜査の結果で万が一にもアルフォード殺害が立証されてしまえば、供述は虚偽の供述としてまとめられしまい、フェリシアンはアルフォード殺害の犯人となる。
それから三十分間沈黙が流れた。
やさしい刑事は痺れを切らし、フェリシアンの胸ぐらを掴み上げた。
そのときだ。取り調べ室の壁により掛かっていた悪い刑事は壁の受話器が光ったことに気がつき、取り上げて耳に当てた。
何度か頷くと受話器を置き、胸ぐらを掴んでいたやさしい刑事に近づいて腕を掴んでこう言った。
「バイク財閥のフォン・バイク氏が容疑者と面会したいそうです」
「フォン・バイク!?」とやさしい刑事は声を裏返させた。
「なんでそんな財閥の当主がこんなところにいるんだ!?」
「生前ドナシアンさんはご友人だったそうです」




